お告げの後
とりあえず俺達は通路を戻った。
エントランス階段上まで来ると、入るときとだいぶ様子が違うことに気づいた。
神殿職員は慌てて走り回っているし、長蛇の列はなくなっていた。
エントランスの床は全て濡れていたし、よく見ると走り回る神殿職員もずぶ濡れだ。
まさかとは思うが、、、さっそく本人に聞いてみるか。
俺はチョーカーに付いている飾りの〇水印に召喚するイメージで魔力を送った。
〇水印から青白い光と共にウンディーネが現れた。
『ちょっと、呼び出すの早くない?早すぎない?ついさっき話し終わったじゃない!』
「聞きたいのだけど、この状況はどうなってんだ?」
『この状況ってなによ?』
「エントランスの雰囲気が全然違うだろ、とぼけるなよ」
『制御不能だった魔力を水にして放出しただけよ』
「やっぱりお前のせいか。わかった。じゃあもう戻っていいぞ」
『ちょっと!お前って言わないでよね!水の精霊様よ?』
「自分で様とかいうなよ。それにあんまりはしゃいでると他の人に変な目で見られるぞ?」
『召喚された時は他の人からは見えないから安心なさい』
俺はユイのほうを見た。
「見えてる?」
「見えてる」
今回は俺が召喚したからユイからは見えないはずじゃ。
「だ、そうだ。変な目で見られてるぞ」
『そんなバカな!あー。うん。あんた達は魂が一緒だからよ。それ以外に考えられないし』
「なんとまぁ。やっぱりもういいよ。さあ、おうちへお帰り」
召喚してみたものの、消し方はよくわかってないから帰るように促すしかない。
『何よそれ。そもそもこの神殿が私の家なんだから、すでに家なんですぅ』
チッ、めんどくさい。
「ではキュートな精霊様。博識なあなたのおかげで疑問は解消しました。ありがとうございました」
『そうそう、分かればいいのよ。じゃあ困ったことがあればまた私に相談しなさいね』
そういうと顕現していたウンディーネはチョーカーの〇水印に戻った。
こいつちょろい。
階段を降りて、慌てている職員に迷惑をかけたのはダメ精霊だとしても
原因の一部は俺達にあるみたいだから申し訳ないと思いつつ、神殿を出た。
外は通り雨があったような雰囲気だった。
噴水の近くで俺達が出てくるのを待っていたアスラと合流した。
他の人同様、アスラもびっしゃりと濡れていた。
「父さま、お待たせしました。それにしてもすごい恰好ですね」
「ああ、少し前にこの噴水から水が空まで噴き出たんだ。突然な。
それでその直後雨となって降り注いだわけだ。そしてこうなった」
両手を広げて濡れてしまった衣服を見せるアスラ。
「ところで、ライカはまだでしょうか?」
「まだ出てきてないな。まぁもう少し待とう」
噴水から入り口までは距離は少しあるが一直線。
人の賑わいはあるがアスラが見逃したりはしないだろう。
「しかしそのままだと父さまが。。。とりあえず温風で乾かしますね」
俺とユイがアスラの両脇に立つと、アスラに向けて温風を作り出した。
もちろん、周りからの目もあるので極々小規模だ。
「ああ、すまない」
そうやってアスラを乾かしていると、神殿入り口からライカが戻ってきた。
驚いたことにライカ一人ではなかった
「久しぶりです!」
その声、その犬耳、そこから伸びる茶色の長い髪、その柴犬尻尾、、、間違いない
「ジーナじゃないか、久しぶり!」
ジーナは以前よりもずっと大きくなっていた。
身長は俺より5センチくらいは高い。
胸もちょっと膨らみが見え始めていた。
「私もいるにゃ!」
その声、その猫耳、黒髪のショートカット、その猫尻尾、、、間違いない
「リンダも久しぶり!」
リンダも大きくなっていた。身長も。胸も。
「さっきエントランスでバッタリ会ってね、ボクもビックリしちゃったよ」
ライカは久々の再会にエントランスで話をしていたが、
俺達にも会わせようと引き連れてきてくれたのだ。
「二人は精霊様のお告げで来てたの?」
「そうですよ!先ほどお告げを授かってきたところです」
「そっか、俺達もそうなんだよ」
目的も同じだったらしい。
まぁ、同い年だったからこの一年の間にここへ来るということはあり得るが
まさか同じ日、同じ時間に行っているとは思わなかったね。
「じゃあ少し早いが、皆でお昼ご飯にでも行こうかね。ジーナとリンダも一緒にどうだい?」
流石大人ですな、アスラ。分かってらっしゃる!
