魔物討伐見学ツアー
朝はいつもより早く起きた。
朝食を取りながら今日の予定を確認する。
「父さま、今日は魔物討伐ということですがどのように行うのですか?」
「村の警備隊で討伐組を作っている。そのメンバーと合流して最近魔物の目撃情報の多いポイントへ向かうんだ」
「目撃情報の多いポイントというのは?」
「このサイージョ村から港町バリに向かう途中の山道付近で最近魔物が集まっている。我々の仕事はその魔物が村まで来ないよう追い払う、もしくは撃退するのが仕事だ」
「倒さなくてもいいということですか?」
「まぁ、倒せそうにない魔物ならなんとか追い払い方向で考えるが今のところあまり強い魔物は目撃されていない。とはいえ、お前たちは基本的に後方で見ているだけだぞ」
「見ているだけでも、そもそも村から出るのが初めてなので楽しみです」
「そうだろう。楽しみにしているといい。ただし、俺の言うことは必ず聞くようにな」
「はい。というか、父さまのいうことを聞かなかったことなどないですよ?」
「そんなことはない。ちょっと前まで夜泣きはするしおねしょもするし、大変だったんだぞ」
「それは赤ん坊のことでしょう。。。。」
それはどうしようもないじゃないか。
「さぁ、さっさと食べて準備してこい。剣も忘れずにな」
「「はーい」」
朝食を終えるといつもの恰好プラス5歳の誕生日で貰った剣を持っていく。
今日のためにララが腰に下げれるよう、ベルトのようなものを作ってくれた。
なんというかこれだけの違いでも男の子というのはわくわくするのだ。
性別女とはいえ、ユイも俺なのだから同様だ。
それに小さめのリュックを背負う。
リュックには念のため昨夜作った【照光】の魔法陣とお弁当(干し肉とパン)を入れた。
「お、格好いいじゃないか。様になってるぞ」
「ありがとうございます」
「気を付けて行ってくるのよ」
「はい、がんばります!」
ララとの挨拶も終え、3人で家を出た。
まずは、討伐隊と合流するため村の入り口に向かう。
なお、このサイージョ村の出入り口は二つある。
山あいのこの村は、一つは港町へと続く道があるがもう一つは山頂を目指す道があるだけだ。
通常、村の入り口というと港町へと続く道のある出入り口となる。
「おはよう、アスラ。そこのが噂の双子か」
向かっている途中、一人の男が声をかけてきた。
身長はアスラよりも低いが横幅は広い。なんだかずんぐりむっくりな感じだ。
人族ではないのはすぐわかった。年も熟年という感じが顔にでている。
背中に大きめのこん棒を装備している。
「おはよう、レムザ。うちの自慢の子供たちだよ。ほらケン、ユイ、ちゃんと挨拶なさい」
挨拶を促された。
「はじめまして、ケンといいます。今日は一日よろしくお願いします」
「はじめまして、ユイといいます。今日は一日よろしくお願いします」
同じ顔の同じ背格好の子供が同じような挨拶を繰り返す。
「おう、今日は危険も少ないだろうし楽しめよ」
「「はい」」
「レムザはな、人族ではなくドワーフなんだ。とっても器用だし力持ちだから武具の製作させると天下一品なんだぞ。
それなのにレムザは馬や羊や地竜やらの世話をするのが好きな変わり者なんだよ」
「おいおい、初対面の相手への紹介がそれかよ。だいたい間違ってないところがお前らしいがな!ガハハハ」
なんというか、手先が器用らしいが性格は大胆なのかな?
