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探索者は異世界でも宝を求む  作者: 葉月風都
第4章 三柱戦
28/42

第3話 -サイレンスとエアは名馬-

このへんまでが私の競馬人生でしたw

馬券はほぼ買ったことありませんでしたけどね。


ダビスタ大好きでした( ´▽`)

<第3話 -サイレンスとエアは名馬->


 その頃、地上にある迷宮入り口側の詰め所では。


「あの新人、まだ戻ってこないのか?」

「あの新人?」

「ほら、ちっちゃい嬢ちゃん連れた、馬で来た若いのだよ」

「ああ。若いのにジジイみたいなしゃべり方する奴か」


 詰め所勤務のギルド職員がお茶を飲みながら話す。


「シルバーランクの集団がつい昨日戻ってきたけど、その中にはいなかったよな?」

「ああ。シルバーの連中の話では、自己責任だっていいながらお嬢ちゃんを連れてさらに下へ潜っていったってことらしいんだが……」

「鳴り物入りのルーキーだって話だろ。実力を過信して下層へ挑んで、か」


 言外に「もう生きちゃいないだろうなあ」と滲ませながら何とはなしに天井を見上げる職員二人。

 さすがに下級の魔物ならともかく、中級以上が出てくる下層になると二人、実質ソロのパーティでは苦しくなるだろう。


「いくらやばくなったら逃げてくるとは言っても、そう上手くはいかないこともあるからなあ……」

「そうだなあ。実力のあるハンターを失うのは勿体ないが、仕方ないか」


 実力のあるハンターが増えれば、アールファの町のみならず東部全体の安全にもつながるしギルドとしても鼻が高い。だから、期待できそうなハンターにはランクを上げていって欲しいわけだ。


 現在アールファの町には高位のハンターが東西南北の街道始点都市に比べて少ない。

 ギルド長のヴィヴィアンはミスリルランクだが、それ以外にミスリルランクはおらずその下のプラチナランクもわずかに1名のみ。ゴールドランクも8名しか存在していないのである。

