第2話 -現状を把握してみるとするか-
予約投稿は成功しているかな?
<第2話 -現状を把握してみるとするか->
火の始末をして再度歩き出す二人。
しばらく歩くと、舗装はされていないが明らかに「道」に行き当たった。
「どうやらこのあたりは人通りがあるかもしれんのう」
「そうですね。道なりに参りますか?」
「その方が賢明じゃろうな」
東へと道を歩き出す二人。
北へ向かっていたのではあるが、とりあえず道なりに歩いてみてから考えようという結論に達したようだ。
「村正様、前方より人が」
「おお、そうか。それは僥倖」
前方から来たのは、馬に乗った中年の男であった。
腰には剣を下げ、皮の胸当てなどで簡単に武装している。間違いなく戦闘を想定しての格好だろう。
どこからどうみても、近現代の武装レベルではない。
良くて中世といったところだろう。中世が舞台のファンタジー世界という予想を裏付ける見た目であった。
その後方からは同じような武装をした男と馬車、そして荷車を引く馬がやってきた。恐らく商人なのであろう。荷車の品物をどこかへ売りに行くのか、それとも買ってきたのか。
「もし、そこのお方」
「何だ?」
警戒も露わに二人を見る馬上の男。
到底旅には向かない格好の若い男と少女。
危険かどうかは別にして、どうみても怪しい。
「ここから一番近い人里はどこですかのう」
【古き神】の言っていた通り、どうやら言葉は通じるようだ。
コミュニケーションが大事なのはどこの世界でも同じである。
「この道をこのまま行けばアールファの街があるが」
「どのくらいの規模ですかのう」
「別に大きくもないが小さくもない、普通の街だぞ」
この世界での標準が分からないため、ひとまず話半分に聞いておくことにした村正。
「北の山へ向かうと何がありますかいのう」
「北には薬草取りを生業にする小さな村があるきりだな。山は危険な魔物がうようよいるそうだ。腕に覚えが無ければ近づかぬほうが身のためだぞ」
「なるほど。ありがとうございまする」
頭を下げ、馬車のために道の端による村正と深夜。
「いやいや。道中無事であるとよいな」
「そうですなあ。そちら様もお気を付けて」
一団を見送ると、また東へと歩き出す。
「村正様?」
「魔物だとよう、深夜。この世界は面白そうじゃなあ」
剣呑な笑みを浮かべる村正。
また病気が再発した、そう深夜は心中でため息をついていた。
「北へ向かわれるので?」
「おうさ。儂も大概様々なものを見たが魔物とはなあ。さっきの角の生えた六本脚の馬のような奴が他にもおるわけじゃろう?」
「左様ですね」
「楽しいのう! 心が躍るわい!」
心底楽しそうに見える笑い声をあげる村正。
「村正様の悪い癖でございます」
「何がじゃ?」
「危険を楽しまれまする」
「危機に際して心が躍るは男の性じゃろうよ」
「否定は致しませんが、従者の身にもなって下さいませ」
「深夜が守ってくれるんじゃろう?」
にかっと笑う村正に何も言えなくなる深夜。
「そのように言われるのは卑怯にございまする」
「かっかっか。そんなことは百も承知であろうが。長い付き合いじゃ」
「はあ・・・。承知致しました」
道なりに歩いて行くと、北へ向かう分かれ道が見えてきた。
二人は北への道に進路を変える。
「ふうむ。歩いてどれくらいかかるのか聞いておくべきじゃったのう」
「左様でございますね。徒歩では限界がありましょう」
確かに。
現代社会と違ってひたすら歩くしかないこの状況では果たしてどれだけの時間がかかるのか見当もつかない。
「車など無かろうしなあ。となると馬か」
「六本脚の黒馬を捕まえておくべきでしたか?」
先ほどの一団のように、馬がいればかなり変わってくるだろう。
無理して走らせずとも、馬であれば一日で50kmは軽い。
「まあ良いわ。今度見つけたらとっ捕まえてみるとしようかのう。とは言え、こんなのんびり歩いているのも業腹じゃ。ちょいと走ってみるか」
「承知致しました」
言うが早いか、だっと駆け出す村正。それを追うように深夜が走る。
「(どれ、若返ったこの身体の性能でも試してみるかのう)」
そう思った村正は、自らの全盛期を思い出すように速度を上げていく。
ついでとばかりに跳びはねながら。
その姿はさながら猿であった。
少なくとも現代人の標準的な運動能力では間違いなく不可能。
体操のオリンピック選手ですらこれほど身軽に跳びはねることは出来ないのではなかろうか。
走る速度も同様だ。
村正本人には分からないだろうが、速度にして約時速60km。幾ら瞬間的な速度だとはいっても異常な速度だ。
「この世界の若者はこれが標準的な身体能力なのかのう」
「さすがにそれはあり得ないかと存じますが」
「ふうむ。情報が足らんのう。もしくはサンプルが必要じゃな」
「検討致しましょう」
実のところ、さすがにそれほど優れた身体能力をこの世界の人間が持っているわけではない。そうであれば魔物如きをこれほど恐れを抱きながら生きていく必要など無いのだ。
村正は、この世界に飛ばされ肉体が再構成された際に様々なものが活性化したことが原因でトップクラスの身体能力を手に入れたに過ぎない。
「持久力は試してみないと分からぬしのう。一日中走り続けるのも嫌じゃし」
「一定時間動き続けて、乳酸値等を調べれば大凡のデータは判明するかと」
「なるほどな。いずれ試してみるとしよう」
結局、昼間の内には現状の目的地である山の麓の村には辿り着かなかったため、二人はやむを得ず野宿することになった。
「見張りはお任せ下さいませ」
大樹の下で焚き火に当たりながら夜を過ごす二人。
周囲には野生の獣の気配があるが、今のところ襲いかかってくる様子はない。
「任せる。まあ、何かあれば儂も身体が勝手に起きるじゃろうて」
「そうならねばよいのですが」
「異世界に来て最初の夜に何もないなど詰まらんじゃろう。必ず何かあるはずじゃ」
「お約束というやつですか」
「然り」
確かに、このまま何事もなく夜が明けるなど展開としてはいただけない。
だからといってトラブルを期待するのもどうかと思うのだが。
「では頼むぞ、深夜」
「お任せ下さい」
深夜に見張りを任せ、村正はごろりとエアマットに横になる。どこから出したかと言えば、当然深夜の収納空間からであるが。
あっという間に静かな寝息を立て始める村正。
それを見つめる深夜の目は心なしか優しさを帯びているようだった。
お読みいただきありがとうございます。
良ければ評価や下部の勝手にランキングのリンクなどポチッとしていただければ幸いですm(._.)m