「しかしアスラんトコの子供は礼儀正しいな!家の倅が5歳のころっていやぁ、鼻水垂らしながら走り回ってたぞ」
「俺の子供だから当然だ!といいたいところだけど、あれだ。ララの教育がいいんだよ」
「アスラには勿体無いベッピンさんだものな!ガハハハ」
「うるせーよ」
なんだろう、仲のいい旧友との会話みたいだ。
そんなことをしていると村の入り口までたどり着いた。
村の入り口には男が待っていた。
こちらはハイティーンくらいの人族のようだ。
魔物討伐ということなので装備は槍と鉄をあしらった胸当てをしている。
「おはようございます、アスラさん」
「おはよう、ダクティ。今日はペレスが店番か?」
「そうですよ。で、そちらの二人が噂の?」
「おう、こっちがケン、んでこっちがユイだ」
俺たちの頭を撫でながら紹介してくれた。
ただ、ケンと紹介したのはユイでユイと紹介したのが俺だ。
父親なんだから間違えるなよ・・・。
「「はじめまして、今日はよろしくお願いします」」
間違えられたことは気にしない。実はもう慣れっこだもの。
赤ん坊のころは区別するためにオシメを取って股間にポークビッツがあるかないかで確認されたりもしたが流石に今はそんなことはない。
8割方は合っているが、残りの2割は間違えられることもある。
もう少し成長して俺が男らしく、ユイが女らしくなれば分かると思うが今はほぼ同じだから仕方ないと思う。
「はい、ケンちゃんとユイちゃんだね。俺は万屋のダクティ、よろしくね」
通常ゲームとかで村には武器屋、防具屋、道具屋などが個別にあるものだが、
この田舎のサイージョ村ではその3つをまとめて取り扱っているのが万屋だ。
「ダクティ、ベンはまだ来てないのか?」
「ベンさんなら村長に出発の報告をしてから来ると言ってたっすよ」
「ああ、そうだったな」
「と、噂をすればあれじゃないっすか?」
俺たちが来た方角を指さすと、馬車っぽいのがこっちに来ていた。
馬車っぽいという表現は、荷台を引いているのが明らかに馬とは違ったからだ。
近くまで来てもその正体は分からなかった。
でっかいトカゲ?にしてはもっと肉厚だ。
「そういえばケンとユイは地竜を見るのは始めただったか」
なるほど、これは地竜というのか。
ということは海竜とか空竜とかもいるのかな
「はい、強そうですね」
俺たちのところまで着くと御者台から一人の男が降りてきた。
「あれ?待たせちまったか?」
「いや、今来たところだよ」
「アスラさんもベンさんも、なんなんすかそのカップルのようなやりとり(笑)」
なかなか的確なツッコミである。
が、全員にスルーされる。
「そっちの小さな紳士が今日のゲストか」
「ああ、俺の子供、ケンとユイだ。よろしく頼む。」
「はじめまして、今日はよろしくお願いします」
もうそろそろこの挨拶も慣れてきたぜ。
「まかせろ、俺がいるからには魔王が来たって守ってやるよ!」
「そんなこと言って、ベンさん魔法は初級しか使えないじゃないですかぁ」
「抱えて逃げるんだよな!ガハハハ!」
ダクティとレムザの連携ツッコミだ。
「うるせー、それでも無事なら守ったことになるだろぉが」
そうか、やはり逃げるのがこの人の手段なのか。ダメじゃねぇか。
いやいやそれよりも気になる単語でたよ?魔王って。やっぱりこの世界にもいるんだな。
「じゃあ紹介も済んだことだし早速行くとしようか」
あらパパン、リーダーっぽい。
「レムザ、頼む」
一言いうとレムザは御者台に乗り込んだ。
「俺たちは荷台に乗るぞ」
アスラから声をかけられて荷台に乗り込む。
貴族とかの場合荷台部分が人が乗るような形になっているが、
今回は荷台だ。ホロすらついていない荷台だ。
俺たちが乗り込むとレムザが手綱を操り出発した。
速度はまぁ、、馬車と同じくらいかな。
ガタガタと揺れる。荷台に直に座っているから長時間乗っているとお尻が痛くなりそうだ