「賛成にゃー!」
「賛成です!」
ジーナとリンダも問題なさそうだ。
「じゃあ何が食べたいかな?」
「お肉がいいです」
肉が好きなジーナ
「魚がいいにゃ!」
魚が好きなリンダ
「ボクは美味しい野菜が食べたいな」
未だにボクっ娘継続中のライカ
「どうせならご当地グルメがいいな」
食への期待を忘れないユイ
「まだ食べたことのない料理がいい」
食への期待を忘れないパート2の俺。
「おいおい、見事にバラバラじゃないか。まぁ、任せろ。この精霊都市シーマ発祥の料理で旨いのがあるんだ」
流石アスラ、これだけバラバラな要望に応えれるとは!
そして辿り着いたのは大きな鉄板があるカウンターだけの店だった。
「へい!らっしゃい!何にしやしょうか?」
「豚玉の筋肉入り1つに、海鮮玉のツーナ入り1つに、デラックスの野菜もりもり1つに、カーキ玉1つ、
スペシャルのモチ入り1つに、そうだな・・・俺はデラックスのネギ多めで!」
「あいよっ!」
このフレーズ、前世でも聞いたことがあるぞ。
お好み焼きだろ!
「これはな、シーマ焼きっていう料理なんだ。うまいぞー」
名前は違うけど、絶対お好み焼きだろ!
目の前にある大きな鉄板の上に、それぞれ頼んだ具材が焼かれはじめた。
その上に大量の刻んだキャベツっぽいのが乗せられ蓋をしてしばらく蒸し焼きに。
その間にうどんっぽい麺が鉄板で焼かれ、その隣では卵が薄く延ばされている。
それぞれを重ねたかと思うとひっくり返してソース的なタレが塗られた。
「はいよ、おまち!」
タレが焦げたところからすごい香ばしい匂いがしている。
「この鉄のヘラで食べるのがご当地流なんだが、熱いから気を付けて食べろよ」
うん、完全にお好み焼きだ。しかも広島風。
まさか異世界ファンタジーで広島風お好み焼きが食べれるとは思わなかった。
「「「いっただっきまーす!」」」
これは完全にうまい。
前世の記憶と比べても遜色なく旨い!