 他の三都市に比べると2/3程度だ。


 東の大森林のアールヴ達がヴィヴィアンの関係で協力してくれてはいるが、戦力不足は否めないところだ。


「まあ、まだ死んだと決まったわけじゃない。ひょっこり帰ってくるかもしれん」

「それもそうだ。乗ってきた二頭の馬も大人しいしな」


 動物は勘が鋭い。

 特に馬は、乗り手と認めた相手のことを何かで感じ取るのか、乗り手にないかあると暴れたり突然嘶いたりすることも多い。

 二頭の馬はとても立派な馬で非常にプライドも高そうである。

 そんな馬が大人しく繋がれているのだから、もしかしたら無事ではないかと職員は考えているらしかった。


「職員さん」


 その時、詰め所の入り口が開いて男が顔を出す。


「我々はそろそろアールファの街へ戻る。上層部はだいぶ間引いたから、またしばらくは大丈夫だろう」

「ご苦労様でした。またよろしくお願いします」


 上層階で魔物を倒し続けていたシルバーランク組が、迷宮から戻ってきて一晩休息を取って今日街へ戻るということらしい。


「あのムラマサとかいう若いのはまだ戻っていないのか?」

「ええ。皆さんが戻ってらしたのが昨日ですから、下の階層へ潜ったならまだ戻っては来ないと思います。無事に戻ってきてくれれば良いんですがね」

「そう簡単にくたばるタマにも見えなかった。二、三日したらひょっこり戻ってくるかもしれんぞ?」

「それならいいんですがねえ……」

「とにかく、我々は帰還する。世話になったな」


 ギルド職員と別れの挨拶を済ませると、アールファの街へと街道を帰るハンターたち。

 彼らにしてみれば、上層部にわき出る魔物たちを十分倒して魔石や素材も稼いだし、街へ戻ればクエストも達成できるしで万々歳だ。

 まだ戻ってこない村正たちのことは心配はしているが、ハンターであるからにはそれ以上の干渉はしないのが不文律である。


「さて、馬たちに餌でもやってくるわ」

「おう、頼んだぞ」


 ギルド職員はそう言って馬小屋へと向かっていった。


 その頃村正たちは、上層階への道を悠々と突破していた。

 下級の魔物たちは空気を読まずに村正たちを襲ってくるが、鎧袖一触に滅ぼされる。


「鬱陶しいのう」

「魔物たちは獣と一緒ですから。強者を避ける知恵くらいはあるかと思いましたがいやはやどうして」

「まあよいか。あまり早く戻ってもそれはそれで不自然じゃしな」

「遅すぎるのも下層で死んだと誤解されるかと」

「遅すぎることもあるまいよ」


 念のため、二階あたりでもう一泊時間を稼いでから地上に戻ろうということになったので、一層へ上る階段のところでキャンプする村正たち。


「忘れておったのじゃー」


 真夜中、突然グラスとカヨウが転移魔法で二人の元へ現れる。

 転移魔法の予兆があった時からもしかしてと思っていた二人ではあったが、魔王ともあろう者が軽々にこんな上層部(ところ)に現れても良いのかと若干呆れていた。


「どうしたんじゃ、カヨちゃん。こんなところに現れて良いのか?」

「ホントは良くないのじゃ。だから、これを渡したらすぐ帰るのじゃ」


 そういって着物の懐から取り出したのは、一本の檜扇だった。

 位の高い女性用の39橋のもので、美しく彫られた模様と色鮮やかな絵が見事である。


「これをかざして我を呼べば話も出来るし、パスが繋がるので迷宮に来てくれた時に迎えに来られるのじゃ!」


 どうじゃ、すごいであろうという風に薄い胸を張るカヨウ。

 褒めて褒めてと尻尾がゆらゆらと揺れている。


「ありがたいんじゃが、これを持っていて儂が魔王の協力者だとバレることはないのかのう?」

「はうあ!? ど、どうなのじゃ、グラス?」

「おそらく、閉じて持っている限りは大丈夫かと思われます。むやみに開いたりはしないことをお薦めしますが……」

「だそうなのじゃ」


 結構危険な代物のような気もした村正だが、カヨウの手前そんなことは言えない。


「ふむ。ではひとまず預かるとしようか。大事なものではないのか?」


 そう言ってちらりとカヨウを見る村正。


「いいのじゃ! 我らは、と、と、友達なのじゃ!」

「それならば有り難く頂戴いたす。有り難うな、カヨちゃん」

「お安いご用なのじゃ!!」


 満面の笑みで頷くカヨウ。

 さらばなのじゃーとまたしても転移魔法で消えていく二人を見送って顔を見合わせる村正と深夜。


「何というか、無邪気なものよのう」

「魔王様のはずですが。魔王(笑)というやつでございましょうか?」

「それはそれでよいわ。可愛いしのう」

「幼女ポジションを争うことになりそうです」

「深夜はクール系。カヨちゃんはカワイイ系で住み分ければよかろうよ」

「村正様がそれでよければそのように致しまする」


 別段村正は幼女趣味ではないが、可愛いものを愛でるのは万国共通だ。

 深夜も十分過ぎるほど容姿には優れている。

 基本無表情なので年相応の愛らしさには欠けるというだけだ。


 ただし、何度も言うようで申し訳ないが深夜は「兵器」だ。

 それも極上の。

 見た目は必要に応じて変化させることが出来る。

 長くこの幼女の姿でいたからそれが何となく気に良いってデフォルトになっているだけなのである。


「お主はなろうと思えば儂好みのナイスバディにもなれるじゃろうが。あれじゃ、秘密兵器を使う時には封印が解けてババーンと大人の姿に変身的なアレにコレすれば」

「一考の余地がありますね」


 おバカな主従であった。


「さて、寝るか」

「はい。見張りはお任せ下さい」


 快適なキャンプで眠りにつく村正であった。


 翌朝、二人は獣魔の迷宮から脱出した。


「今帰ったぞい」

「無事でしたか!!」


 詰め所にひょっこりと顔を出した二人を見て驚く職員。


「なんじゃ、幽霊にでも会ったような顔で」

「い、いえ。一足先に帰還したパーティの皆さんが、お二人はさらに下層へ挑戦したとおっしゃっていましたので……」

「なるほど。まあ、致し方有るまい」


 バツの悪そうな職員の顔を見てなるほどと納得する村正。

 深夜は若干不機嫌そうであったが、村正の実力を過小評価されたのが気に入らないのだろう。ましてや、深夜さえいればこんなチンケな迷宮など簡単に踏破できるのだから。


「それで、お二人はどれくらいの階層まで潜ったのですか?」

「おう。16階層じゃな」

「じゅっ、16階層!?」


 絶句する職員。

 間引きのためにハンターが迷宮に潜るようになってからの最高到達階層が公式的には9層となっているところへの16階層だ。驚くのも無理はない。


「なに、間引きは上層に残った連中に任せてひたすら下へ下へと進んだだけじゃ。そういう意味では申し訳ないがのう。一応道中遭遇した魔物は全て刈り尽くしておいたから仕事をさぼったわけではないぞ?」


 ニカッと笑う村正。


「16階層……。中級は超えていますよね?」


 おそるおそると言った風に確認してくる職員。


「そうじゃな。上級の魔物にも遭遇したぞ。まあ、儂の刀の錆にしてやったがな。ほれ、これが上級の魔物の魔石じゃよ」


 大きさとしては中級の魔物の魔石と大差ないが、輝きや内包される魔素の量が桁違いの魔石を目の当たりにして再度言葉を失うギルド職員。


「さて、儂らもアールファに帰還するとしようかのう、深夜よ」

「御意でございます」


 こくりと頷く深夜。


「うむ。それではな、職員殿。また会う日もあろう」

「は、はいっ。お達者で!」


 村正は厩へ出向くと、自らの愛馬へ声を掛ける。


「サイレンス、達者であったか?」


 一声嘶くと、村正をじっと見つめるサイレンス。

 エアのほうは深夜にすり寄っている。


「なんじゃ、繋がれっぱなしで怒っておるのか?」


 そうだとでも言うようにぶるるんと鼻息も荒いサイレンス。


「なあに、もう帰るところよ。存分に駆けるが良いわ」


 そういって繋がれていた二頭を外へと引いていく村正。

 颯爽と馬にまたがると、見送りに来たギルド職員に手を振って勢いよく駆け出す二人であった。


お読みいただきありがとうございます。

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