「今日はケンとユイが始めて参加だからこのメンバーでの役割を説明しておくぞ」
昼間のパパはちょっと違う~。リーダーぽい。
いや、リーダーなんだけどね。
「まず、竜車での移動中戦闘になった場合は俺とダクティが先頭に立つ。レムザは竜車とその他を守ってくれ」
「おいおい、自分の子供をその他扱いかよ。アスラさんは冷たいなぁ~」
「その他ってののメインはベンのことだからな」
「バカヤロウ、俺は守ってもらわなくても余裕だぜ?逃げるときは任せろ!」
「わかったわわかった。でだ。ケンとユイは後方で見学していろ。まぁ多少の魔法援護くらいなら許可する」
「「はい」」
「次に目的地に着いてからだ。ニイ湖を拠点として散策するがその時は地竜の番をレムザがするためパーティーは一人減る。
その時は俺、ダクティ、ケンとユイ、しんがりがベンだ。わかったか?」
「その時も魔法援護はしてもいいですか?」
「多少は構わないが使いすぎてあとから歩けなくなられても困る。あまり魔法を使いすぎるなよ」
「「わかりました」」
今日は無詠唱ではなく、魔法名を叫びながら撃とう。
てか、パーティー戦闘の場合無詠唱ってあまりメリットないなぁ。。。
「最後に、俺が撤退を指示したら即座にレムザのところまで戻れ。いいな!」
「「はい」」
「まぁ滅多なことは無いと思うがな」
あら、アスラさんそれってフラグですか?やめてくださいよ?初陣で死にたくありません。
俺、この戦いが終わったら結婚するんだぁ・・・とか言い出す人がいませんように。
「ほう、オチビちゃん達は魔法が使えるのか。すごいじゃないか」
「いえ、まだまだだと思っています」
実際まだまだ実験したい魔法いっぱいあるし。
「まぁウチのライカも魔法使えるしな。なんせ俺とエリンの子供だからすげーんだぞ」
「え?ライカのお父さん?いつもライカちゃんにはお世話になっています」
あ、一回ライカって呼び捨てにしてしもた。
礼儀正しいとこの子でいくはずが。
「なんでぃ、ライカのこと知ってるのか。ああ、さては最近ちょくちょく家から抜け出してるのはお前らのせいか」
抜け出して来ていたの?そこまでは知らぬよ。
「ライカは嫁に似て可愛いし魔法だって使える。俺に似てとても賢い。だから仲良くしてやってくれよ」
「ライカちゃんが賢いのもエリン先生に似たからっすよね」
すかさず小声で呟くダクティ。
「ん?何か言ったかぁ?」
「いえ、何も言ってないっす!」
「ダクティの言ってるほうが正しいわい!ガハハハ」
「レムザまで何言ってるんだ。俺に似たからライカはあんなにいい子なんだぞ」
ちょっと不貞腐れながら、大真面目に言ってる。
和やかな雰囲気のまま地竜での移動が1時間ほど経ったころ、街道から獣道へと入っていく。
それまでも舗装されていたわけではないが、獣道はさらに地竜を揺らした。
ダメだ、、、お尻が痛すぎる!
ちょっとサスペンション的なものを売り出したら大儲けできるんじゃないだろうか。。。
荷台の上で御者台に捕まりながら立ったり、座ったりしていたら10分程でニイ湖に到着した。
お尻の危機以外はなんとものどかなものだった。
湖のほとりまで来て地竜が止まるとみんな竜車を降りた。
「地竜はここまでだな。じゃあここからは徒歩でいくぞ。レムザ、あとを頼む」
「まかせておけ、ガハハハ」
いつも笑っているが、今のやりとりの何が楽しかったのだろう・・・。なぞだ。
そういいながらも地竜に水を飲ませるため竜車から外したりしている。
「ではいくぞ」
アスラの号令で俺たち5人は歩き出した。
湖に沿ってしばらく進むと川があった。その川沿いに進む。
大人の足での移動なので俺たちの歩幅より早い。ついていくために途中からこっそり【身体強化魔法】を使用する。
魔力量は少なめにしておいた。
スライムがあらわれた!
