模擬戦してみましょう
オリジナル魔法、【身体強化魔法】を開発してから1週間程経っただろうか。
午前中の剣術の稽古は真面目に取り組んでいたが模擬戦ではアスラに掠らせることも出来ず、口惜しさからその後の基礎訓練には気合が入っていた。
午後からの時間は一本杉平原でライカと一緒に【身体強化魔法】の練習をしていた。
ライカは一度使うと魔力切れしてしばらく使えなくなるため俺達ほどは練習できなかった。それでも最初に比べればスムーズになり発動まで1分ほどでできるようになった。
俺とユイは何度も練習し、「ブースト」って言う間くらいの時間で使用することができるようになっていたし込める魔力調整も出来た。
5歳になってからなんだか生活が安定したような気がする。体力、魔力ともにしっかりと鍛えることができていると思うし、実際に向上していくのが実感できて楽しかった。
「そろそろアスラ山に登りますか」
「そこに山があるからね」
誰もなぜ登るかなんて聞いていない。
が、手近な目標が父親ってのはよくある話だと思う。超えられるかどうかは別としてね。
ある日、午前中の剣術の時間でのことだ。
ストレッチも基礎訓練も終わってアスラとの模擬戦の時間だ。
「父さま、一度魔法を使っての模擬戦というのをやりたいのですが受けてもらえないでしょうか?」
目の前にある高い壁は超えてこそ意味がある!
とはいえ、攻撃魔法は使わない。
「ん? まあいいぞ。お前たちの魔法はすごいからな! 俺もちょいと気合を入れるか!」
受諾してもらえた。
「ではいきます!」
まず使うのは闇魔法のひとつ。
「【認識疎外】」
「【認識疎外】」
俺たちは光学明細って呼んでるけど(笑)
「ほぅ……」
そして【身体能力強化】だ。こちらは見た目には何も変わらない。
ゆっくりアスラを中心に俺とユイが左右に分かれる。
丁度、俺とアスラとユイが一直線になった瞬間、ユイと同時に飛び出した。
が、ダッシュの速度は微妙に俺のほうが速くユイは一人時間差狙いだ。
まず俺の一振りをアスラの左側から一発!
アスラからすれば認識しずらい相手から放たれる想定外の速度の攻撃だ。
「あまい!」
ガンッ!
防がれた? が、まだまだ想定内。ガードされたとはいえそこからさらに魔法を追加だ。
「【照光】」
俺とアスラの交わっている木刀から急激に光が発生!
俺とユイは片目を瞑っている
直後、アスラの右側からユイの横なぎ一閃!
ガンッ
「うぉ?」
背中側からの一発をギリギリ小手で受け止めたアスラだったが体制が崩れた。
【魔法弾】×2
俺もユイもいない、アスラの近くの足元に放つ
ザンッ! ザンッ! という音を立てて2発とも地面に直撃すると砂をまき散らした。
アスラの意識が一瞬予想外の音を立てたほうに向く。そこに俺とユイが同時に追撃!
ガガンッ!
ギリギリでアスラの木刀によりガードされた
驚きを隠せないアスラと、どうだと言わんばかりのユイの顔が見える。俺の顔もどうだと言ってるんだろうな。
「よ、よし、それまで」
その掛け声で木刀を腰に収める
「「ありがとうございました!」」
一礼した。
今までガードはおろか、掠らせることすら出来なかったアスラに大した成果だ!
とはいえまずはアスラに【小回復】で治療する。
「魔法を使えるとなるとお前たちはさすがにすごいな!」
褒められてうれしくなる。
「だがせっかくの魔法が生かし切れていないところもあったぞ。例えば、【認識疎外】で俺から見えにくくなったのに気配は丸出しだし足音は聞こえるし。さすがに【照光】にはビックリして不意を突かれたけどな」
「足音や気配ってどうやれば消せるのですか?」
「気配は修練あるのみ。足音は今でも訓練やってるだろ?体重移動の基礎訓練の延長だ」
「精進します」
「だが二人ともよくやった。それだけ動けるようになっていれば、練習量は倍にしても大丈夫だ!」
なんてこった、練習量が倍になった。動きに関しては【身体機能強化】のおかげなんですが。
「まぁそんな顔するなって。褒美にいいものを見せてやるよ」
アスラは普段使っている真剣を持ち出すと家の裏に周り、大きな岩の前まで俺たちを連れてきた。
岩の前で真剣を抜くと、岩まで2メートルほどの距離をとって気合を入れている。
一太刀!
岩が真っ二つになった。
「これが神明流の剣撃だ」
カッケーーー!!! これは惚れてまうわー!!
剣と魔法のファンタジー世界にしかあり得ない物理法則なんて知ったこっちゃないこの剣撃は俺たちを魅了した!
「父さま、すごいです!」
魔法がいろいろ使えるとはいえ、5歳の子供に一本取られたことなど忘れたように得意満面の顔になっているアスラ。父親の威厳ってやつを示せれてよかったね。
「よし、じゃあそろそろ昼食にするか」
「「はーい」」
昼食はいつもより賑やかだった。その中で、アスラから提案があった
「お前たちもだいぶ動けるようなったようだし、今度の魔物討伐に一緒に行くか?」
「「行きたいです!」」
魔物の種類なんて関係ない。ファンタジー世界なのにこの村は平和過ぎて魔物を見る機会がなかったのだ。俺達は毎日いろいろ鍛錬してきたからレベル1ってことはないだろう。その辺にいるような雑魚モンスターなんかに負けることはないはず。負けないよね?
討伐隊に連れて行ってもらう魔物見学ツアーだ!
「よし、じゃあ明日は少し早いから寝坊するんじゃないぞ」
「「はい!」」