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探索者は異世界でも宝を求む  作者: 葉月風都
第3章 いざ、獣魔の迷宮へ
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第2話 -魔物を倒そう-

<第2話 -魔物を倒そう->




地下一階:


「これが迷宮か」


 入り口から続く階段を下りきった村正は、天井を見上げて感心していた。

 そこはもはや異世界であった。


 天井はあるものの、全てが植物に覆われている。

 もしかしたら植物でこの迷宮は形作られているのかもしれない、そう思わせるほどだ。

 木々が生い茂り、蔦が這い回り、雑草が生い茂る。

 鳥の声が聞こえ、虫の気配がする手付かずの自然。

 そんなイメージである。


「現世で入り込んだ迷宮とは趣が違うのう」

「獣魔の迷宮と言うくらいでございますれば。おそらく迷宮ごとに違うのでしょう」


 深夜の言う通り、それぞれの迷宮で主に生まれる魔物の生態に併せて環境は激変する。

 例えば「蟲魔の迷宮」であればアリの巣のような土壁の迷宮であるし、「屍鬼の迷宮」であれば石積みの迷宮らしい迷宮である。


「まあよいわ。索敵は頼むぞ」

「お任せ下さい」


 さすがに先遣隊が掃除してくれただけあって、魔物は少なかった。

 この二日の間にスポナーによって生み出された魔物が少量いただけである。


「先遣隊はどこまで潜ったかのう?」

「さすがに分かりかねますが、これまでの最高到達階数は一週間かけて地下八階だそうです。それを考えると、せいぜいが三階というところでは無いかと推測いたします」

「そうか。では、どんどん行くとしようかのう」


 依頼を受けた時に渡された迷宮の地図を見ながら下りの階段を目指して進む二人。

 その時だ。


「村正様、巨大な魔素反応があります」

「どこじゃ?」

「この先を右へ少し行ったところに小さな泉があります。おそらくはそこかと」


 それを聞くと、村正は駆け出す。深夜もそれを追う。

 ほんの僅かの時間で小さな泉に辿り着くと、果たして魔物が生まれようとしていた。


「アレが【スポナー】かよ」


 それはまるで檻のようであった。

 球形の青白い魔素の塊を、金網状の赤黒い魔素の檻が囲っている。

 その檻の扉が開かれ、猿のような魔物が産まれ落ちる。


「世にも奇妙な光景じゃな」

「そんなことを言っている場合ですか?」


 通常、スポナーは一匹から十数匹までの間でランダムに魔物を生み出す。

 ランダムに決定された数の魔物を産み落とすとスポナーは別の場所に移動し、またランダムに魔物を産み出す。


 その移動の間にタイムラグが生じるのだ。

 タイムラグは、生み出した魔物の数が多ければ多いほど大きくなる。

 これまでの調査検証によって、「生み出した魔物の数×1時間」が次回出現までのラグになることが分かっている。


「どれ、何匹産むのじゃろうな?」

「少なくとも一匹では無いようですね。消えませんので」


 産み落とされたばかりの猿型の魔物は、二人を視認すると本能のままにいきなり襲いかかってきて村正に切って落とされる。


「そうじゃ、スポナーの説明を聞いた時から試してみたかったんじゃ」

「村正様?」


 良いことを思いついたという風に満面の笑みを浮かべる村正。


「メガロ、喰らえ」


 主の呼びかけに応じて、メガロが深夜の収納空間から現れる。

 そして、一瞬で巨大化するとその巨大な顎でスポナーを喰らった。


「さて、移動する前に存在を『喰われた』場合はどうなるんじゃろうなあ」


 如何にも面白そうに笑う村正。

 さすがの深夜も絶句する。


 メガロはスポナーという高密度の魔素を喰ってご満悦のようだ。

 そのメガロを収納空間に戻すと、村正は猿の魔石を回収して歩き出す。


「いきなりスポナーに出会えたは僥倖よな。行くぞ、深夜」

「はい、村正様」


 果たしてメガロに『喰われた』スポナーはどうなるのか。

 それは誰にも分からない。






地下二階:


