第4話 -初めての人里にて-
予想外に多くの皆様に見ていただけているようで有り難い限りです。
話の展開がゆっくりでやきもきされる方もいらっしゃるかもしれませんが、気長にお付き合い下さいm(._.)m
<第4話 -初めての人里にて->
そのままの速度で駆けること一時間。
道の先に柵に囲まれた村が見えてきた。
「おっと、どうやら目的地のようだなあ」
「そのようですね。索敵を開始しますか?」
「とりあえずよかろうよ。こんな小さな村だ」
速度を緩めると、普通に歩き出す二人。
村の周囲は簡単ではあるが柵で囲まれている。しかもその周囲は簡単に柵に取り付けないように掘り返されていた。
そして、歩哨の如く入り口に立つ槍を構えた男二人。
「なかなか考えておるようじゃなあ」
「獣避けでしょうか。こんな小さな村で二人も歩哨に割く余裕があるとは思えないのですが」
道が途切れ、ただの草地になる。
「そこの二人、止まれ!」
歩哨の男たちが二人に止まるようにと呼びかけてきた。
警戒されているのだろうか。
「儂らは怪しい者ではないぞ」
「良いから止まれ。そこを動くな!」
やれやれと肩をすくめる村正。
すると、歩哨の片割れが二人に向かって草地をゆっくりと歩いて近づいてきて、数m先で足を止めた。
「見ない顔だな。しかも若い」
「旅人でのう。道すがらあった商人に北の山には魔物が良く出ると聞いてな」
「なんだ、お前は若いのに【魔物狩り】なのか?」
「そのようなもんじゃよ」
そう言うと、懐から昨晩狼の様な魔物を倒して手に入れた黒い石を見せる村正。
どうやら当たりだったようで、得心がいったという様に頷く村の男。
「それにしては若いな。ハンター証は持っているのか?」
「ハンター証? そんなもんは・・・」
「昨日、六本脚の黒馬と戦った際に紛失してしまいまして。ねえ、ご主人様?」
「お、おう?」
深夜が会話に割り込んできた。
ご主人様などと呼ばれた村正は怪訝そうな顔で応じる。
「六本脚の黒い馬!?」
「ええ。なかなかの強敵でして」
「当たり前だ。ヤツはこの辺りでは五指に入る強力な魔物だぞ。お前さんらはそれを狩ったってえのかよ!?」
驚きを露わにする村の男。
「はい。ご主人様が倒されました。証拠に石も」
なるほど、そういうことかと気付いた村正が、懐から黒馬を倒して手に入れた石を取り出して見せる。
「でけえ・・・。コイツは本物だ・・・」
「はい。ご主人様はとてもお強いのですよ」
「そんなこたあねえよ」
「いやいや、よく分かった。アレを一人で倒せる様な【魔物狩り】だったのかい」
尊敬の眼差しで村正を見る男。
この世界は強者が認められる世界であるようだ。
まさにファンタジー。
「村に用事があるのか?」
「薬草採取を生業にしていると聞いたんじゃが?」
「ああ、その通りだ。薬草が欲しいのか?」
「そういうことじゃ。金ではなくこの石と交換でよいか?」
「魔石とか? 構わんが大量に薬草が必要なんだな」
「まあのう」
曖昧に頷く村正。
当然のことだ、何も知らないし何も分かっていないのだから。
ただ調子よく話を合わせているだけで。
「着いてきてくれ。なんせこの辺りには獣避けにあちこちに罠を仕掛けてあるからな」
「なるほど、それで儂らを止めてくれたのか。礼を言わねばならんなあ」
「いやいや、初めて来る者はそうしてやらんと罠に引っかかったりするからな」
確かによく見ればそこかしこに簡単な罠が仕掛けられている。
もちろん村正も深夜も気付いてはいたのだが。
二人は大人しく村の男のあとを着いていった。
「どうした?」
「いや、【魔物狩り】なんだと。薬草を魔石と交換して欲しいそうだ」
「【魔物狩り】だと? どう見ても子どもにしか見えんが」
訝しげな顔で二人を見るもう一人の男。
「見かけで判断しちゃいけねえよ。あの黒角馬を一人で仕留めたそうだぞ」
「本当か!? まさかそんな」
「ああ。兄さん、アレを見してやってくれねえか?」
そう言われた村正は、再度懐から大きな魔石を取り出して見せる。
「本当か。いや、そんな巨大な魔石はあれクラスの魔物じゃねえと取れんか・・・」
「だろう。その時にハンター証を無くしちまったらしくてな。街へ向かう旅の途中なんだとさ」
「なんでそんな道中にうちの村なんかに?」
「なに、山には魔物が良く出ると聞いてな。行きがけの駄賃じゃよ」
なおも疑問を口にしようとする男を遮って村正が口を開く。
「怪しむのも分かるが、別にお主らを害するつもりはない。そこは信用してくれ」
「ご主人様は理由もなく人に危害を加える様な御方ではありませんよ」
