クラーケン
お昼寝というには少し寝すぎたかもしれない。
起きると軽く陽が傾きかけていたからだ。
まだ出てこないということは夜間の戦闘も考慮する必要が出てきた。
俺達が起きて出て来た時に監視していたのはブショウさんとカリューさんだった。
「このまま夜になってしまうと灯りがかがり火だけになるので、少し増やしておきますね」
一応一言入れてから俺とユイで高台の地面あちこち7~8か所に適当にゆるーい【照光】を張り付けておく。
とりあえず光量はそこまで多くないが一晩は照らし続けるのをイメージした。
そして迎撃ポイントにも【照光】を張り付けておいた。
当然、海中なので高台からみても光が分かる程度の強さで予測進路およびその周辺何か所かにつけた。
「おいおい、あんなに遠くにまで飛ばせるのか???」
「そうですね、見える範囲だったらだいたいいけますよ」
というとまた驚かれた。
さらに陽が沈むと、3つの島の間にある海が海底からぼんやり光を放ち、
こちらの高台にはかがり火台に火が灯され幻想的な雰囲気が出来上がっていた。
ここから見える他の2つの島の高台にも火が灯されたのが見える。
監視している二人のすぐ後ろでは弓部隊を補助する魔法陣が一直線に並んでおり、
そのすぐそばには矢がたくさん積まれていた。
これだけの荷物、来るときにはなかったからきっと魔法鞄に入っていたんだろう。
ちょうどカリオンとカトランの双子が魔法陣の近くにいたので聞いてみた。
「こんなにたくさんの矢が入る魔法鞄をお持ちなんですね」
「私たちが持っているのは普通のサイズの魔法鞄よ」
「魔法鞄に荷物を入れて」
「それを別の魔法鞄に入れて」
「それをさらに別の魔法鞄に入れれば」
「大きさはとても小さくて済むのよ」
「容量の大きい魔法鞄はとても高価」
「だからそれを解消する節約術よ」
「といっても、どこの冒険者もやっているけどね」
「あ、なるほど!そういう方法があるんですね」
どうでもいいけど交互にしゃべらないで。目線が行き来して落ち着かない(笑)
「逆に私たちからも質問よ」
「あなた達、詠唱も魔法陣も使わずに魔法を使っていたわよね」
「他の人は気付かなかったのかもしれないけど」
「私たちの目はごまかせないわ」
「それに魔法だって普通じゃないものばかり」
「そうは見えないけどもしかして、魔族なの?」
「そうは見えないけどもしかして、エルフかしら?」
どっちかが代表して話してくれればいいのに。
「俺達は人族ですよ」
「ライカはハーフエルフですけどね」
「でもあなた達も魔法を使っていたわ」
「僕たちは赤ちゃんの頃からそうとは知らずに」
「魔法のトレーニングをしていたようで」
「それが原因かは分かりませんが」
「一部のエルフみたいに魔力の流れを感じ取れるんです」
「そのおかげで魔力自体を扱えるので」
「普通の魔法以上のことができるようになったんです」
「というわけです」
「途中からはエルフの先生にも出会えたので」
「いろいろそこで教わったのも大きいですね」
負けじと俺達も交互にしゃべってみたんだけど。
「ちょっと、二人で交互にしゃべらないでよ」
「どちらか一人が代表してしゃべりなさい」
そこまで言って、カリオンとカトランがあっ!って顔になった。
気付いてなかったのか。
「わ、私たちも気を付けるわ。。。。」
「無意識でやってたんですね」
「二人で話せば、しゃべる量が半分で済むからお得だって思いついてからずっとそうやってきたのよ。そしたらそれが普通になっていたわ」
まぁ、癖ってそういうものかもしれない。
そんな和やかな会話をしている時だった。
ピィーーーーーーー!!!
警笛が鳴った。
音の方向を見ると、カリューさんが警笛を鳴らしていた。
「おい!出たぞ!みんな出てこい!!!」
ブショウさんが大きな声で集合をかける。
俺達も目標ポイントの方を見た。
やっぱりデカい。
スルメの顔が少し海面から出ていたが下から光が当たって海中の影になっている部分を見ると
体長数十メートルじゃきかない。
ということはモビルスーツよりでかい。モビルアーマーでもあのサイズは・・・人参嫌いな人が物語の最後に乗ったヤツクラスか?
