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探索者は異世界でも宝を求む  作者: 葉月風都
第5章 日常パート。魔王様、街へ行く
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第4話 -さて、それから半年-

<第4話 -さて、それから半年->




 それから三日間、ひたすら訓練である。

 タケマルは片手剣、アステリオスはハンマー、ヴィネは大剣、バステトは暗器が獲物である。


「俺もその【刀】が欲しいな」

「ふむ。この世界では一般的ではないようじゃなあ。自ら作る以外に手は無いか?」

「むう。ムラマサは持っていないのか?」

「有るが、お主の力には合わぬよ。何でも持てばいいというものでもないでのう」

「そうか……」


 タケマルは村正同様に刀を振ってみたいようだ。

 だが、この世界に日本刀は存在しない。

 自分で作るしかないのだ。


「片刃の長剣をまずは使うてみることじゃな」

「分かった。そうしよう」


 アステリオスは超重兵器を使いこなすための繋ぎを学んでいる。


「一撃一撃の威力は確かに高いが、その分隙がでかい。その隙を無くすためには、確実に当てるか次の攻撃への繋ぎを考えねばならん」

「よくわからん!」

「相変わらずの脳筋っぷりなのニャ!」

「まあいい。とりあえずワシの言う通りに動いてみい」


 とにかく身体に覚えさせる方針に切り替える村正。

 理屈は後からでもついてくるものだからだ。


 ヴィネとバステトは深夜の担当だ。

 二人同時に深夜と戦う実戦形式の訓練である。

 二人がかりでも簡単にあしらわれてしまう二人だったが、真剣に訓練に取り組んでいるようだ。


「よいよい。その情熱があれば強くなろうよ」


 生まれ変わったように訓練に取り組む四天王を見て満足げに頷く村正だった。






 さて、それから半年の時が過ぎた。


 その間に、村正はゴールドランクからプラチナランクへと昇格し、正真正銘の実力者として名声を獲得していた。

 半年のうちに四都市全てを巡り、各ギルドでクエストをこなしては確実に達成し、ハンターカードに刻まれた燦然と輝く達成率100%の文字。


「いやいや、久しぶりじゃのう」

「本当ですよう、ムラマサさん。半年ぶりですねー」


 ブリジットがにこにこと笑顔で出迎えてくれた。

 久しぶりにアールファの街へと戻ってきたのである。


「ムラマサさんがプラチナランクに昇格したのはみんな知ってますよ。おめでとうございますう」

「ありがとうよ。ヴィヴィアンはおるかのう?」

「支部長でしたらいつものように執務室にいますう。そうでした、ムラマサさんが戻ってきたら必ず連絡するように言われてましたあ」


 たった今思い出したようにいうので、思わず苦笑する村正。


「そうか。じゃあ、連絡してくれい」

「はいー」


 ぱたぱたとカウンターの奥へ消えていくブリジット。


「すごいわね」

「なんじゃ、アリス?」


 もう一人の顔なじみの受付嬢、アリスが話しかけてきた。


「もうプラチナランクなのね。まだ一年もたってない。信じられないわ」

「かかっ。運が良かったんじゃよ。もちろん実力もな」

「そうね。その通りだわ。実力だけ、運だけじゃここまではこれない」


 どの世界においてもそれは一緒だ。

 運だけが良くても、力だけがあっても、決して上にはいけない。

 双方を兼ね備えた者だけが一流と呼ばれる資格を持つのだ。


「まだまだじゃよ。ミスリルランクが残っとるからのう」

「そうかもね。でも、ミスリルランクなんてギルドマスター務められるほどの人たちなんだから、ムラマサには似合わないかもね」

「かかか。そうかもしれんのう。正直、ワシはランクには大して興味ないんじゃよ。ランクが上がれば自由度が上がる。それだけじゃ」