 一階と同じように大自然が地下に構成されている。


「この明るさはどうなっとるんじゃろうなあ」


 この「獣魔の迷宮」には何故か地下であるのに光が存在するのである。

 地上の昼夜に合わせて明るさが変動するらしいが、どういうメカニズムなのかは分かってはいない。

 また、迷宮によっては闇に閉ざされているものもあれば、常に夕暮れ時だったりするものもあるそうなので、異世界だと考えておくのが良いようである。


「では、一気に三階へ向かうとするかのう。そうじゃ、さっきのように側で魔素の動きを感知したら教えてくれい」

「承知いたしました」


 通路を軽く駆けて行く二人。


 大自然そのものに見えるこの場所だが、実は「迷宮」という名に相応しく通路や扉が存在する。

 新たに出現したと思われる獣型の魔物が襲いかかってこようとするが、すれ違いざまに振るわれる刀の一撃であっさりとその命を散らしていく。


「上層階の魔物は弱いんじゃな」

「はい。迷宮の場合は、奥へ進めば進むほど魔物が強力になっていくのが基本です」


 これはどの迷宮にも共通した仕様である。


 この「獣魔の迷宮」の場合は、地下八階で中級上位の魔物が当たり前のように出現するようになるため、それより下へ進むことができなかったという事情もあったようだ。

 迷宮という性質上、大軍を送り込んで数に物を言わせて突破するという作戦が使えないので、少数の精鋭を送り込んで質で攻めるしか無くなってしまう。


 幸いと言うべきか何と言うべきか、強力な魔物ほど迷宮内に留まる性質が強いため、上層階での間引きをしっかり行えば溢れ出すことは防げるのであるが。


「八階で中級か。上級の魔物とやらに会うためにはどこまで下れば良いのかのう?」

「そればかりは何とも。最下層が地下何階なのかも分かっておりませぬゆえ」

「儂らが初めての到達者になれば良いという事じゃなあ」


 剣呑な笑みを浮かべる村正。


「この世界に来てから、どうも好戦的でいかんなあ」

「村正様は現世でも十分好戦的でございましたが?」

「そうじゃったかのう?」

「はい」


 断言されて苦笑する村正であった。


 深夜に促され、この階層でもスポナーを発見することが出来た村正。

 今度はメガロに喰わせたりはせず、魔物を生み出す速度や生まれる魔物の種類などを観察することに。


「こうやってスポナーの周りを固めて生まれる度に殺せば済む話ではないか」

「おそらくそうしているのだと思われます。が、先ほどのように同時に四匹生まれたりしますと大変でしょう」

「弱い奴らはそうかもしれんのう」


 スポナーが同時に産み落とす魔物の数は最大四匹。

 生み出す間隔は一定ではなくランダムであり、生み出す魔物も系統は似通ってはいるが同じとは限らない。

 この迷宮も「獣魔の迷宮」と呼ばれてはいるが、獣型しか生まれてこない訳でもない。


「何より困るのは『スポナーそのものは破壊できない』という事じゃな」


 魔物を殺した後、スポナーに対して攻撃を加えて実験してみたのだが、破壊することは出来なかった。物理攻撃も深夜によるエネルギー兵器の攻撃でもだ。


「そう考えますと、メガロの概念攻撃は破格の手段であると言えますね」

「そうじゃな。現状では唯一のスポナー破壊手段と言えようか」


 このことが知れ渡れば、おそらく村正は国を挙げての大騒動に巻き込まれることになるだろう。

 それほどメガロの概念破壊は埒外の手段なのだ。


「メガロに喰わせてしまっては魔物が生まれなくなるかもしれんからな。飯の種が無くなるわけじゃから困るじゃろう?」

「一理ある……のでしょうか」


 笑って言う村正に苦笑を返す深夜。


「まあよいわ。とっとと下へ参ろうか」


 三階へ続く階段を降りる二人。






 その二人を見つめる人影が一体、ゆらりと姿を現す。


「厄介なものを……。スポナーを生み出すには多額のコストが必要ですからね。簡単に破壊されてはたまったものではありませんね」


 その人影は一人呟くと、現れた時と同様にゆらりと消えていった。


お読みいただきありがとうございます。


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