範囲魔法開発
昼食が終わると村はずれの一本杉のある丘、通称、一本杉平原に行った。
今日はライカがいなかった。
「今まで毎日来てたのに、どうしたんだろう」
「まぁ家族で何かしてるのかもね」
「せっかくアスラから一本取った話や岩一刀両断の話もしたかったのにね」
「あと、魔物討伐見学ツアーもね」
「じゃあ今日はどんな感じの魔法にする?」
「今まではアスラの動きについていけないからその辺が課題だったけど、動きについてはクリアしたからね」
「じゃあ次は攻撃を当てるための何か・・・かな」
「細かい技術的なものはゆっくり練習していくとして、もうちょっと大胆に範囲魔法とか?」
「範囲魔法……MAP兵器までじゃなくてもいいから何かできないかな」
「例えば、初級のウォール系魔法で敵を取り囲むとか」
「いいね。対アスラ戦でも逃げ場がなくなるから使えそう。それ以外で複数の敵を想定したとしても、範囲を広げればまとめて倒せるよね」
「基本発想はそれでいこう。囲ったあとはどうしよう」
「最初に半径を決めてサークル状にウォール系魔法を発動、その後、その内側に向ってボール系魔法を追加していくのは?」
「でもさ、サークル状だと上空から逃げられるよね、だから半円の球状にしたらどうかな」
「それだ!やってみよう」
そして的になるのはいつもの岩さん。
「属性は水で、【水壁】でいくよ!」
火属性とか使って火事になったら大変だからね。
通常、防御魔法であるウォール系魔法は自分のすぐ前に縦横2メートルサイズの壁を作り出す。
しかし、今回は地面に手を突き、半径5メートルほどの円を水魔法で描く。地面に出来た水魔法の円からさらに球体になるように水魔法を噴き出す。岩さんを中心に半径5メートルほどの水魔法結界っぽいのができた。
「半球状の内側に向けて【水球】とかボール系の魔法を全方位からランダムに射出!」
「よーし、いけ!フィンファンネル!!」
ちょっと違うけど全方位攻撃だし。
ビュ!ビュ!ビュ!ビュ!……という射出音と共に無数に出来てくる水球がどんどん真ん中の岩さんに向けて射出される。
30秒も続けていると、結界の中は10センチ程水が溜まっていた。対人戦闘と仮定するとこれ、足が取られて動きが遅くなる副作用もある!という発見。
「一度対象を結界内に捕まえたら、もうこんなサイズである必要がないよね」
「じゃあ全方位攻撃しつつ結界のサイズを小さくしていこう」
最初半径5メートルあったものが少しずつ小さくなっていき半径2メートルほどで止めた。中にたまっている水も1メートル位にまで増えている。
「最後はウォール内に残っている魔力を頂上に集めて真下に撃ち落とそうか」
「せーの」
ズバァアアアアーという滝の音というには勢いが強すぎてもはや違う気がするが、結界の頂点から水が落ちた。
そして残ったのは……びっちゃびちゃの地面。
「思ったより大規模になっちゃったね」
「でもこれ、属性変えると利点もありそう。火属性なら中は酸欠だよきっと」
「だね。よし、じゃあ今度はユイがやってみてよ」
「おっけー」
先ほどと同じような光景が広がっていく。
「じゃあ、外から攻撃してみるね」
全方位攻撃を始めたあたりでそう宣言すると俺は【土球】を用意した。ただ、そのまま撃っても結界で威力が落ちそうなので、いつもよりもずっとずっと小さく、その分土の密度を高くした。
そのうえ貫通力を上げるため形も球状から銃の弾丸のようにして射出するときはいつもより魔力を多めに使ってより速く撃ちだした!
「【土球】」
もはや土球とは呼べないそれは水魔法結界を物ともせず貫き岩に命中した。
「いけるね!」
「それ【土球】とはもう別物だね」
「じゃあオリジナル土魔法ってことで、【土弾】ってことで」
「これ、二人で結界を作成すればもっと早く作れるじゃん。そして出来たら一人で結界を維持。もう一人が外から援護射撃ってパターンもいけそうだね」
「そういえば結界魔法の名前はどうする?」
「中に自分がいればそのまま防御結界にもなるし、結界でいいんじゃない?さっきのは【水結界】ってことで」
「そうだね」
「じゃあそろそろ帰ろうか」
今日も一つレベルアップできたかなぁ。
やはり魔力は万能で楽しい。
満足感を得て、帰宅した。