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探索者は異世界でも宝を求む  作者: 葉月風都
第4章 三柱戦
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第4話 -ちょっと腹を割って話そうか-

<第4話 -ちょっと腹を割って話そうか->


 数日後、無事にアールファの街へ戻った二人は早速ハンターズギルドを訪ねる。

 二人がスイングドアをぎぃと鳴らしてギルドへ入ると、ざわっと空気が震える。


「なんじゃなんじゃ、その反応は。お主らも儂らが迷宮でやられたと思っておったクチかいのう。情けなや。そこまで弱く見積もられておったとはのう」


 呵々と笑う村正にバツの悪そうな顔で応じたのは、迷宮で出会っていたパーティの一人だった。


「すまん。正直たった二人で下層へ挑戦した上になかなか帰ってこなかったもんだからてっきり、な。悪気は無かったし、まだ帰って来てないという話をしただけだったんだが。いや、言い訳はすまい。オレが悪かった」


 素直に頭を下げるハンターを見て好感を持った村正。


「いやいや、仕方あるまいよ。無謀に見えただろう事は事実じゃ。気にするでない」

「そう言ってもらえると助かる。無事に戻ってきてくれて良かったよ」

「む、ムラマサさん、無事だったんですねえ!」


 そう言って声を掛けてきたのはブリジット。

 今日も巨乳が揺れている。


「おう。今帰って来たところでな。依頼完了の報告と素材の買い取りを頼む」

「もちろんですう。アリスさあーん、買い取りですう」

「はいはいっと。本当に無茶なんだから。良く生きて帰って来たわね」


 アリスが憎まれ口を叩くが、表情はそうは言っていなかった。


「それで、今回は何を持ち込んでくれたのかしら。この間は中級だったから今回は上級かしらね?」


 冗談だと分かるようにニヤニヤしながらそういうアリスに、村正は収納袋から上級の魔石をごろごろと6つほど取り出して見せる。


「よく分かったのう。ほれ、これがそうじゃよ。魔素の量から言って、間違いなく上級じゃと思うんじゃが、どうだ?」

「え?」


 何を言われているのか分からないという顔でぽかーんと口を開けるアリス。

 ブリジットや周りにいたハンターたちも同様だ。


「じゃから、上級の魔石じゃよ。鑑定してくれい」

「はあああああっ!?」


 アリスの大声がギルド中に響き渡ったのだった。




「ちょ、ちょっと、ムラマサ。冗談じゃ無いわよね!?」

「無論じゃ。儂がそんな無駄な冗談を言うと思うか?」


 カウンターに無造作に転がされた魔石を見つめるアリス。

 おそるおそる手を伸ばしてじっくりと眺めると、少し待っていてと言い残して奥へと消えていった。

 おそらく、支部長であるヴィヴィアンのもとへと報告しにいったのだろう。


「はー、これが上級の魔石ですかあ。きれいですねー」


 ブリジットが魔石を持ち上げて眺めたり撫でたりしている。


「そうじゃなあ。中級のものよりも遙かに上質な見た目じゃな」

「はいー。まるで宝石のようですう」


 そんな会話を聞きつけた他のハンターたちも興味津々で集まってきた。


「上級の魔物を倒したのか……」

「すげえぜ……」


 感嘆の声があちこちから湧いてくる。


「すごいですー。さすがムラマサさんなのですー」


 何故か偉そうに胸を張るブリジット。

 ギルドの制服に包まれた豊かな胸がさらに強調されて良い眺めだ。


「ムラマサ。支部長がお呼びよ」

「おうよ。では、また後でな」


 アリスに呼ばれた村正は、魔石をしまうと深夜と共にカウンターの奥へと向かう。

 階段を上った先は、こんな短期間で何度も訪れることになるとは思ってもいなかった支部長の執務室だ。


「ヴィヴィアン様。ムラマサを連れてきました」

「ええ、入ってもらって」


 アリスと二人は執務室の中へ。

 今日もセクシーなドレス姿でヴィヴィアンが机にもたれ掛かるようにして立っていた。


「アリス、ちょっと難しい話になるから席を外してくれる?」

「かしこまりました」


 ヴィヴィアンに言われるままに退室するアリス。

 腰掛けるようにジェスチャーで示されたので、二人は遠慮無く高級なソファーに腰掛ける。


「迷宮で上級の魔物を狩ってきたそうね?」


 自らも向かいのソファーに腰掛けながらヴィヴィアンが切り出す。


「うむ。これがその魔石じゃ。素材もあるが?」

「それは今は良いわ。確かに上級の魔石ね」


 アールファの街唯一のミスリルハンターであるヴィヴィアンには見慣れた魔石だ。

 本題はそこではない。


「何階層まで踏破したんだったかしら?」

「16階層ということになっておるよ」

「16階層ね……」


 しばらくの沈黙。


「のう。腹の探り合いは止めにせんか?」


 沈黙を破って言葉を発したのは村正だった。

 村正も別に気が短い方ではないが、昔から無駄な時間は好まなかった。


「……どこまで分かっているの?」

「何処までと言われてもな。少なくともお主は、いや、ギルドの上層部は迷宮についての正しい情報を持っているのだろう? そしてそれを秘匿している」

「何故そう思うのかしら?」


 自嘲気味に笑いながらなおも言葉を選ぶヴィヴィアン。


「少なくともギルドがそれを知っていなければ、もっと下層の探索は進んでおるじゃろうさ。優秀な高ランクハンターが魔王に見初められるのを防いでいるつもりなのじゃろ?」


 如何にも面倒そうに語る村正に、ぴくりと眉を動かすヴィヴィアン。

 ふうとため息をつきながら、深くソファーに腰掛け直す。


「……会ったのね、魔王と」

「会ったというか、招かれたが正解じゃなあ」

「超級魔族と戦ったの?」

「それはどうじゃろうなあ」


 すっとぼける村正。

 仕方ないわねとでもいうように肩をすくめてみせるヴィヴィアン。


「三柱戦のことはギルドは押さえているわ。もちろん国の上層部もね。2年後はちょうど200年。次の200年がヒトの200年期になるのか暗黒期になるのかはこれから生まれる勇者次第だわ」


 背もたれにもたれ掛かりながら語り始めるヴィヴィアン。

 概ね狐の魔王カヨウから聞いた話の通りであった。


「迷宮から溢れ出てくる魔物を未然に食い止めつつ魔石や素材を供給する。ただし、深く潜りすぎて魔王の協力者として見初められても困る」

「じゃからシルバーからせいぜいゴールドまでのランクのハンターに間引きを優先して回す。そこまで下層に潜れんように。魔王の協力者は強い者が選ばれるようじゃから、迷宮に自らの管理するギルドの高ランクハンターが侵入せぬように」

「その通りよ。協力者がいなければ魔王は迷宮戦争で資格を得ることが無い。低ランクのハンターをどうにか協力者に仕立て上げても、その程度の協力者なら潰せる」

「問題は、ギルドの管理が行き届かない連中。それも腕の立つ、な。迷宮の奥深くを目指す輩よ。強さを求めてか、迷宮の奥に魔王が隠し持つという秘宝を求めてか」

「ええ。そして魔王はあの手この手で協力者を手に入れて、今代の魔王となり、人に仇為し、勇者と戦うのよ」


 長いやり取りの後、ヴィヴィアンは村正をじっと見つめる。

 その美しい顔で、何かを堪えるように。


お読みいただきありがとうございます。

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