私、冒険者になりたい!
「正気かい!?ユリアンナ!」
「はっ!はいっ!」
ああ、お父様があんまりびっくりするから、私までびっくりしちゃった。
「なんと無謀な事を。爵位は高くないとはいえ、君だって立派なレディなんだよ?ユリアンナはもう11歳だろう、成人だって近い。冒険に行くだなんて」
「だから、行きたいの!時間がないんだもの」
お父様の反対のお言葉を押しとどめ、私は必死に言い募る。
「お父様、16歳になるまでにリル様を振り向かせる事が出来なければ、リル様のことは諦めなさいって」
「それは確かに言ったが」
「誕生日プレゼントだって全敗なんだもの、このままだと絶対に振り向いてなんて貰えないと思うの。私、私、諦めたくない!」
勢いこんで言ってしまったせいかちょっとお父様が仰け反ったけど、気にしない。何としても熱意を分かって貰わければ。
「お願い、お父様。リル様は私にとってお父様とお母様の次に大事な人なの!」
「そ、そんなにか」
「そうよ!だってお母様をあんなに元気にしてくれるのはリル様だけよ?私、リル様のお役に立ちたいの……!」
「ユリアンナ……なんていい子なんだ!でも君がそんなに無理することないんだよ?リルフィードだっていつかはちゃんと分かってくれるさ」
くっ……いい子いい子じゃなくて!頭ナデナデでごまかされたりしないんだから!
「いつかって、いつ?毎年毎年お父様はそう言うけど、酷くなる一方なんだもの」
うっ、と言葉を詰まらせるお父様。やっぱりお父様だって、そう思ってるんじゃない。
「今年はね、血税をプレゼントにつぎ込むなんて気が知れないって怒られちゃったの。そうよね、リル様は自分で錬金術を極めるために努力して、自分でお薬とかを作って自らお金を得ていらっしゃるんですもの。私、自分が恥ずかしい」
「いや、ユリアンナ、あれはリルフィードが特殊なんであって」
「私、リル様の一番傍でリル様のお役に立ちたいの。リル様の前で、堂々と私だって頑張ってるって言いたいの。自分の力で、リル様に素敵なプレゼントを贈りたいの」
「いや、しかしだね」
「……あなた、許してあげてはいかが?」
「!!」
思いもかけない声に、私もお父様も一瞬固まってしまった。
振り返ると、そこにはメイド長ジョアンナの肩を借りて儚げに佇む、お母様の姿があった。
「お母様!」
「だ、大丈夫かい?早くベッドへ」
「旦那様とお嬢様が、奥様に心配をおかけになるからです」
お母様を気遣うお父様にジョアンナがちょっと顰めっ面で答えた。きっとお母様に随分心配をかけてしまったんだわ。ごめんなさい、お母様。
「すまないね、心配をかけてしまって。さあ私が運ぼう」
「心配くらいさせてちょうだい、大事な娘なんですもの」
お父様に抱き抱えられながらも、お母様はそう言って優しく微笑んでくれた。
「ユリアンナ、精一杯やったって自分に胸を張れるくらい、しっかり頑張って。諦めるのは、それからでも遅くはないわ」