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探索者は異世界でも宝を求む  作者: 葉月風都
第4章 三柱戦
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第1話 -魔王の城へお邪魔します-

第4章です。

4章自体が説明回みたいなものです。

ごめんなさい。

<第1話 -魔王の城へお邪魔します->


 獣魔の迷宮の奥深く。

 密林の中にそびえ立つ、石造りのピラミッド状の四角柱へと村正たちは案内されて移動してきていた。


「おお、マヤの遺跡のようじゃなあ」

「若干東南アジア風の印象も受けますね」


 遺跡全体を這い回るような蔦や木々がそう思わせるのだろうか。

 禍々しさと言うよりは神秘的な雰囲気を漂わせている。


「どうぞこちらへ」


 犬耳眼鏡が遺跡の入り口を開ける。

 中は非常に暗い。


「ここからは転移魔法で一気に王の間へ跳びますので」

「分かった」

「頼むのじゃ、グラス」


 眼鏡に相応しい名前じゃなあ、などとどうでもいいことを考えてしまう村正。

 その間にも、犬耳男子グラスの使う転移魔法によって一行は王の間へと移動を完了していた。転移が完了すると同時に、壁に備え付けられた魔法の明かりがぽつぽつと点灯し始める。


 そこは、石柱が六本立つ大広間だった。

 中央には一段高い場所に玉座が置かれ、上等そうな装飾で覆われている。


「我の城へようこそなのじゃ!」


 狐耳の美少女魔王がドヤ顔で言う。


「可愛いですが、偉そうに言われる覚えはありません。潰しますよ?」

「ひいい、言ってみたかっただけなのじゃ。許してたも?」


 深夜が無表情のまま狐耳の魔王を脅す。

 魔王は涙目になりながら、上目遣いで深夜を見上げてお願いする。

 可愛いなあ。


 その様子を見ていた四天王が一瞬怒りを滲ませるが、深夜の冷たい視線を浴びて押し黙る。先刻の戦いで格付けは済んだということか。


「魔王様、いくら自分が可愛いからと言って何でも許されるわけではありませんよ?」

「うるさいのじゃ、眼鏡! お主が黙って最初から出向いておればこんなことには!」

「怖かったんだから仕方ないじゃないですか」

「ウチだって怖かったのニャ!?」


 バステトが涙目で口を挟む。

 彼女は直に深夜に殺されかけているので、余計に恐怖をすり込まれているようだ。


「まあまあ、不幸なすれ違いじゃよ。とりあえず、どこか座って話が出来るとええのう」

「そ、そうなのじゃ。まずは話を聞いて欲しいのじゃ!」

「では」


 深夜が収納空間から畳と座卓を取り出すとあっという間に和室を作り上げてしまう。

 まあ、壁はないのだが。

 村正が靴を脱いで畳に上がり、座布団にどっかりと座り込む。


「さあ、各々方。座られるが良かろう」

「初めて見るものですね。興味深い」


 グラスがきらりと眼鏡を光らせて畳を観察している。

 四天王もどうしたものかと戸惑っているようだが、魔王が真っ先にブーツを脱いで座布団の上にちょこんと座ってしまった。


「これは何やら良いにおいがするのじゃ!」

「おうおう、分かるか。これは畳と言ってな。儂の故郷の品じゃよ」

「そうなのかー。何やら寝転がりたくなるのじゃ!」

「それは後でなあ」


 そんなやりとりを見て、他の面々も思い思いに畳の上に座る。

 全員が座ると、深夜がさっとお茶を出す。

 勿論日本茶だ。


「さてとなのじゃ。我はこの【獣魔の迷宮】の主、つまり魔王なのじゃ。名をカヨウというのじゃ。よろしく頼むのじゃー」


 そういって深々と頭を下げる魔王カヨウ。


「カヨちゃんじゃな」

「狐で十分では?」

「カヨちゃんのほうが可愛いじゃろう?」

「ぶっ、無礼な!!」


 たまらず声を上げた鬼タケマル。

 だが、深夜の一睨みでそれ以上の言葉を飲み込んでしまう。


「よいのじゃ。可愛いじゃろ?」

「む、カヨちゃん、無理はせんでええぞ?」

「無理などしておらんのじゃ。我は生まれ出でし時より魔王だったのじゃ。その後、この者達のように我に忠誠を誓う部下は生み出すことはできたが、この者達はいわば我の子どもたちなのじゃ。お主らのような者たちを『協力者』として得られたのは我にとって幸福なのじゃ!」