RPGならそういうメッセージが出ただろう。
川沿いを移動しはじめてまだ20分ほどしか経っていないのにさっそく魔物だ。
少し青みがかった予想通りの姿かたちのスライムさん。
2の4の6匹か。
「いくぞ!」
言うと同時にアスラが飛び出る。遅れてダクティも別のスライムへ槍で攻撃に走る。
半分水分みたいなスライムが槍の一撃で砕け散った。
アスラのほうは剣でスッパリとこちらも一撃で処理していた。
と思ったら、もう2匹倒してた。
隼切りとかって技名が付きそうな、一振りで二度美味しいアレっぽい。
残った3匹はやっと攻撃に転じたようだが動きは遅い。
あっさりアスラにもダクティにも避けられ反撃。
またアスラが2匹、ダクティが1匹倒して戦闘は終わった。
あれ?俺たちなーーんもしてないね。
ゲームを見ているような光景が目の前に実際に起こっていてちょっと感動。
「ダクティ、魔石拾っておけ」
「アイアイサー!」
見ると倒したスライムのあたりに黒い石が落ちてた。
そういえば、魔物は全て魔石を持っているって言ってたな。
冒険者の大事な収入源になるそうだ。
「このあたりに多いのかもしれないな。探すぞ」
川から森に入っていくらしい。途端に見晴らしが悪くなる。
するとまたスライムを見つけた。今度はやたら数が多い。
14匹もいる。とはいえアスラとダクティの処理スピードは早い。
どうしようか、魔法でも撃ってみようかな。
一応前線二人から遠いやつを狙おう。
「「【風球】」」
俺とユイがそれぞれ魔法を放つと、敵後方のスライム2匹に命中。そのまま弾けた。
おお、一撃で倒せた。この調子で次も、、、
辺りを見回すとゴブリンがこちらに近づいてきているのが見えた。
アスラ達は気付いてない・・・のかな。
しかし、、ゴブリンって背が低くてヒョロっとしててナイフ的なものを持っているイメージだったが、
見つけたやつは人よりも少し大きくてこん棒とか持ってる。
まあ、標的は大きいほうが魔法を当てやすいしいっか。
「「【風球】」」
ユイと二人分の魔法が命中するとゴブリンの体が爆散した。威力が強すぎたかな。
ありゃ・・・これはなかなかグロい。
次の敵を探して周囲見渡すと、アスラの前方からもゴブリン3匹が来ていた。
スライムは既にアスラとダクティが処理したようだ。
「なぜこんな場所にオークがいるんっすか!?」
ダクティが驚いている。
ゴブリンだと思っていたヤツはオークだったのか。
道理で予想よりでかいと思ったよ。
「文句を言わずに体を動かせ!」
「アイサー!」
アスラに言われて返事はしたものの、ダクティはちょっとビビっている。
ちょっとというか、まぁまぁビビっている。
対峙はするもののイマイチ踏み込めていない。
アスラもダクティも相手をしていないオークに向けてユイが、
ダクティが対峙しつつも距離をとっているオークに向けて俺が援護する。
「「援護します!【風球】」」
俺の放った風球はオークの脇腹へ、ユイの放った風球はオークの右胸へそれぞれ命中した。
と、同時に魔法の威力に耐えきれなかったオークの肉体は爆散するように弾けた。
「うわああああぁあ!」
その様子にダクティが驚いて尻餅をついている。
ダクティさん、戦闘中ですよ?