いや、それよりもデカいのかも。
どうにも比較対象が無いから大きさの感覚がよくわからんことになっている。
どちらにしろ、作戦開始だ。
俺達は準備していた箱の所に行くと特大サーチライトになるように【照光】を掛けた。
遠くで警笛が鳴っているのが聞こえる。
他の部隊も目標が現れたため戦闘準備に入っているようだ。
「攻撃部隊!攻撃開始だ!!!!!」
なぜかラウンドさんが大声で言った。
すると弓士が乗っている魔法陣が光り出す。
すぐ後ろにいる魔法使いが魔力を込めていた。
と同時に弓士は弓に魔法をかけている。
矢の先端に赤い光のエネルギーがこもった。
矢を弓に構えると、最初の攻撃がはじまった!
こちらから4発の攻撃がスルメに向って飛んでいく!
目標がデカいとは言え距離がかなりあるのにバッチリヒットした!
「どうだ!?」
スルメの顔で小さな火がポワンと着いたがすぐに消えた。
これ、ダメージ入ってるのかな?
モビルアーマーを人が倒せるのかって話になってきたぞ?
とはいえ、やれるだけのことはやりますか。
俺達は弓部隊の後ろに行くと魔力を大気に通し始めた。
と同時に他の部隊からも攻撃が始まり、矢が飛んでいくのが見えた。
こちらの弓士の攻撃も続く。
俺は目標地点上空の空気を操り回転させていく。
その速度をドンドン上げていき、竜巻を作り出した!
「これが俺達が開発した上級魔法、【逆上級竜巻突風(Rトルネイド)】だ!!」
この魔法は特定範囲に竜巻を発生させ中で起こる真空波によりズタズタになる!
「普通の風上級魔法の【上級竜巻突風】と何が違うんだい?」
カリューさんが周囲を警戒しながらも聞いてくる
「見ててよ、その違い!通常の【上級竜巻突風】は近くにいるすべてを飲み込んで上空にまき散らすけど、
これはその逆。上空から海上に向けて打ち付けるんだ」
そこにユイの魔法が続く
「【上級火炎柱】」
俺の作り出した竜巻上空に巨大な炎の塊が出現。すぐにその炎も竜巻に吸い込まれ、竜巻は炎の柱となって打ち付けた。
「ほぉー!これはすごいな!さすがのクラーケンもこれでも無事ってことは無いだろうぜ」
ユイの炎は対象に纏わりついて燃え続ける。少々暴れても消えないぜ?
炎の渦を打ち付ける魔法を続けていくと、なぜかクラーケンと目が合ったような気がした。
何かくる!
と思うと同時に、クラーケンはその触手を使って海の水をこちらに投げつけて来た!
こちらを敵と認識したということか!
「ライカ!頼む!」
「ボクに任せて!【風結界】」
と同時に高台全体に風属性の結界が張られる。
あの巨大な触手から放たれただけあってここまで届いた海水も尋常な大きさじゃない。
ライカの結界だけではキツイかもしれないので俺とユイは片手で攻撃魔法を続けながらもう片方の手をライカに添え魔力を送る。
すると出来上がっている結界の厚みが増した。
届いた水の塊は結界に触れると風の流れに従って後方へと弾かれていく。
投げて来た海水が無くなったところで結界も消滅した。
「思ったより強力な攻撃だったね、ありがとう」
結界が無くなったらこちらの弓攻撃もどんどん追加される。
弓の攻撃は俺達の竜巻にあたっても関係なく直進、クラーケンにヒットしていた。
俺達に海水攻撃が効かなかったのが分かったのか、それとも炎の竜巻が少しでも効いたのか、
クラーケンは少し海面から出て来たと思ったら反動をつけて海中に潜ってしまった。
俺達は一度魔法攻撃をやめるが、海中にいても弓攻撃は続く。そして海の中でもヒットし続けた。
クラーケンはすぐに顔を出した。
一度海に潜ったのでユイの炎も消えてしまっていた。
そして海水での攻撃が効かないならばと触手を直接こちらに伸ばしてきた!
