第1話 -海魔の迷宮へ-
第6章でございます。
需要があるかどうかは定かではありませんが。
<第1話 -海魔の迷宮へ->
空に煌々と光る太陽。
肌を焼くまぶしい光が辺り一帯を照らす。
白い砂浜と熱帯の木々。
青い海。
「南国じゃのう」
「実に南国でございますね」
目の前に広がる南国リゾートな風景に思わず呟いてしまう二人。
ここは南北に走る街道の南端の都市【】からさらに南に下ったところにある海岸であった。
どこからどう見ても海水浴場にしか見えないのだが、人影は無い。
それもそのはず、この一見何の変哲もない海水浴場は【海魔の迷宮】の一部なのだ。
「あの島が【海魔の迷宮】の入り口じゃな?」
「情報によればそうなります」
額に手をかざして少し離れた所に浮かぶ小島を眺める村正。
「すぐに向かわれますか?」
「そうじゃなあ。人気もないことだし、今のうちに侵入してしまうとしようかのう」
すでに各種補給物資は深夜の収納空間にがっちりしまってある。
一ヶ月以上はもつ計算だ。
「では、参りましょう」
船も無いのにどうするのかと思いきや、ふわりと二人が宙に浮く。
深夜の飛行能力が発動したのだ。
水面すれすれを飛翔する二人だったが、まるで波が立たない。
いわゆる「飛行」とは違う原理で推進しているのだ。
「さてさて、入り口はどこかのう」
島に上陸すると、即座に行動を開始する二人。
それほど大きい島ではないが、岩場というほど小さくもない。
おそらく入り口から溢れてきたのだろう蟹やフナムシのような魔物を殺しながら島をぐるりと巡る頃には、入口を発見することが出来ていた。
「途中までは水没しとらんのじゃったな」
「カヨウが言うにはそのはずですね」
それでも床には大小様々な水たまりが出来ていて、迷宮そのものが水の気配に満ちている。あまり心躍る場所ではないことは確かだ。
「アレじゃな、海沿いの洞窟を探検しとる気分じゃのう」
「海賊船が発見できるかも知れませんね」
「映画のようじゃな」
びしゃびしゃと足下を濡らしながら迷宮を奥へ奥へと進んでいく二人。
途中下級の魔物が襲いかかってくることはあったが、一瞬で倒されて魔石と素材に変わっていく。
今さらこんな下級の小さな魔石など必要ないのだが、生来の収集癖が災いして集められるのならばと全部集めてしまう村正だった。
「本当に深夜の収納空間はありがたいのう」
「お役に立てて幸いでございます」
どれだけの量が収納できるのかは深夜もよく分かっていないそうだ。
ひとまず大型のフェリーくらいなら入るらしいことは昔実験したので分かってはいるのだが。
「そういえば、昔かっぱらった飛行機や船も入りっぱなしかのう?」
「もちろんでございます。さすがにあちらの世界ではおおっぴらには出せませんでしたのでしまい込んだままです」
「そうじゃのう。某国や某国の戦闘機や輸送機なんぞそこらでは出せんしな……」
行き掛かり上で揉めた軍隊と戦闘になるようなこともあったので、奪い取った兵器群が収納されたまま眠っているのであった。
「まあ、この世界で使うこともあるやも知れぬ。そのまましまっておこう」
「御意」
この世界での現代兵器がどれだけ規格外な物かはまだ評価できないが、魔物程度なら瞬殺できそうだ。
特級、超級魔族になると厳しい部分もあるだろう。
戦闘機やヘリでドラゴンを倒すことはおそらく不可能。
戦艦から発射されるミサイルでどうにかなるかも知れないといった程度だろうと村正は感じていた。
そのため、戦力としてはあまり考えていないようだ。
せいぜいが「人族の城攻めに使えるか」とか「洋上の拠点としては使えそうだ」とかその程度である。
さて、そんなこんなで地下10階。
階層的にはそろそろ陸地が無くなる階層である。
「深夜よ、いったんここでキャンプと行こうではないか」
「御意」
さすがに完全に海中に没した状態でテントを張るわけにも行かない。
もちろんそのあたりも考えてはいるのだが、無理に強行軍で行く必要もないので、球形も兼ねてということだろう。
「この迷宮にはハンターはあまり寄りつかないようじゃなあ」
「ここから先に行くための条件が厳しいですから。間引きの依頼以外ではあえて寄りつこうとしないのも頷けまする」
「そうじゃのう」
この先は【水中呼吸】の魔法なりスキルなりが必須になる。
もしくは、海中で行動できる種族だけでパーティを固めるかだが、そうした種族がハンターでいることはかなり稀であるし、人数をそろえるのも難しいだろう。
現地でそうした種族を雇うにしても、ハンターでもない者が【海魔の迷宮】にわざわざ挑もうとも思うまい。
「この迷宮の魔王は退屈じゃろうな。迷宮戦争が始まれば、呼吸など必要な魔族もおるじゃろうがのう」
「退屈はよくありませんね」
その通りだ。
退屈は人を殺すのである。
びしょびしょの岩場にテントを張る気にもなれないので、収納からプレハブを取り出して設置する二人。
どう見てもキャンプではなく、どこぞの現場のようである。
プレハブの中で食事を済ませ、日課のトレーニングをしたあと、村正は眠りについた。
「さて、このクズ魔石を有効利用したいところです」
村正が寝入ってしまうと、深夜は一人プレハブの外へ。
テーブルを取り出して、無数に集まった小さなクズ魔石を山積みにする。
クズ魔石とはいっても、ギルドに持ち込めばそれなりの値段になるし、一般市民が使っている魔道具の燃料としては十分なものだ。
単純にこの二人の求めるレベルには不十分だというだけだ。
「要するに魔素、燃料の塊なのですから精錬していけば良いはず」
クズ魔石の魔素を解放し、融合させ、不純物を取り除き純度を高めていく。
原油からガソリンを作り出すようなものか。
純度を上げた魔素を、再度魔石の形に圧縮して固化させる。
色といい艶といい、とても小さなクズ魔石から生み出されたとは思えない素晴らしい魔石であった。
「これなら実用に耐えますね。村正様の訓練にも使えます」
満足げに頷いた深夜は、まだまだ大量に貯め込まれていた小さな魔石達をどんどん加工していく。
ちなみに魔素の気配によってきた魔物達は、一瞬で深夜に倒されてしまったのだった。
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