プロローグ その3 -そして異世界へ-
プロローグがその2までと活動報告に書いたような気がしますが、アレは嘘でした。
3があったよ!?
ごめんなさい。
<プロローグ その3 -そして異世界へ->
「さて、此処はどこだ?」
彼こと千鳥村正は、赤黒く染まる空の下、果ての見えない一本道を歩き続けていた。
時折空を走る稲妻があたりを照らすのだが、ただただ暗闇があるばかり。
見えるのは目の前に続く一本道のみ。
「俗に言うあの世って奴かい、こいつぁ」
「恐らく違います、村正様」
誰にともなく呟いた言葉に聞き慣れた声で返事が返ってきたことに驚く村正。
彼の後ろに控えていたのはもちろん深夜。
「なんでぇ。お前も化けて出たか、深夜」
「違います。言ったではありませんか。共に参ると」
「……比喩表現って奴じゃあなかったのかい」
「不思議なこともあるものです」
「まぁいいか。旅は道連れってなあ」
二人は何も語らず、黙々と一本道を歩いて行く。
全く変わらない景色の中をひたすら止まらず歩き続ける。
「いくら何でも暇じゃのう、これは」
「閻魔大王の嫌がらせでしょうか」
「会ったら文句の一つでも言ってやるとするかい」
軽口を叩く二人。
そんなときだった。
「ほ、コイツはなかなか」
「凝った意匠ではありますね」
二人の前に巨大な門が現れた。
「地獄の門って奴かな、こいつは」
「イメージとしてはその方向性で合っているかと存じますが」
黒く、おどろおどろしい紋様が彫り込まれたその扉がゆっくりと開いていく。
「歓迎してくれるということかのう」
「どうでしょうか。地獄の門なのに三つ首の犬がいないのは片手落ちではないかと思いますが」
「そこかい、深夜」
恐れる様子もなく開いた門をくぐり抜ける二人。
その先にも暗闇が広がっているのみ。
「なんじゃ、何もないではないか」
「演出という奴ではありませんか、村正様」
その時、突然門が大きな音を立てて閉まった。
「閉じ込められたかのう?」
「現象としてはそれで合っているかと愚考致します」
「相変わらず堅い物言いじゃのう」
その時だった。
『ようこそ! 歓迎しよう、ご老人!』
突然響き渡った若い男の声。
だが、どこにも姿は見えない。
「姿ぐらいみせちゃくれんかのう?」
『そうもいかない事情があってね。此処に人が来るのは何千年振りかな』
楽しそうに声を弾ませる声の主。
「お前さんは閻魔大王じゃないのかい」
『そんな存在じゃないさ。死者を裁くなんてチンケな仕事はしたくないね』
大王様を捕まえてえらい言い様である。
「じゃあお前さんは一体何者だい。儂ゃあお前さんを何と呼べば良い?」
『ははは! 面白い、面白すぎる! 呼び名か。何が良いかな。そんなことを聞かれるのは久しぶりすぎて困るよ。神とでも名乗ればいいかい?』
「うーん、いまいち儂の抱いてる神のイメージにはそぐわんのう」
平然と言い放つ村正に、さらに笑う声の主。
『いいね、実にいい! たいした度胸だ!』
「度胸も何も、死んじまってるのに神様なんぞにビビってどうするんじゃ。それよりも死んでなおこんな不思議に遭遇できるなんぞ死人冥利に尽きるねえ」
「村正様、それもどうかと」
深夜の声を聞いた声の主が何かに気付いたようにまた笑う。
『なんと、これまた久しぶりだ。こんな骨董品を再び目にするとは!』
「何じゃ、お主、深夜のことを知っとるのか?」
『知っているも何も、それはボクと戦っていた奴が作り出したモノだからね』
「何じゃと?」
「まさか……。貴方は【古き神】なのですか?」
震える声で言う深夜。
『ご名答だよ、【戦闘人形】ちゃん。君が何号かは知らないけど、破壊されずに残っているモノがあったなんて驚きだなあ。しかも人間を主として活動しているなんて』
からかうような気配が言葉の端々から滲み出ている。
「私に改めて動く意味を与えてくれた方にお仕えするのは当然でございます」
『いいね。ますますいいよ。さてご老人。君の望みはなんだい?』
「望みじゃと?」
訝しげに首をひねる村正。