途中熱さに苦戦していたリンダは取り皿を2つ使って冷ましながら食べていた。
猫舌なんだね。
見た目かなりでかかったシーマ焼きだが、ペロリと食べてしまった。
しいて言うならば、マヨも欲しかったなぁー。
満腹大満足で店を出た。
あれ?せっかくの再開なのにあんまり話してなかったな。
「お前たち食べるのに夢中過ぎてお告げの話も聞けなかったな」
苦笑いのアスラ。
だって美味しかったんですもの。
「仕方ない、あっちの公園で飲み物でも買っていろいろ聞こうか」
すぐ近くにあった公園へ行くと、露店で飲み物を買い芝生になっているところで腰を下ろした。
「それで、みんなお告げはちゃんと覚えているか?」
「もちろんです(よ)(にゃ)」
「じゃあ一人ずつ聞いていってもいいかな?」
誰から話すのかな・・・みんな話したそうにしているな・・・
「誰から話すか順番を決めよう!公平にジャンケンでどう?」
「ジャンケンってなんにゃ?」
「ルールは簡単。じゃんけん、ぽん!の合図で手を前に出すだけ。出せる形はグーとチョキとパーの3つ。
グーはチョキに強くてチョキはパーに強くてパーはグーに強いんだよ」
「簡単だね!」
「じゃあいくよ!じゃーんけーん ぽん!」
結果は俺とユイが最初に勝ち、リンダ、ジーナ、ライカの順になった。
ちなみ俺とユイは内容が同じってことで同着1位。
俺とユイはジャンケンでは勝負がつかないからね。
過去に何度もやったが全てあいこに終わっている。
「じゃあ俺達の話からだね。実はいろいろあったんだけど、簡単に言うと冒険者になって世界中にある精霊神殿に行くようにって事だったよ。
そして水以外の属性、火・風・土・光・闇の精霊に会いにいかなきゃいけないみたい」
「ほぉ、それは珍しいお告げだな」
「それで、一度村に帰ったら冒険者として旅立とうと思います」
「そうか、それは寂しくなるな。。。」
アスラは感慨深そうな表情をしていた。
そういえばアスラも10歳のお告げで冒険者になったはず。
自分のことを思い出しているのかもしれない。
「じゃあ次はわたしにゃ!わたしは剣士としての才能があるらしいにゃ!だからその力を磨いてたくさんの人々を幸せにするにゃ!」
「それだったら私も同じ内容でした」
ジーナもリンダと同じだったのか。
「たーだ、わたしの場合は特に素早い動きの剣術が合ってるらしいにゃ」
「私は力強い剣術が合ってると言われました」
なんか二人は予想通りというか、種族特性に合わせた無難なお告げだな。
まぁ【鑑定】していいところを教えてくれる微精霊のお告げプログラムだとそうなるのか。
「だから、わたしは剣術を磨きながら世界中を旅して弱いものを守るにゃ!」
「私も同じです」
旅しろとかまでお告げプログラムでいうのかな?
もしかして俺達の内容に引っ張られたかな?
「じゃあ最後はボクだね。精霊様には、魔力が高いので今後もそれを磨くように言われました。
特に光魔法、それも治癒関係はまだまだ上手になれるそうです。その力を使ってたくさんの人を救う道を示されました。
具体的にどこで何をするのかというお告げは無かったのですが、みんなの話を聞いてボクもユイちゃんとケンちゃんについて
世界中を旅してみようと思います」
ですよね、お告げプログラムじゃ具体的な指示はないよね。
そして世界を旅・・・やっぱり俺達が最初に話した内容に引っ張られたかも。。。
「じゃあみんなで旅すればいいにゃ!」
「それがいいね」
「ま、まぁ待ちなさい。今後の人生を左右する話だ。まずは皆も家族に報告して、それから決めたのでもいいだろう?」
「確かにそうですね。一度家族と相談してから決めます」
「もう決めたにゃ!剣術王にわたしはなるにゃ!」
「わかったわかった。まぁみんなで冒険者になってパーティーを組むという手もある。が、まずはご両親と相談してからだ」
「わかったにゃ」
「ボクもそうします」
「ケンとユイも、それでいいな?俺は反対しないがララにもきちんと報告してからだ」
「「わかりました」」
「じゃあ皆、出発の準備もあるだろうから1か月後の今日俺とユイはもう一度この町に来る。
その時に、一緒に来てくれるなら再会しよう!」
「分かった!」
「分かったにゃ!」
「ボクも絶対行くからね!」
俺達は約束を交わすと、ジーナとリンダを見送った。
「さてと、じゃあ帰るか。港にいくぞー」
「はーい」
そうして俺達は帰宅するため港に向かった。
ちなみに今日のバリ行定期便はすでに出発後だったため、
チケットだけ購入してシーマでもう一泊することになったが。。




