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探索者は異世界でも宝を求む  作者: 葉月風都
第4章 三柱戦
30/42

第5話 -ただのお友達ですってば-

これで4章終了です。

今回は7話になりませんでしたw

<第5話 -ただのお友達ですってば->




「あなたは、魔王の協力者? それとも人間の、勇者の側?」

「どうじゃろうなあ。強いて言えば中立よのう」

「そんなことがっ」

「まあ待て」


 ソファから立ち上がろうとしたヴィヴィアンを言葉一つで押しとどめる。

 村正の目が「まあ落ち着け」と言っている。


「儂は魔王の側にも勇者の側にも立つ気はない。今のところはな」

「……どういうことなの?」


 村正から発せられる雰囲気、気配、オーラと言われるようなモノに圧倒されるヴィヴィアン。

 前回会った時とはまるで比べものにならない、別人の様な強さを纏う村正。


「儂はな、魔王にも勇者にも神々の姉妹喧嘩にも興味は無いのよ。儂が欲しいのは迷宮に眠るという魔王の秘宝じゃ。迷宮戦争とやらにかこつければ、迷宮に攻め込む良い大義名分になろうさ」

「そんなこと……。勇者に協力すれば同じでしょう。あなたの実力なら勇者一行のメンバーに加わることだって」

「儂は誰かの下に着く気など無い。第一、勇者はすでに最初から有利な立場じゃろう。有利な側で戦うのは興ざめよ」


 呵々と獰猛に笑う村正。


「そんなことで……」

「もちろん人間にも勇者にも恨みなど無い故な。協力者として人に害を為す気は無い。今の立場は、そうじゃな。強いて言えば魔王の友人といったところかのう」

「そんなことが許されるとでも」


 ヴィヴィアンがそう言いかけた瞬間、村正から発せられていたプレッシャーが急激に増加する。倍増どころでは無い。


「なっ!?」

「何故儂がお主らに許されねばならぬ? 儂は世界の趨勢に興味など無い。儂が求めるのはまだ見ぬ宝のみと言ったはずだ」


 じろりとヴィヴィアンを睨み付ける村正。

 それに合わせるように、無表情ながらも怒りの気配を発する深夜がヴィヴィアンにさらなるプレッシャーを掛ける。

 正直、ヴィヴィアンは震えを押さえるのに必死であった。


「許さぬならどうする。儂を捕らえて罰するか、ギルドの総力を挙げて。それとも国を動かし権力を持って儂を処罰せんとするか?」

「そのようなことは私が決してさせませぬ」


 深夜がぼそりと呟く。


「その時は頼む。万が一そのようなことになれば、儂は中立ではいられんよのう。協力者として人に仇為す魔人にでもなろうか」

「……」


 ヴィヴィアンは村正に言いようのない恐怖を感じていた。

 それ以上に、深紅の瞳に深淵を覗かせる深夜に。


「なに、儂がおる限り、少なくとも獣魔の迷宮の魔王には人に危害を加えるような真似はさせんよ。友人が人を襲うところは儂も見たくはないでのう」


 それまでのプレッシャーを雲散霧消させ、にかっと笑う村正。


「さっきも言ったが、儂はどっちの側にもつく気は無い。出来れば引き分けが一番良いと思っとるんじゃが」

「引き分け?」

「そうじゃ。どっちが勝ってもしこりが残るのならば勝者などいらんじゃろう。人族も魔人族も、そして魔族も手を携えるのが一番良い結果じゃろ。姉妹喧嘩のダシにされる種族にしてみればいい迷惑じゃわい」