 本当に気にしていないように見える笑顔を浮かべてカヨウは熱弁を振るう。


「まだ『協力者』とやらになるとは言っておらんがのう?」

「そうだったのじゃ……」


 がっくりとうなだれるカヨウ。

 テンションの上がり下がりが激しい魔王である。


「ならんとも言っておらんぞ。そのあたりを説明してくれるのではなかったのか?」

「それにつきましては私が代わりに説明させて頂きます」


 くいと眼鏡を指で押し上げるとグラスが話し出す。


「そのためには、まず【迷宮戦争】についてお話ししなくてはなりません」


 そう言ってグラスは語り出した。


 迷宮戦争。

 読んで字の如く「戦争」である。


 それも、迷宮対迷宮のだ。


「この世界各地に存在する迷宮には、必ずその迷宮を支配する魔王とその部下たち。つまり戦力が内包されています」

「ほう。迷宮の最奥には魔王が棲んでいるというのは本当じゃったか」

「そうなのじゃ! 我も住んでおるのじゃ!」


 ちっちゃい体のうっすい胸をえっへんと反らすカヨウ。

 本当はこの迷宮を支配する魔王なのだから、おそらくは強いはずだ。

 こんななりでも超級魔族5体を従える恐怖の魔王なのだから。


「魔族というのは、一括りにされてはいますが仲間意識というものがありません。唯一あるのは、同じ主から生み出された同胞という感覚でしょうか」

「人間とて似たようなものよ。同じコミュニティに属しておらねば別な生き物も同然じゃからのう」

「力の差こそあれ、似たような有り様なのでしょうね。お二方は、【闇神】という存在について聞き覚えはありますか?」

「有るとも。人を滅ぼさんとする恐ろしい邪神だとな」

「大体そのような認識で合っています。闇神様は、光神と月神を酷く恨んでおいでですから。二柱の神が生み出した人族も魔人族も等しく憎いわけです」

「闇神は何をそんなに二柱の神を憎んでおる?」


 地球の神話の神々も妙に人間くさい伝承が多い神ばかりだ。

 ギリシャ神話や日本の神話を紐解くまでも無く、人が神の現し身である事が納得できるような話ばかりである。


「もともと三柱の神は三姉妹だったそうです。闇神様は末妹にあたり、二人の姉神に手酷く虐められていたそうで」

「姉妹喧嘩の延長かよ……」


 そこまで人間臭くなくても良かろうと思う村正だった。

 しかし、そういう恨みは被害者はなかなか忘れることは出来ない類いの恨みだ。闇神様の気持ちも少しは分かるような気がしないでもない。


「それはとりあえず置いておきます。この迷宮戦争というのは、要するに今代の魔王を決める闘争なのです」

「今代の魔王じゃと?」


 魔王は迷宮ごとにいると言ったばかりではないか。

 さすがの村正も少々困惑気味だ。


「多数存在する魔王の中から、真の魔王を決める戦いが迷宮戦争なのですよ」

「首班選挙のようなものか」


 なるほどと手を打つ村正。

 国会議員の中から派閥の力学によらず首相を選ぶようなものと思えば良いのか。


「そのような高尚なものではありませんよ。傭兵団を束ねる長を決める程度のことです、腕力でね」


 それぞれの迷宮の戦力をぶつけあって、最強の魔王を選ぼうというのだ。

 何のことはない、お山の大将を決めるための戦争なのである。


「なるほどのう。それは分かった。じゃが、細かい部分も教えてくれい」

「畏まりました」


 そういうと、居住まいを正して話し出すグラス。


「まずは三柱戦の話からいたしましょう。この世界には、光神、月神、そして闇神様の三柱の姉妹神がおわします。そして、闇神様と姉神二柱は酷く仲が悪い。闇神様は、姉神二柱に対する復讐のために人族と魔人族を害することにしました。そしてその為に生み出されたのが我々魔族です」