「あは。その台詞、そこらへんの下位ランクのハンターに言ってあげたら?」

「ただの煽りにしかならんじゃろが、全く」


 戻ってきたブリジットが、今すぐ執務室に来るようにと伝えてきたので、村正は深夜と共に久しぶりに執務室を訪ねる。


「久しぶりね、ムラマサ」

「そうじゃな。半年振りか。息災なようで何よりじゃ」

「あなた達もね」


 半年間の間に起こった出来事を交流し合うが、アールファでは別段大きいことは起こっていないようだ。

 村正達が各都市でやってきたことの方がギルド的には大事件である。


「北でドラゴンを倒してきたらしいじゃない」

「下位種じゃよ。特級魔族とどっこいどっこいじゃったな」

「もうミスリルランクでもいいんじゃないかしらね……」


 呆れた顔をするヴィヴィアン。

 クエスト消化数の問題があるのでもう少し先になるだろう。


「この半年でだいぶ儂もレベルアップした感じがするわい」

「でしょうね。道中もカヨウちゃんの所には顔を出してたの?」

「そうじゃな。四天王の稽古もあるしのう。真面目にトレーニングしておるようじゃったわい」


 都市から都市へと渡り歩いていた半年間の間にも、転移魔法を使って【獣魔の迷宮】へは顔を出していた村正。

 四天王も半年間みっちり武術の訓練を積んだせいか、魔族とは思えぬほど実践的になっていたしカヨウの魔力隠蔽もほぼ完璧になっていた。


「つい先週会ったときは、カヨちゃんの魔力隠蔽がほぼ合格点じゃったな。街へ遊びに来たい一心でひたすら訓練しとったとグラスが言っておったわい」


 そういうグラスも魔力隠蔽は完璧だった。

 もともとグラスの方が魔力操作は得手であるから当然と言えば当然であるが。


「そうなの……。ということは、そろそろ実現してしまうのね」

「そうじゃなあ。さすがに『やっぱり無理』は通用せんじゃろうなあ」

「そうよねえ……」


 このままでは魔王カヨウのお忍び諸国漫遊記が始まってしまうではないか。

 そんなおてんば姫は困る。


「まあ、儂と深夜がフォローするわい。この街が一番融通が利くじゃろ」

「それはそうなんだけどね。何も起こらないことを祈るわ」


 すでに心労MAXな顔をしているヴィヴィアンであった。


「話は変わるけど、各地の迷宮は確認してきたのかしら?」

「うむ。正確な位置と傾向は把握してきたぞい。新しく目をつけられんように中層までしか潜っておらんから、魔王には儂が協力者じゃとはバレとらんと思うぞ」

「気をつけて。魔王だけじゃなく、国やギルドにもバレないように」

「わかっとるわい」


 万が一村正がすでに魔王の協力者であることが発覚した場合、国とギルドの総力を挙げて村正は消されるだろう。

 それが可能かどうかと言われれば、おそらく不可能だが。


「バレたら皆殺しにすればいいんじゃろ、知ってしまった奴らを」

「その時はお任せ下さい。私が責任持って処理させて頂きますゆえ」


 深夜が無表情のまま物騒なことを言う。

 実に平常運転である。


「だからバレないようにしてって言ってるのよ。別にあなた達のことは心配してないわ」

「なんじゃ、冷たいのう」

「魔王より強いような連中を心配する意味ないでしょう……」

「儂はそこまで強くないわい。深夜がいてくれて助かるのう」

「至上の喜びでございます」


 大きなため息をつくヴィヴィアン。

 全く変わっていない主従に悪い意味で感心したのだった。


「さて、儂はカヨちゃんの所に行ってくるわい」

「そう。よろしく伝えておいて?」

「後で街歩きの相談も詰めようぞ」

「……分かったわ」


 執務室を後にすると、村正と深夜はギルドを後にする。


「ふむ。そろそろ宿ではない拠点が必要かもしれんのう」

「確かにそうでございますね。その方が気を遣わないので良いやも知れませぬ」

