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大好きなお母様

結果的にそのプレゼントはこれまでで一番リル様を怒らせてしまった。


「領民からの血税をプレゼントにはたくなんて気が知れない」と、かつてない冷たい顔で深ぁいため息をつかれ、私はもう、リル様の前にいられなくってダッシュで自室に帰って泣いた。


そんな事言われたら、もうお金で買ったものなんて渡せるわけがない。

だって確かに私、色々頑張って『労働の対価』としてお父様からお金を貰ったわ。でもそのお金は結局、どこまでいっても領民からの血税であることに変わりはないんだもの。


お父様からいただくお金で買ったものなんか、全部全部、リル様を怒らせてしまうものでしかない。


お部屋で散々に泣いて泣いて翌日になって漸く涙が枯れた私は、泣きすぎて痛む頭を抑えつつ、お母様のお部屋に向かった。だって、昨日はリル様が来たんだもの、きっと栄養剤を持って来てくれたに違いない。どんなに辛くても、お母様が元気な貴重なタイミングを逃すわけにはいかない。



「まあ、ユリアンナ、待っていたわ」



体調が悪いと入れて貰えないお母様の部屋にもやっぱり今日はすんなり入れて、改めてリル様の凄さを感じる。私と同じ年なのに、リル様にはお母様を元気にする力があるんだから、本当に凄いと思うの。



「まあまあ、その顔じゃ今年のプレゼントは不発だったのね、可哀想に」



そう言いながら両手を広げてくれるお母様。かなり凹んでたって、お母様の胸に顔を埋めて泣いていると、なんだか楽なるから不思議。あったかくって優しくって、お花の匂いがして、トク、トク、って生きてる音がするの、凄く好き。


リル様は大好きなお母様とのこの大事な時間を作り出してくれる、私にとっては本当に神様みたいで、ヒーローみたいで、本当にかっこいい人なんだ。そう言うとリル様はいつだってなんだか困った顔して、ブツブツ何かを呟いて顔を背けてしまうけど、お母様をこんなに元気にできるお薬なんて有名なお医者さんだってくれなかったんだもん。


ああ、やっぱり、リル様のお役に立てるものを、プレゼントしたいなあ……。

そう言うと、お母様はお花が咲いちゃいそうにふんわりと笑った。



「ふふ、ユリアンナはすごくリルの事が好きなのね。お母様も、お父様に随分頑張ってアピールしたわ」



思い出すみたいにクスクスと笑いながら、お母様は私を励ましてくれる。



「私達貴族は、一度結婚してしまったら一生添い遂げる事になるのですもの。リルの事が本当に好きなら、諦めてはいけませんよ。あの子も素直じゃないけれど、根っこの部分はとても優しい子ですもの」



お母様が慈しむように優しく笑って、またギュッと抱きしめてくれる。



うん……うん、お母様。


私、絶対に諦めないから!

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