これであとはアスラが相手している一匹のみと。
って、さらに後方から7匹のオークがこちらに向かってきている。
左右にはオークよりも小柄な魔物が10匹以上こちらを取り囲むように現れた。
「ベンさん、左右のちっこいやつがゴブリンですか?」
間違ってたら恥ずかしいので先に聞いてみる。
「そうだ。一匹一匹はあまり強くないが、、、こう数がいると厄介だ」
よかった、やはりこいつらがゴブリンなんだ。
「左右の敵に魔法を撃ちます。【水結界】
俺が向かって右、ユイが左側にそれぞれ魔法を放つ。
範囲はゴブリン全部を入れようとして半径10メートル以上になった。
結界魔法が発動、ゴブリンを全部結界内に閉じ込めることができた。
「「ハァッ!」」
気合一発全方位攻撃!
結界内では水球が飛び交い、すべてのゴブリンを倒せた。
最後のドバーーー!を使う意味がなさそうなのでそこで魔法を解除した。
左右の敵はいなくなったが、水魔法のせいで地面が泥だらけになってしまった。
まぁ、倒せたからいいか。 さて、前方のアスラは、、、と。
アスラは5匹のオークを同時に相手をしていたが全く問題なく戦っていた。
ダクティはたまに後ろから援護攻撃を行う程度。
2匹はもう倒した後らしい。
さってどうしたものか。5匹を相手に動き回るアスラが邪魔で援護射撃がしにくい。
「父さま!援護しましょうか?」
「この程度、問題ない。見ていろ」
余裕ありそうだしそうさせてもらいますか。
しばらくすると1匹、また1匹とオークを倒し、やがてすべてを倒しすとアスラとダクティがこちらに戻ってきた。
「ベン!索敵!」
ベンが辺りを見回しつつ周囲を探る。「闇の精よ、我に仇名す邪を知らせ!【索敵】」
見たことのない魔法だ。
しかし、見た目には何もおこらない。
「大丈夫そうだ」
しばらくすると敵影無しと報告しているベン。戦力外だけどそういう面で活躍するメンバーなのかな。
「よし、ダクティは魔石を回収しておけ」
「アイアイサー!」
「ケン、ユイは大丈夫か?かなり魔法を使っていたようだが疲れはないか?」
「「はい、問題ありません」」
風球2回と水結界1回しか使ってないもの、消耗なんて微粒子レベルでしか存在しません。
「しかし魔法一発であのオークを倒すとはやはりお前たちはすごいな」
「いやいやアスラさん。すごいなんて一言で片づけたらいけませんよ!
あのオークを魔法一発で仕留めるなんて常識では考えられないっすよ!」
魔石回収に動き始めたダクティが物申す!
「ダクティの狭い見識は置いといて、俺もあんな威力の風球は初めて見たぜ」
ダクティの評価低いなぁ・・・。
「だろ?だからこいつらはすごいって事よ!なぁ!」
パパンが俺たちのことで誇らしげにしているよ。
ただそんな事を言われましても・・・、むしろ2回目は魔力を抑えました、とは言わないほうがよさそうね。
「初陣で張り切っただけです。たまたまですよ」
謙遜が日本人の美徳って誰かが言ってたよな、、、ついこういう対応をしてしまう。
「いや、戦闘時間が1/10に短縮できた。よくやったな!」
「「ありがとうございます」」
「よし、このあたりの魔物はいなくなったようだし一度戻るぞ!」
ダクティの魔石回収が終わって俺たちは来た道を戻った。
森を川まで抜け、川沿いに上流に向けて進む。30分ほどでレムザと合流した。
「おや?お早いお帰りだな、収穫なしか?ガハハハ」
「いや、一通り退治してきたよ。ダクティ、戦利品を見せてやれ」
「倒した敵の魔石っす」
布袋に集まった魔石をレムザに見せる
「すごいじゃいか。この短時間にこんなにたくさん流石アスラだな」
「アスラは相変わらず強いが、今回はこのオチビちゃん達が頑張ったんだぜ」
