第1話 -迷宮へ行こう-
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今日からまた7日間連続更新で第3章終了です。
<第1話 -迷宮へ行こう->
遺跡調査に出発してからちょうど一週間後。
村正たちはアールファの街に帰還した。
「遺跡調査は、どうでしたか?」
ブリジットがぎこちないながらも笑顔で話しかけてきた。
今日もカウンターに乗っかる巨乳が目に眩しい。
ギルドにいる男性ハンターもさりげなくチラチラと目をやってしまっている。
仕方の無いことだ。
だって男だもの。
それを見て、横で座っているアリスがさりげなく舌打ちしている。
「まあ、あんなもんじゃろ。古代文字の実地データが取れたから、解読することにしようかのう」
「もし、旧魔法文明期の文字が解読できるようになれば、それは国を揺るがす大発見に、なると思いますよ。ムラマサさんたちの名前は、王国の学術史に永久に残ります」
「かかっ。そうなるとよいがのう」
勿論、今すぐにでも対応表にして発表することは可能だ。
即座に世紀の大発見である。
だが、村正にはそんなつもりは毛頭無い。
自分の発見は「自分のもの」だからだ。
「(旧魔法文明の遺跡を儂が全て発掘し尽くしたら、対応表を発表してやってもよいがのう。それまではお預けじゃわい)」
どこまでも利己的な判断であった。
もちろん湖底からの侵入やメガロの事は秘密である。
というか、そんな話は出来るわけがない。
それくらいの分別は村正にもあるのだ。
「そうだ、ねえムラマサさん」
「なんじゃ、アリス殿」
ちょうど話が一段落したと思ったのだろう、アリスが話しかけてきた。
「二人がいない間に、『間引き』依頼が掲示されたんですよ」
「間引き?」
ここでいう間引き依頼とは、迷宮に湧く魔物の討伐依頼のことだ。
スポナーによって迷宮内で無限に生み出される魔物は、放っておくと迷宮の外に漏れ出てくる。
不思議なもので、ある一定量を超えるまでは迷宮内で生み出された魔物は迷宮外に出ようとはしないのだ。その代わり、一定数を超えると迷宮の外に出てきて危険を振りまくのだが。
よって、定期的にハンターに依頼が出されて、迷宮内の魔物の数を減らすのである。
「なるほど。間引きとは言い得て妙じゃな」
「黒角馬や赤熊を簡単に討伐できるお二人なら、おそらく実入りの良い依頼になると思いますよ?」
にっこりと笑うアリス。
「遺跡も体験したしのう。迷宮とやらも一度試しておいたほうがよかろうなあ」
「そうですね。その方が宜しいかと存じます」
「では、その依頼を受けることにするわい。手続きを頼むぞ」
「はいはい。お任せ下さい」
こうして二人は遺跡調査に続いて、この世界にやってきて初の「迷宮」に挑むことになったのである。
ここで、迷宮についてもう一度語っておこう。
迷宮とは魔物の母である。
迷宮内に無作為に現れるスポナーからは魔物が生み出される。
生み出される魔物は、迷宮によって傾向が異なる。
獣型の魔物が多く湧き出す迷宮があれば、虫型ばかり湧く迷宮もある。中には、まるでアリの巣のように単一種族ばかりが湧く迷宮も存在するという。
迷宮がいつ、どうして生まれたのか知るものはいない。
少なくとも遙か昔より存在し、その時代に生きていた者たちの生活を脅かしていたのは確かなようだ。
ある者は、天災だと言った。
ある者は、生物が増えすぎないための神の意志だと言った。
ある者は、人間を滅ぼそうとする闇神の悪意だと言った。
だが、誰も本当のことは知らない。
そして、迷宮を消滅させる方法を知る者もいない。
迷宮の最奥に主と言うべき魔物がいて、それを滅ぼすことで迷宮も滅びるという噂がまことしやかに囁かれている程度だ。
だが、今の時代、迷宮の最深部に辿り着くようなハンターはいなかった。
スポナーによって生み出された魔物が迷宮内に止まるのは主を守るためだという説が根強く信じられているのはそのせいであろうか。
迷宮を滅ぼすことが出来たならば、名誉も財も思うままだ。
「面白いのう」
「左様でございますか」
「迷宮を滅ぼすか。分かりやすい偉業じゃろう?」
「悪目立ちしてしまいそうですが?」
「儂がするとは言っとらんじゃろう」
村正と深夜は、馬に乗って街道を走っていた。
迷宮に関しての情報をギルドで手に入れた後、街で駿馬を手に入れたのだ。
金にあかして、軍馬になる予定だった馬を買い入れたのである。
ちなみに村正の乗る馬は栗毛で「サイレンス」、深夜は鹿毛で「エア」と名付けられていた。
通常、馬で移動する場合は速歩で時速14km前後。
馬の事も考えて休憩しながら移動するのが常であるため、無理をさせずに移動しようとすれば一日80km程度が限界である。
二人の乗る馬は、馬喰曰く「一日100kmは行ける」とのことだった。
人間の歩行速度を時速4kmで計算すれば、三日かかる距離を一日で移動することになるので圧倒的に早い。
しかし、二人は人間の限界を超えて移動し続けられる。
馬など必要ないのではと思わないでもないが、それも一つの「アリバイ作り」な訳だ。
「先行部隊がすでに減らしきっているかもしれん。辿り着いたら依頼は完了なんてことも有り得るかもしれんなあ」
「それはそれで村正様の望むところでは?」
「そうかもしれんし、そうでないかもしれん」
正直村正は迷っている。
魔物と戦う、そのこと自体はむしろ今の村正にとっては望むところだ。
しかし、他にも依頼を受けたハンターが迷宮に入っているという事態が村正にとっては邪魔なのである。
とはいえ、自分以外のハンターが戦っているところを直接見たことはないので、見てみたいという気持ちが無いと言えば嘘になる。
つまり、もやもやしているというわけだ。
「まあ、馬で二日の位置だと言っとったからな。まだ迷宮に入って二日。掃討し終えてはいないじゃろうて」
「できる限り急ぎますか?」
「馬に無理をさせない程度にな」
一晩夜営して、翌日の昼前には目的地である「獣魔の迷宮」へと辿り着いた二人。
迷宮の入り口から少し離れたところに、馬や馬車が繋がれている。
定期的に魔物の間引きを行うために、ギルド主導で簡易的な宿舎が作られているからである。
迷宮は「広い」か「深い」かのどちらかであることが多い。勿論「広くて深い」ことも往々にしてあるのだが。
その為、一日や二日で間引きは終わらないのが常識なのだ。
となると、荷物や移動手段を管理したりする必要が出てくるわけで、その部分をギルドから派遣される職員が受け持っているのだ。
「新たに依頼を受けられた方ですか?」
「そうじゃ。儂は村正。此奴は儂の従者で深夜じゃ」
ぺこりと頭を下げる深夜。
ほぼ手ぶらの二人を見て、声を掛けてきたギルド職員の男は訝しげな顔をする。
「先発隊の皆さんは二日前に迷宮に入っていますので、上層部はおそらく間引きが終了しているかと思います」
「そうかそうか。では、儂らもとっとと追いつくとするかのう?」
「御意」
サイレンスとエアを職員に任せると、早速二人は迷宮へ潜っていく。
ギルド職員は不安そうな面持ちで二人の後ろ姿を見送ったが、二頭の馬に催促されて自分の職務を遂行するべく宿舎へと戻っていった。
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