『そうさ! こんなところに来るくらいだ。君は何かに取り憑かれているはずだ。天国にも地獄にも行けず、かといって現世を彷徨うわけでもない。それだけ業の深い妄執に取り憑かれているはずなんだよ』
楽しげに笑う声の主。
「おうおう、そうじゃのう。取り憑かれておるわ。この深夜のごとき【遺物】にのう」
『なるほど。ボクや腹立たしいあの【大いなるもの】が生み出し、破壊し破壊されたはずのモノに憑かれていたのかい』
「ああそうじゃ。生き返らせてくれるなら儂はもっと【遺物】が見たい。全てを手に入れたいんじゃ」
熱っぽく語る村正。
『うーん、残念だけど生き返らせることはできないなあ』
「なんじゃ、そうなのか。つまらんのう」
『つまらんとか言わないでくれるかい。まだ最後まで話してないんだからさ。さすがに元の世界そのものの機能には割り込めない。君は元の世界にいるには相応しくない存在だと見なされたんだよ。だから輪廻の輪にも入らずこんなところに漂っている』
「失敬な話じゃのう」
『それだけ君が異質だったんだよ。【遺物】に取り憑かれすぎて人として道を踏み外してしまったんだ。化け物の仲間入りさ。ようこそ、こっち側の世界へ』
「それは別に構わんがのう。化け物呼ばわりされるくらいがなんじゃい」
心底どうでも良いように言い放つ村正。
声の主は少し感心したように言う。
『やっぱり面白いな、ご老人。それでだ。元の世界には無理だけど、別の世界になら行かせてあげよう』
「なんじゃと?」
『言葉通りだよ。異世界って奴さ』
「そこには【遺物】があるのか?」
『元の世界にあった【遺物】とは、厳密にいうと違うけど存在するよ。その世界独自の【遺物】といえるモノがね』
「うむ、ではそこへ連れて行ってくれ」
「そう仰ると思いました、村正様」
深夜が呆れたような顔で村正を見る。
いつものことですねという気持ちを言外に。
「儂はまだまだ宝探しがしたいんじゃ。見たこともないような秘宝が儂を待っとるならば行かんわけがないじゃろうに」
『さすがだよ。そうじゃなくっちゃ。でも、一つだけ注意があるんだ』
「何じゃ?」
『それは、行ってみるまでそこがどんな世界か分からないってことさ』
結構深刻な問題であった。
どうにもならない、いわゆる積んでる可能性もあるわけだ。
「なんじゃ、そんなことか」
『そんなことって……。豪毅だね、ご老人』
「どうせ死んだ身よ。儂は宝探しができればそれでいいんじゃ。そこで野垂れ死のうと構うものかよ」
『うん、ボクの想像をはみ出すなんてすごいよ、ご老人。出血大サービスだ。そこの人形を連れて行ってもいいよ?』
「言われずとも私はそうさせて頂きます」
深夜はいつも通り澄ました顔だ。
それを見て苦笑する村正。
「そいつは願ったり叶ったりだ。安心して宝探しができるのう」
「お任せ下さい。村正様は私が御守り致しますれば」
『美しい主従関係だね。それに免じてもう少しサービスしてあげるよ。どんな世界に行ったとしても会話が出来る力だけは備えてあげる。それと、そんなヨボヨボじゃあ宝探しどころじゃないだろうから、若い肉体もね』
「おうおう、それはありがたいのう。動かぬ身体など邪魔なだけじゃからな」
心底嬉しそうにいう村正。
喜ぶ村正を見て深夜も笑顔を浮かべている。
「じゃあ、早速やってくれ」
『もういいのかい? 他に聞きたいこととかはないのかな?』
「何、それは行った先で考える。色々分かってしまってはつまらぬよ」
『なかなか言うね。わかった、もう何も言わないさ。行きたまえ』
「恩に着る。【古き神】よ」
虹色に渦巻く何かが村正と深夜を飲み込んでいく。
渦は徐々に小さくなり、消えてしまった。
『さてさて、どこに跳んだかな。楽しめる世界だと良いんだけど。まあ、運は良さそうだからきっと大丈夫でしょう』
声の主、【古き神】はくくっと喉を鳴らして笑う。
『さあ、楽しませてもらおうかな。ここまで昇ってこれるかなあ、彼は』
静寂。
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