「ほーか。ちょうどスープの用意もできたところだ。飯を食いながらゆっくり聞かせてもらうさ。ガハハハ」
見ると河原の石を積んで簡易釜土・・・というかキャンプの時にするような焚火に鍋でスープが出来ていた。
地竜は少し離れた大木に繋がれ休んでいる。
「よし、じゃあ昼食にしよう」
アスラの号令で焚火を囲むようにみんなが座り込む。
ララに用意してもらった干し肉とパンを取り出すとレムザがスープを取り分けてくれた。
「しかしなんでオークがこんなところにいたんだろうな」
ベンが不思議がっている
「オークってこのあたりでは目撃情報すらないっすよね」
「そうだな、ゴブリンやスライムもあんなに群れで出てくるのも珍しいしな」
「魔物の動きが気になるな、午後からももう少し探してみよう」
「それはそうと、あのゴブリンを倒した魔法ってなんだ?」
「【水魔法結界】ですか?あれは初級魔法の【水壁】を任意の範囲まで広げて敵を覆ったんですよ」
「おまえ、それ上級魔法じゃないか。どこで覚えたんだ?」
「僕たち二人で考えたんです」
「自力で上級魔法を・・・やっぱり俺の自慢の子供たちだな」
「いやいや、水魔法結界だと敵の攻撃を防ぐものだぜ?中に閉じ込めた後攻撃してたじゃないか」
「ああ、閉じ込めた中で初級魔法の【水球】を使ったんですよ」
「そんな魔法聞いたことないな・・・このオチビちゃんたちどうなってんだよ?」
「すげーだろ?」
「すごいなんてもんじゃないっすよ、俺なんて目の前でオークに直撃した【風球】を見ましたけどすごい威力でしたよ!」
「ああ、そういや腰抜かしてたなっ!」
「腰抜かしてなんかないっすよ!すぐ立ち上がったの見てなかったんすか」
「なんじゃ、それなら敵の目の前で尻餅ついてたのか。ガハハハ」
「ちょっと後ろに躓いただけっす!」
愛される弄られキャラだねぇ。
みんな食事が終わり、レムザがキセルに火をつけて一服しはじめた。
俺たちは地竜のそばで様子を伺っている。
なんとかナデナデできないものか。
地竜は丸くなってお昼寝しているからそーと、、そーーと近づいて、、、
ピトッ
さ、、触れた~~~!
鱗が結構硬いんだな。
続いて
ナデナデ・・・
ちょっとずつナデナデポイントを頭のほうに、、、。
背中から首筋へ、、、そしておでこをナデナデナデナ・・・
あ、目があった。
けどおとなしい。
つい目があって止めてしまった手を再度ナデナデと動かす。
よかった、撫でさせてくれるらしい。
ユイと二人でナデナデを堪能させてもらった。
「ニイ川の目撃ポイントは終わったから次はサンリの丘まで移動する」
リーダーパパンの号令でレムザは地竜を竜車に繋ぎ御者台に乗り込んだ。俺たちは荷台だ。
俺たちは来た道を戻る。途中なんの目印もないあたりで道を逸れていくとギリギリ竜車が通れる獣道を進む。
アスラのいうポイントまで来るとアスラとダクティは地竜の前を歩く。
俺とベンは荷台で周囲を見ながら進んだ。
結局こちらにはスライムが2匹ほどいたがアスラにサクッと退治されて終わった。
帰り道、村へと続く街道へと差し掛かった時、一台の竜車がバリの町へと走り去っていくのが見えた。
たまに村に来る行商の人だろうか・・・、でもなんかっぽくなかったな。
街道に入るとサイージョの村までもう少しのはずだ。
そういえば行きの時ほどお尻が痛くない。
なぜだろうと少し考えたが、ずっと【身体機能強化】を使ったままだった。
俺のケツ力も高まっていたのだ!
ケツ力ってなんだよ!
でも痛いの嫌だから帰るまでこのままにしておこう。
そうして村まで到着した。
村に入るとすぐにダクティっぽい一人の男が近づいてきた。
「アスラさん!大変です!!」
「ペレス、どうしたんだ?」