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探索者は異世界でも宝を求む  作者: 葉月風都
第6章 海魔の迷宮で
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第4話 -歓迎、海の幸-

〈第4話 -歓迎、海の幸-〉





「美味い!」


 村正と深夜はスキュラと爺に案内されて【海魔の迷宮】の最下層、魔王の間へと移動していた。

 目の前のテーブルには豊富な海の幸が溢れんばかりに並べられ、村正の舌を楽しませていた。


「しかし、生ものだけだと飽きるのう」

「お任せを」


 新鮮な魚や貝、甲殻類はとても美味であるが、やはり刺身だけでは飽きる。

 深夜が村正の意を汲んで、キッチン一式を収納から召喚すると鍋を振るい始める。

 その間に村正が炭火をおこし、手早く焼き物を始めた。


「一体何を……?」

「まあ見ておれ、魔王様よ。人の生み出した知恵と技を見せてやろうぞ」


 とても楽しそうに料理し始める村正。

 焼き網の上にのせられた素材の焼き加減を確かめながら醤油で味付け。

 暴力的なまでの醤油の焦げる匂いが辺りに広がる。


「こ、これは……」

「よだれが……」


 正座させられたままの四天王がもぞもぞと身体を動かす。


「まだ正座!」


 スキュラに注意されてしゅんとなる海魔四天王。

 ちなみにウニ、イカ、カメ、クジラである。

 どいつも美味そうだな……と村正が思っていたのは秘密だ。


「村正様、エビ天あがりました」


 海老と白身魚の天麩羅だ。

 海老の頭を味噌汁にするのも忘れない。


「おうおう、やはりコレじゃなあ」


 エビ天を天つゆでさくりといただく村正。

 懐かしい故郷の味である。

 味噌汁も海老頭から出たダシが良く効いていて美味い。


「こっちも焼けたぞい」


 網の上の焼きがけの牡蠣と帆立が醤油の匂いをさせている。

 綺麗に開いた魚も良く焼けたようだ。


「本当は干してからだといいんじゃがな。まあ、贅沢は言うまいよ」


 半生の牡蠣を口に放り込む村正。

 ぷりっとした身から牡蠣のエキスが迸る。


「これは日本酒と合わせるべきじゃのう」

「これを」


 収納に入っていた純米酒をさっと取り出してガラス器に注ぐ深夜。

 気の利く従者である。


「旨い。旨いのう」


 そんな村正を見てゴクリと喉を鳴らすスキュラ。


「ほれ、食うてみい。病みつきになるぞい」

「ありがとう。いただくわ」


 牡蠣を殻ごと受け取ると、ちゅるんと身を口にするスキュラ。


「美味しい……。これは本当にあの貝なのでしょうか!?」

「美味いじゃろう。生もいいがコレもいいんじゃ」


 帆立も一口で食べて目を丸くするスキュラ。


「天麩羅も塩でいってみよ」


 ぱらぱらと塩を振った天麩羅を食べてまた感激に身体を震わせるスキュラ。

 その度に申し訳程度の布に覆われた二つの巨大な膨らみがぷるぷると、いやぶるんぶるんと揺れる。


「ブリジット以上じゃな……」


 思わず目を奪われる村正。

 下半身が蛸で無ければ……と心の中ではがっかりであった。


「こんな美味しい食べ方があるなんて……。幸せ……」


 恍惚とした表情のスキュラ。

 やはり食は世界を変えるのだろう。


「美味いじゃろう。ワシに協力すれば、もっと美味いものも食わせてやる……と言ったらどうじゃ?」

「本当ですか!?」

「姫、はしたのうございますぞ!」


 そんなことを言いながらイカの丸焼きにかぶりつく爺。

 というか、骨だけの身体の何処に入っていくのだろうか……。


「爺に言われたくないわ!」

「かっかっか! まあまあ、良いではないか。ワシは別にお主を倒しに来た訳ではないんじゃよ、【海魔の魔王】よ」

「?」


 きょとんとして首を傾げるスキュラ。


「人族がこの迷宮に攻め込んできて、私を倒しに来た訳ではないと?」

「そうじゃ。ワシは、お主と取引をしに来たんじゃよ」


 村正はにかりと笑って見せた。


「まあよい。今はとりあえず飯じゃ。お主らもそろそろ我慢できんじゃろ?」


 ちらりと海魔四天王をみやる村正。

 四天王はコクコクと首を縦に振ることしか出来なかった。

 ウニに首は無いが。






「……というわけじゃ」

「そういうことなら協力はやぶさかではありませんが」


 宴会を終えた後、村正はまず自分が【獣魔の魔王】カヨウの極秘の協力者であることをスキュラに告げる。


「そう……。もう協力者を手に入れた魔王がいたのですね」

「そういうことじゃ。そして、この【海魔の迷宮】には海水から作る「塩」を求めてやってきた」

「塩?」


 先ほど天麩羅に振りかけて食べた白い粉であると説明する村正。


「塩のあるなしは恐ろしく重要でな。ここなら海水は無尽蔵じゃろう?」

「それはその通りですが」

「ついでに新鮮な魚介類を調達してくれれば言うことは無いわい。そうやってワシに協力してくれる限り、お主らの命は狙わんよ?」


 四天王が一瞬魔力を放出しかけるが、深夜に人睨みされて黙ってしまう。

 実力差は歴然であるから。


「でも、三柱戦はどうするのでしょう。改めて戦争を?」

「いんや。ワシとしてはお主が降伏してくれればそれでよい。何も皆殺しにする必要は無いんじゃろう?」

「確かにその通りですな。降伏して相手の魔王の配下に入ればそれでよいはずですなあ」


 爺があごを撫でながら納得したように頷く。


「まあ、お主らがどうしても殺し合いをしたいというなら仕方ないからの。その時は儂も深夜も全力でお主らを叩き潰すとしよう。何ならそこの四天王の一人くらいは今、血祭りに上げてやろうか?」

「……」


 押し黙るスキュラ。


 村正も深夜も全く実力の底が見えない。

 なにせ超級魔族を、赤子の手をひねるようにあしらう幼女など見たことがない。

 少なくとも魔王に匹敵するかそれ以上の実力を持っているのは明白だ。


 スキュラも仮にも魔王と呼ばれる存在だ。

 戦いも不得手ではない。

 だが、別に得手な訳でもないのだ。

 平和裏に三柱戦を切り抜けられるならそれに越したことはない。


「……分かりました。私と【海魔の迷宮】は、お二人と【獣魔の魔王】カヨウに従いましょう」

「スキュラ様!?」


 四天王が驚きの声を上げる。


「良いのです。其方らもお二人の力は感じたはず。無為に命を散らす必要はありません。三柱戦で所属側が勝利することは、我らにも益をもたらすでしょう」

「それは保証しよう。どうせ儂らが勝つ。勝ち馬に乗るのが得策じゃぞ?」


 さもそれが当然であるように語る村正に驚きを隠せないスキュラ。

 他の戦うことが生きがいのような魔王はどうするのか。


「安心せい。深夜は最強じゃ」

「有り難き幸せ」


 嬉しそうな顔で頭を下げる深夜。


「では、そういうことで話はまとまったと。では、皆で宴会といこうではないか!」


 大量の海の幸を貪り尽くす一同であったそうな。


お読みいただきありがとうございます。


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