第6話 -久しぶりの釣りを楽しむ-
釣りっていいですよね。
釣り〇〇三平とかつい読んじゃいますw
<第6話 -久しぶりの釣りを楽しむ->
円柱の並んだ石畳の道を遺跡へ向かう二人。
村正の足取りも軽いようだ。
「なんじゃ、明かりが常設されておるわけではないのか」
「村正様、これを」
深夜がヘッドランプ付きのヘルメットを取り出す。
村正の愛用のヘルメットである。
「おお、準備がええのう」
「勿論でございます」
ちなみに深夜は両手に懐中電灯を持っていた。
この懐中電灯、実は出力を上げて光を収束させるとレーザーブレードになるという便利グッズであった。
「もう少し明るいとええんじゃがのう」
「照明を飛ばしますか?」
「そうじゃな。そのほうがええじゃろう」
懐中電灯をしまった深夜が、空飛ぶ発光体を数機飛ばす。
見た目はまさにUFOだ。
通路が明かりに照らし出され、周囲がはっきりと見えるようになった。
「おお、ええのう。石積みの重厚感。ブロック1つ1つが形といいサイズといいしっかりと揃っておる。発達した文明だったじゃのう」
目を輝かせてはしゃぎ出す村正。
基本的に遺跡の中は通路と玄室で構成されており、神殿のような見た目に反して地下へと掘り進められていた。
調査隊によって見取り図が作成されているほどだ。別段魔物や仕掛けに遭遇するでもなく、二人は問題なく最奥部へ到着することができた。
「目を引いたのは古代文字かのう。分析は可能か?」
「現代と使われている文字や文法が異なっていますので今すぐとは行きませんが、かなりのサンプルを入手しましたので明朝までには可能かと思われます」
「そうか。急がんでも良いが、頼むぞ」
「お任せ下さいませ」
深夜を発掘して後、この万能性のお陰で現世の村正は数々の秘宝を手に入れることが出来たと言っても過言ではない。
「しかし不思議じゃのう」
「何がでございますか?」
「ほれ、見てみい」
深夜から受け取って持ち歩いていた「異界の瞳」が、まだこの先に宝があるぞと床の一点を見つめて動かないのだ。
ここが最奥部であるにも関わらず、だ。
「床を破壊してみますか?」
「元に戻すのが面倒じゃろう。一応ギルドの管理下にあるのじゃろうから、破壊はまずかろうて」
「となると、隠し通路の線を洗ってみるしかなさそうですね」
確かに、この遺跡を作ったものも毎回床を破壊して移動しようと思ったわけではなかろうから、どこかに通路があるのはある意味当然とも言えた。
仮にそうでないとすれば、残る可能性は1つ。
二度と掘り返すつもりがなかった場合だ。つまり、破壊することが出来なかった危険な代物を、地下深く封印するつもりで埋めた場合などである。
しかし、その場合は神殿などこれ見よがしに建てる必要はないのだが。
「どうじゃ? 儂は見つけられんかったが」
「私もです。少なくともスイッチやレバーのようなものは発見できません。特殊な認証方法を使用している場合は手が出せませんし」
「そうじゃのう。魔法とやらが関係しておればどうにもならんしな」
この世界でいうところの魔法は村正たちには使うことが出来ないため、移動に魔法が必要だったりする場合はどうにもならないのである。
「まあ、最悪遺跡ごと破壊してしまうことも出来るわけじゃしな」
「最終手段でございますね」
「他に入り口が無いかどうか検討してみる必要はあるのう。かかっ。ワクワクしてきたのう!」
今も村正の頭の中ではこの遺跡の構造がシミュレートされているはずだ。
久しぶりに挑む遺跡調査に村正はハイになっている。
「ひとまずキャンプへ戻りましょう、村正様」
「うむ、そうじゃのう。時間はたっぷりあるわ」
キャンプに着くと、とりあえず健康診断と補給である。
遺跡には未知のウイルスや「呪い」と言われるような不可思議なエネルギーが存在していて侵入者に害を及ぼすことがあるため、習慣として行うのだ。
診断の結果はシロ。問題なしである。
「さて、息抜きと食糧確保を兼ねて湖で釣りでもするかのう」
「実は楽しみなのですね、村正様?」
「実はな」
にかっと笑う村正。
やれやれというように肩をすくめてみせると、深夜は釣り具一式を取り出す。
「では、参りましょうか」
湖に向かって斜面を一気に駆け下りる。
もちろん道などないが、無限のルートの中からそれぞれ最適解を導き出して下へ下へと下っていく二人。
湖面に降り立つと、深夜は小さなボートを取り出して湖に浮かべる。