「くるぞ!各個撃破!!」
ラウンドさんが言うと護衛部隊は俺達の周りを囲んだ。
「ライカ!」
「わかってる!【火壁】
するとか高台の外側で炎の壁がぐるりと高台を取り囲んだ。
「おいおい、これのどこが【火壁】ってんだ?普通の何枚分あるんだよ」
カリューさんはいちいち呟いているがそれは放置。
すぐに触手は俺達のところまで来たが、【火壁】を突き破って攻撃はしてこない。
火の無い上空から触手攻撃が来た。
「させるかよ!」
チョビさんがいる方向からきた触手を大きな剣で切り落とした。が、触手は切り落とされてもどんどん伸びてきて攻撃は続く。
攻撃が来たら切り落とす、切り落とされても触手攻撃は続く。
そうこうしているうちに、他の部隊の魔法攻撃も始まった。
どうやら通常上級風魔法の【上級竜巻突風】のようで竜巻の中は海水交じりの突風竜巻が出来ている。
触手の何本かは他の部隊へも伸びている。
が、こちらへの触手攻撃が一番多い。
気が付くと護衛5人はフル稼働で触手と戦っていた。
クラーケンを見ると、やっぱりこちらを睨んでいるように見える。
最初の火攻撃のせいで俺達をメインの敵としたのかな。それとも【照光】の効果でこっち向いてるだけかな。
見ると、【上級竜巻突風】の効果が終わるタイミングで、もう一つの部隊の魔法攻撃が始まった。
クラーケン上空に岩の塊がいくつも出現し、それが落下しクラーケンにあたっている。
あれは【上級岩石群落】のはずだ。一つの岩が1~2メートルはあるはずだ。
が、なんだろう、、、サイズ感が違いすぎて小石が当たっているようにしかみえない。
どこまでダメージが入っているのか疑問だ。
他の部隊を見てみると、こちらに攻撃してくる触手よりも本数は少ないはずなのに少しずつ迎撃が間に合わなくなってきているのか、本体への攻撃をしていた弓部隊の攻撃が何度かに一回は触手への迎撃に回っている。
そういえば、ギルドマスターのデンゼルさんの話ではヒゲーズが腕利きだからこちらに回したって言っていた。ということは他の部隊はヒゲーズよりも格下の部分なんだろうか。
クラーケンはこちらを睨んでいるような気がするが、これが気のせいじゃないとするならば
最初の火柱が多少なりともダメージを与えたということになる。
であるならば何度か続けてみようかな。
俺は、【上級岩石群落】が切れるタイミングを見計らった
「もう一発【逆上級竜巻突風(Rトルネイド)】だ!!」
上空から海上に打ち付ける竜巻が発生、クラーケンにぶち当たる!
合わせるようにユイが続く
「威力2倍だ!【逆上級竜巻突風(Rトルネイド)】」
上空から打ち付ける竜巻がさらに長くなりかなり上空からの海上へ打ち付ける!
すぐに海水の表面が凍り始めた。
かなり上空の氷点下になる冷たい空気を海上に打ち付けているのだ。
みるみるうちに海水の広い部分が凍っていく。
スルメみたいな顔が海上に出ている部分が凍っていき、動きが無くなる。
が、本体へのダメージはどこまで通っているのか分からない。
その証拠に攻撃してくる触手は変わらず動き続けている。
いや、むしろ他の部隊へ攻撃していた触手が減りこちらへの攻撃が増えてきたような気がする!
近くを見ると、ヒゲーズはもちろんカリューさんもサーベルで触手を迎撃しているし、
素早い動きで双剣を扱い踊るように迎撃しているラングさん。
でも触手が増えたことでどうも分が悪くなってきた。
他の部隊よりも俺達を優先的に攻撃してきている以上、クラーケンにとって俺達をより敵として認識しているので間違いないだろう。
しかし触手が増えてもまだ耐えているのはライカの【火壁】とかがり火のおかげかもしれない。触手は火のない場所からしか攻めてこないからだ。
だがそれでもこれ以上触手が増えてきたらヤバイかもしれない。
チョビとブショウはいっぱいいっぱいになっているし、他の護衛メンバーもそのフォローに回れないでいる。
俺とユイも周りを見たりはしているが【逆上級竜巻突風(Rトルネイド)】で集中しているんだよね。
ライカも防御のための【火壁】に集中しているのでフォローには回れそうにない。
さって、どうしようか。
もう少しがっつり凍らせてカッチンコッチンにしてやりたいのだけども、完全に凍らせるにはまだ時間がかかりそうだ。
「ぐわっ!」
どうしようか考えていると、チョビさんが攻撃を捌き切れず攻撃を食らって吹っ飛んだ!
見ていただきありがとうございます!
お正月特番見ていたら書く時間無くなってしまいまして。
ちょっと更新スピードおちます。
趣味がテレビウォッチングなので多少はご勘弁を!(テヘッ




