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眼を閉じ、神経を集中する。
すると二人からゆらり陽炎のように、気が立ち上る。
ロウソクが一気に燃え上がった。
赤き炎が柱となり、部屋に光が満ちる。
そしてゆっくりと開いた二人の眼は、赤く染まっていた。
二人の放つ気と、五つの炎の光は部屋の闇を飲み込み、そして突如消えた。
「…ふぅ」
「う~。今夜はゆっくり眠れそうだよ」
二人はぐったりとした。
ロウソクはすでに影も形も無い。
同じように、黒き手も無くなっていた。
「…おとなしくしていれば、壊すだけで済んだのに」
物を移動する時は真昼間で、大勢の人を使った。
そして普通に壊せば、その場に溜まった気も壊せるはず―だった。
余計なことをしなければ。
アキが言い出したあの儀式。
実はその場に溜まる気を、練り固めるものだった。
このプレハブ小屋のような場所で、人が何度も行き来することにより、場に溜まっている気を練り回す。
そして強くしてしまうのだ。
「ったく…。どこで仕入れた知識なんだか」
「…言っておくけど、ボクじゃないからね」
セツカは最初に言っておいた。