「それもどうなんじゃ……?」


 ただの八つ当たりじゃないのかと村正は呆れてしまった。

 直接喧嘩すれば良いのにと。


「その顔は、直接やれば良いのにと呆れていますね?」

「む、分かったか」

「はい。ですが、やはりそこは神々です。直接やり合っても決着はつきません。気は晴れるかもしれませんが。そこで、それぞれが生み出したものを狙うことにしたわけです。それに気がついた姉神たちも慌てました。神同士が争っても決着はつきません。何せ神ですから一時的に倒したように見えても復活しますし、そう簡単には死にません。ですが、人族や魔人族は死ねばそれまでです。もちろん新たに誕生することで数は戻すことは出来ますがね」

「それはそうじゃな。人はしぶといからのう」

「そこで二柱の神は魔族に対抗するために、人族と魔人族の中から強力な存在に加護を与え魔族に対抗させることにしました。それが【勇者】です」


 一度お茶を飲んで口を湿らせるグラス。

 魔王がいれば勇者がいるのはファンタジーではお約束だ。それについては村正も納得するばかりである。


「魔王と勇者の戦いは熾烈を極めました。それでも、二柱分の加護を授けられた勇者が有利なのは否めません。ですが、勇者が勝利したとしても被害が大きくなりすぎることに慌てたのは姉神です。闇神様は被害が大きくなればそれで良いので、相打ち上等ですからね。そこで姉神はこの戦いに条件を付けることにしました」

「条件じゃと?」

「はい。まずは200年に1度行うという時期の制限です。戦い続ければ、人と魔人の数は減少し続けますからね。決まった時期にのみ行うということにしたのです」

「良くそんな条件を呑んだのう、闇神は」

「もちろん無条件で飲んだわけではありません。もし魔王が勝利した場合、次の200年は魔族が有利な世界にバランスを傾けるということにしたのです。暗黒の二百年期と呼ばれる魔族が跋扈する時代ですね。姉神たちも泥沼の戦いは嫌でしたから、渋々その条件を呑みました。元々勇者の方が加護的に有利なので、自分たちが勝つという思いもあったのでしょう」

「なるほどのう。その200年の間は闇神も溜飲を下げられるというわけか」

「左様です。さらに、姉神たちは戦場をも限定しようとしてきました」

「そうか、それが迷宮であり魔王の居城となるわけか」


 今代の魔王とやらが決まるとそこがラストダンジョンとなり、勇者たちとの最終決戦の場となるというわけだ。


「お察しの通りです。しかし、それでは闇神様は人族と魔人族に手を出すことが難しくなります。そこで闇神様は憎き姉神たちと交渉し、譲歩を引き出しました。それが【協力者】の存在です」

「ここで出てきたな。協定とは神同士の協定なのじゃな」

「はい。高位の魔族が戦場を迷宮に限定されてしまうので、下位の魔族を迷宮から溢れ出させて人を襲わせるのはよしとすること。また、人族と魔人族の中から魔族に協力する者が現れた場合は、自由に行動させることを了承させたのです」


 これが俗に「協定」と呼ばれているものだ。

 人と魔人が自ら同族を裏切り破壊工作をするのはその個体の行動であるから、魔族とは無関係であると例外扱いされるのである。

 よって、迷宮戦争に参加する魔王は【協力者】を持つことが必須条件なのだ。

 闇神を崇める【闇神教】が誕生した背景はここにあったのである。


「同族同士を殺し合わせることによって人や魔人共を嫌な気分にさせる目的もあるらしいのじゃ!」


 何だか偉そうな魔王様。

 言っている中身は最低だが。

 可愛らしい容姿とのギャップ萌か?


「どんな相手でも引き込めば良いというものでもありません。あまりに弱いものを協力者に定めると、単なる数合わせだと魔族の中で評価が下がります。だから、引き込むならそれなりに戦力になる人間でないと困るわけです」

「なるほど。それで儂らに目を付けたんじゃな?」

「そうなのじゃ!」


 ぴんっとカヨウの耳が立つ。


「魔族をも凌駕する圧倒的な強さ。敵を容赦なく葬り去る冷酷さ。そして、その魔素を我が物として自らを強化するという魔族の技を扱う才能。お主は迷宮戦争のために生まれてきたような人族なのじゃ!」

「褒められておると思って良いのか?」

「勿論なのじゃ! というわけで、我の協力者になってたも!」


お読みいただきありがとうございます。

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