村正が軽く頭を下げると、それに続いて深夜も深々と頭を下げる。
「い、いや、疑ってるわけじゃねえんだ。それに、黒角馬を倒せる様な【魔物狩り】にオレたちが敵うわけはねえからな、警戒するだけ無駄だし」
さすがに少しばつが悪いのか、慌てて両手を振って言い訳する村の男たち。
「こっちへ来てくれ。村長に合わせよう」
「忝い」
「アンタ、見た目は若いのに爺さんみたいな喋り方をするんだな」
「癖みたいなもんでなあ。気にせんでくれ」
軽口を叩きながら村の男に先導されて村長宅へと歩いて行く村正と深夜。
少し歩くと、村のほぼ中央にある大きめの家へと案内される。
他の家よりも少しは立派という程度で、特別豪華な作りというわけでもない。
「村長、お客人をお連れしました」
「おお、入りなさい」
戸をくぐると、板張りの部屋が目の前に広がる。
そこに座り込んで大量の薬草を広げてなにやら作業している白髪の男。
どうやら彼がこの村の長であるようだ。
「何でも【魔物狩り】だそうで。山の魔物を狩りに来たついでに薬草を分けて欲しいというものですから」
「ほう、それはそれは。わざわざこんなところまでご苦労なことですなあ」
人の良さそうな笑顔で二人を見る村長。
「いやいや、旅は好きなほうでしてな。苦にもなりませんわい」
「さようですか。ああ、私はこの村の長でエーンと申します」
「エーンさんか。儂は村正、こっちは深夜じゃ」
「村正さんに深夜さんですな。妹さんか何かで?」
ちらりと深夜を見るエーン。
「いえ、私はご主人様の身の回りのお世話をさせて頂いております」
「おや、奴隷ですか。お客人は見た目よりも遙かに裕福なのですなあ。そのように若くて利発そうな娘さんを奴隷として使うなど」
一人で納得して頷いている村長。
その言葉から、この世界では奴隷という存在がある程度一般的なのだと分かる。
村正はとがめる様に深夜を見るが、深夜は視線だけで「後ほど」と意思を伝える。
「ご主人様は非常にお強い【魔物狩り】なので」
「良い主人に恵まれれば奴隷も幸せなのでしょうがねえ・・・。ところで、薬草をご所望とか?」
「そうじゃった。血止めに効く様なものと毒消しになりそうなものがあればとな」
「なるほど。無いわけではありませんが、今は雪解けが終わったばかりであまり量がありませんでなあ」
値をつり上げるつもりか、そんな風に言って村正を見る村長。
「それは仕方あるまいよ。この魔石一つ分と交換できるだけで良い」
「なるほど・・・」
ころりと狼の魔石を懐から取り出して床に置く村正。
失礼と断りを入れて、魔石を見聞するエーン。
「分かりました。準備させておきましょう」
「済まんな」
「いえいえ。ところで【魔物狩り】だと仰いましたな?」
「そうじゃが、どうかしたか?」
「いえ、そうであれば一つお願いしたいことがございまして・・・」
そう言ってエーンは語り出した。
要するに、冬が終わり山へ入れる時期になったのだが、当然のように山の魔物も活発に動き出す時期であるからして、薬草を採りに行くにも危険が大きい。だから、可能な限りでいいので山の魔物を退治して欲しいというのだ。
「そこらにいるような下級の魔物であれば我ら村の者でもどうにかなるのですが、この山には大きな赤い熊がおりましてな」
エーンが言うには体長3mを越す赤い体毛をした凶暴な熊が山には住んでいるそうで、さすがにそいつには村の男では太刀打ちできない。もし見かけてしまったら何を置いても逃げるようにしているのが現状だそうだ。
「なるほどなあ。そんな熊が彷徨いておってはおちおち薬草摘みも出来ぬか」
「そうなんですよ。お願いできませぬか?」
「構わんよ。願ったり叶ったりじゃ」
「おお、それはありがたい!」
ほっとしたように表情を緩めるエーン。
「ただし、儂らはこの山の地理に明るくない。案内の者を一人付けて欲しいんじゃが」
「それもそうですな。この村一番の力自慢に案内させましょう。薬草採りの腕もたいしたものでございますよ」
「そうしてくれると助かるなあ」
「しかし、あれは今、山に入っております。もうすでに太陽が中天にさしかかっておりますれば、熊退治は明日ということでいかがかですかな?」
「ああ、一向に構わんよ。急ぐ旅ではないのでなあ」
「そうでしたか。では、今日は村でゆっくりなされるとよろしいでしょう」
「忝い」
そう言って村正は軽く頭を下げたのだった。
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すみません、調子に乗りました(゜Д゜)




