可愛いお供ができました
「あー、そりゃしょうがねえぞー?迷いの魔法をかけてあるからなー」
焦る私達を尻目に、可愛いドラゴンちゃんはとっても呑気にそんな事をのたまった。
「迷いの魔法?どおりで!」
「仕方ねえから魔法を解除してやってもいいぞ」
「ありがとう、でも既に迷ってるから帰り道が分からないかも」
ドラゴンちゃんもうう〜ん、と唸っているけど私達だって困っている。厄介な魔法をかけてくれたもんだ。
「お嬢、大まかな方角なら分かる。」
「本当!?」
「ああ、ネパズールの森は街の西南に位置するからな、太陽の位置から大まかにはわかる。まあジャングルだから時々木に登らねえと……」
「!!!?」
ユシアの話を真剣に聞いていただけなのに、周りの景色がグラッと揺れたと思うと突如様変わりして、驚いた私は思わずユシアに駆け寄った。互いの背を合わせて油断なく周囲を見回す。
どうして、何が起こったの。
目の前にはさっきまでとは明らかに違う気色。だだっ広い草原とまっすぐにのびる土の道、そして背後には広大な森がうっそうと繁っていた。
「これでいいかー?」
訳も解らず周囲を見回すばかりだった私とユシアに、可愛い声が語りかける。声の主はもちろん小首を傾げたドラゴンちゃんで、私はただ呆気に取られるばかり。
「迷いの魔法かけたのオレだしなー、サービスだ」
「な、何? 私達どうなったの?」
「森の外にワープしたんだぞ、お前達が目指す方角にある道っていやぁズーリア街道だからな!気が利くだろー」
ズーリア街道。
そう言われて冷静に見てみれば、それは確かに私達が朝通ってきたばかりの道で。こんなにちっこくって愛らしいドラゴンちゃんは、なんとワープという高等魔法まで使える凄い個体だったのだ。
ドラゴンちゃんのおかげで驚くほど迅速に依頼をこなした私達は、必要な本数だけをギルドに納め、残りを大事に大事に持ってお屋敷に戻った。
「で、どうしてドラゴンちゃんは帰らないの?」
街に行きたいと言っていたドラゴンちゃん……シルフィドラゴンという小さいながらも風属性の中でもかなり上位のドラゴンらしい彼は、なんと姿も消せるらしく街についてからは気配だけになるという荒技を見せつけつつも、なぜか数日経っても私と行動を共にしていた。
「森よりも面白いからな!もうちょっと遊んでいく」
「そっか、私は嬉しいからいいけど」
だって可愛いもんね!
「じゃあ明日、お出かけする予定だから一緒に行こうか」
明日はリル様の誕生日。この可愛いドラゴンちゃんが育てた風華草なら、錬金術の素材としてはきっと満点を貰えると思うんだよね。
ああ、早くリル様の喜ぶ顔が見たい。
こんなに素敵なプレゼントを用意できたのもこの可愛いドラゴンちゃんのおかげだと思うと、少しくらいのわがままくらい聞いてあげたい。
明日はリル様のお屋敷にお伺いする以外は結構自由な時間があるから、街に繰り出してこの子に美味しい物とか買ってあげよう。
私はとても満ち足りた気持ちで眠りについた。