「いっそ、どこか迷宮でも乗っ取るか」

「新たな魔王を名乗るのですか」

「さすがに時期尚早じゃろうなあ」


 深夜の持つオーバーテクノロジーである【転移門(ワープゲート)】を使用するためには、転移先に目印を設置しなくてはならない。

 この半年で、各地の迷宮や都市周辺には目印を密かに配置しているので、今度移動するのは非常に楽になっている。


「毎度毎度グラスを呼ぶのも悪いからのう」

「この世界の魔法は私には馴染みませぬゆえ……」

「儂が魔法を使えるようになれば問題解決なんじゃがな。修練あるのみよ」


 簡単な魔法であれば、半年間の訓練で使えるようになった村正であるが、高度な魔法にはまだまだ手が届いていていない。

 優秀な魔法使いが師匠になってくれるといいのだがと村正は考えていた。

 魔族は優秀であるが、彼らは呼吸をするように魔法を使うので人間には参考にならないことこの上ない。

 ヴィヴィアンが一番イメージに近いのだが、彼女は転移魔法を使えるほどの規格外の魔術師ではなかった。


「世の中、ままならぬものよなあ」


 宿へ戻って部屋に入ると、そのまま深夜の転移門で獣魔の迷宮へ転移する。

 最下層では、四天王が黙々と訓練に励んでいた。


「おお、やっとるのう。感心感心」

「ムラマサ! 久し振りなのじゃ!」


 いつものようにカヨウがダイビングしてくる。

 村正もそれを受け止めると、くるりと一回転させて優しく地面に下ろしてやる。


「ムラマサ、勝負だ」

「待てよ、タケマル。オレが先だあ!」

「……あたしだよ」

「ウチはいいニャ」


 四天王がわらわらと湧いて出る。

 ついこの間も手合わせしたばかりなのだが。


「お主らも好きじゃのう」

「腕が上がるのは楽しいからな!」

「ああ。力だけじゃ駄目だと言うことがよく分かる」

「それでええんじゃ。今のお主らなら他の迷宮の超級魔族と戦っても問題ないじゃろ。力が互角でも技で勝てる」


 ポテンシャルで敵を圧倒してきた魔族が、本来弱者が強者に勝つために編み出された技術をも身につける。

 これがどれほどの効果を持つのか、想像するだけでも恐ろしい。


「じゃが、今はそれより重要な案件があってな。すまぬのう」

「それほどのことなのじゃ?」


 こてんと首をかしげるカヨウ。


「それほどじゃよ。お主に関係することじゃぞ?」

「のじゃ?」


 何のことか分からないという顔だ。


「魔力隠蔽が上達したじゃろ」

「うむ、頑張ったのじゃ! あ、もしかして!」


 ぱあっとカヨウの顔が明るく輝く。

 何を言いたいのかようやく伝わったようだ。


「遊びに行ってもいいのじゃ!?」

「そうじゃなあ。いくつか打ち合わせをしてからになるが、そろそろいいじゃろう」

「うれしいのじゃ!」


 またしてもぴょんと村正に向かって飛びつくカヨウ。

 深夜のイライラ度が急上昇である。


「頭を食うなよ、カヨちゃん。何せバレたら一大事じゃからな。ヴィヴィアンが」

「そうなのじゃ? まずいのか?」

「うむ。もしバレたらヴィヴィアンとはもう友達ではいられんかも知れんなあ」

「それはダメなのじゃー」


 はわわになってしまったカヨウ。

 ヴィヴィアンのことはどうやら好きらしい。

 自身にとって大切なものが増えていくのは、この愛らしい魔王にとって良いことなのか悪いことなのか。

 人間強度が下がる、なんてどっかの主人公は言っていたものだが。


「というわけで、グラスよ」

「はい」

「カヨちゃんの初めてサポート会議を開くぞい」

「承知しました」


 恭しく頭を下げるグラス。

 犬耳がピコピコしていた。


お読みいただきありがとうございます。


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