二人を乗せたボートは静かに動き出すと、岸から少し離れたところで止まる。
「まずはこの辺りから攻めてみようかのう」
軽く竿を振ると、アタックを開始する。
餌は確保していないので、とりあえずはルアーをセットしている。
「儂は深みを狙ってみるわい」
「では私は浅めを」
それぞれがリールを回しながらアクションを始める。
「ヒットじゃ!」
村正の仕掛けに獲物が食いついたようだ。
おそらくこの世界では初めて使われるはずのルアーに免疫のない魚があっさりと食いついたのだろう。
釣り上げられたのは、40cmほどの鱒に似た魚だった。
「見た目は美味そうじゃな」
「後で焼いて食してみましょう」
その後も順調に釣果は増えていった。
「もっと大物がかからんかのう」
「釣り上げた魚を生き餌にしてみてはいかがですか?」
「おお、それは面白そうじゃな」
村正はそういうと仕掛けを変えて、30cmクラスの魚を餌につけて湖へと放ってやると水に戻された魚は勢いよく固定へ向かって泳いでいく。
「アレに食いつくようなら巨大魚じゃなあ」
「ファンタジー世界ですからいるのではありませんか?」
その時、唐突に生き餌の動きが変わる。
まるで何かから逃げ出しているように一直線に横へ向かって走る。
「何かに狙われとるな」
「巨大魚ですね」
船上でそんな話をしていると、竿が一気に引きこまれる。
明らかに大物の気配であった。
「コイツは大物じゃ。深夜、船を頼む」
「御意」
魚の動きに合わせて、リールからどんどんと糸が出て行く。
深夜が船を巧みに操り、魚の動きに合わせて走る。
「凄まじいパワーじゃな。カナダ沖でカジキ釣ったときにもひけをとらんわい」
昔を思い出しながらロッドを操作する村正。
巨大魚は、とにかく上手く手綱を握って泳ぎたいだけ泳がせる。いずれ疲れて釣り上げることが出来るようになるからだ。
「強引にあげてしまっても良いのでは?」
「それじゃあつまらんじゃろう。久し振りの釣りじゃし」
村正は結構釣り好きであった。
しばらくすると引きが弱まってきたので、頃合いかと糸を巻き上げる村正。その手応えは間違いなく大物の予感である。
「これはこれは!」
水面にゆらりと姿を現したのは3mはあろうかという巨大な魚であった。
黒光りする白い斑紋を持つ硬質の鱗と八基のヒレ。
どうみても巨大なシーラカンスである。
「シーラカンスに見えるがのう?」
「外見的特徴は一致致します。ラティメリアですね」
「こんな湖にか?」
「外見的に似ているだけで別な生命体と推測します」
「それもそうか。とりあえず締めて持っていくか」
村正の指示通り、深夜が水面に浮かんだシーラカンスのような魚のえら蓋の上から刀を振るい、一気に骨までを断ち切る。
シーラカンスと違ってこの魚には骨があるようだ。
本来大型の魚であればこんな締め方は無理だが、深夜の技量と武器を持ってすれば造作もないことだ。
「よし、ちと早いが十分楽しんだ。ひとまず戻って飯にするか」
日も陰り、そろそろ夕食でもいい頃であろう。
ベースキャンプに戻ると、即席のかまどに火を焚き調理を始める二人。
そんなとき、シーラカンスもどきを捌いていた深夜が村正を呼ぶ。
「魔石と……なんじゃそれは?」
「指輪かと」
胃袋からでてきたのだという。
飲み込んだままになってしまったのか。
「ハンターの落とし物か何かか?」
「いえ、ここを見て下さい」
深夜が指さしたのは、指輪の内側である。
そこには、だいぶ風化して摩り切れてしまってはいるが確かに何らかの紋様が刻み込まれていた。
「これは……」
「はい。先ほどハイドロ遺跡で見たものと同じかと存じます」
村正は、立ったまま顎に手を添えて軽く首をひねるいつもの考え込む時のポーズだ。
湖底にいた魚の腹から、古びた指輪。
遺跡と同じ紋様。
「なるほど、水中か。遺跡ばかり探しても無駄なわけだ」
「御意」
「よし。明日、湖に潜るぞ」
実際のところ、この世界では特殊な魔法を持たない限り水中での活動など出来はしない。
ましてや、魔物がうようよと泳ぐ湖の底だ。命が幾つあっても足りはしない。
だからこそ見過ごされていたのだろう。
「まずは腹ごしらえじゃな。腹が減っては戦は出来ぬ、じゃ」
マスは塩焼きにして美味しく頂いた。
また、シーラカンスもどきは現世のシーラカンスと違ってマグロのように脂がのっていて実に美味であったそうな。
お読みいただきありがとうございます。