 やれやれと言いながら首を振る村正。


 ヴィヴィアンはそんなことは考えてみたことも無かった。

 人と魔族は不倶戴天の仇敵。

 戦って戦い抜いて、勝者と敗者があるのみだと。


「と言うわけで、儂を処分しようと思うのはお薦めできんのう。国に報告するのも止めておけい。儂と深夜を魔族の側に着かせたくなければな」

「その時は国ごと滅ぼします」

「深夜は言うことが過激じゃのう」


 かかかと笑う村正。


「私は本気でございます」

「その時はその時よ。暗黒の200年期とやらが現実のものにならんとよいのう」


 深夜の頭を撫でながら笑う村正。


「分かったわ。そのことは私の胸の中に閉まっておくことにするわ。さもないと、もっと大変なことになってしまいそうだから」

「それが賢明じゃ。カヨちゃんも喜ぶじゃろう」

「カヨちゃん?」

「おう。獣魔の迷宮の主でな。九尾の妖狐で名をカヨウというのじゃ」

「カヨウでカヨちゃんなのね……」


 一気に脱力するヴィヴィアン。


「可愛い幼女でな。じゃが、深夜も負けてはおらんぞ。おっと、じゃからといって勘違いするでないぞ。儂は別に幼女趣味では無いからな?」

「そんな余計な性癖暴露はいらないわ」

「違うと言っておろうに。カヨちゃんも別に人間を滅ぼしたいとも思っておらぬようじゃったし。部下は知らんが」


 少なくともタケマルとアステリオスは人間など滅んでもいいと思っているだろうが。

 ヴィネはどうでもいいというだろうし、バステトもそうだろう。

 カヨちゃんは、「人と分かり合えるのならそれがいいのじゃ。闇神様も姉神様と仲直りできたら一番なのじゃー」とか言ってくれそうだと村正は思った。


「とにかく。責任持って魔王の手綱は握って欲しいわ。アールファの街を危険に晒さないように」

「そこは請け負おう。お主もカヨちゃんと友達になれば良いのじゃ。良い子じゃぞ。何なら今度一緒に迷宮へ行こうではないか」

「……考えておくわ」


 あっけらかんと言う村正に頭を抱えるヴィヴィアン。

 正直どうでも良い気がしてきてしまったヴィヴィアンであった。


「なに、まだ2年も先の話じゃ。それまでは気を揉んでも仕方あるまいさ」

「ムラマサは気楽なものね。深刻に考えている私が馬鹿みたいだわ」

「浮き世はなるようにしかならぬ。楽しんだ者勝ちじゃぞ?」


 呆れたように笑うヴィヴィアン。

 笑うしかないという感じだが。


「それはそれとして、魔石と素材の買い取りなんじゃがな」

「ああ、それはアリスに言ってちょうだい」

「そうか。では、話は終わりで良いか?」

「ええ。何か新しい動きがあったら教えてくれるかしら。それくらいは人にも協力してくれるでしょう?」

「ふむ。役に立つようなことがあればじゃな。考えておこう」


 そう言うと村正は深夜を従えて執務室から出て行った。


「……大変な事よね」


 村正たちが消えた執務室で、ヴィヴィアンはそう独りごちる。


 掛け値無しに大変なことなのだ。

 自らの治めるギルドのハンターが魔王の協力者となってしまったこと。こんな事が知れ渡ってしまえば、自分の身ならずアールファのハンターギルドそのものが人類の敵と見なされてしまったとしても文句は言えない。


 では、村正をどうにかして排除できるか?

 それもノーだ。

 ここにやってきたばかりの村正ならばまだどうにか出来たかもしれない。だが、今現在の村正はまるで別人のような強さを見せつけている。

 そして従者の幼女、深夜。

 底知れぬ恐怖をまき散らす得体の知れない幼女。

 ただの従者では無かったというわけだ。


「今は隠しておくしかなさそうね。魔王の協力者が全て人に害を為すとは限らないのはその通りだけれども……。上手く立ち回らないとダメね」


 はあっと大きなため息をつくヴィヴィアン。


「やれやれ。とんだルーキーだったわね」


 今さら愚痴ったところで始まらない。そう気持ちを切り替えたヴィヴィアンは、改めてこれからの計画を考え始めるのだった。


お読みいただきありがとうございます。

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