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探索者は異世界でも宝を求む  作者: 葉月風都
第2章 はじめてのいせきちょうさ
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第5話 -この世界で最初の遺跡へ-

ようやく村正さんの念願叶います。


なんて言うか、そこにいれば幸せみたいな。

水族館の水槽の前でぼーっとしてたら時間過ぎるみたいな?

<第5話 -この世界で最初の遺跡へ->




 素材の売却を終わらせてカウンターへ戻ってくると、アリスがそっと耳打ちしてくれる。


「ブロンズランクの試験は通ったことになってるから、後は依頼の達成数20だけ。そのうち10はさっき買い取った素材の納品で終わったことにしてあるから、どんな簡単な依頼でもいいから、残り10クリアしてきたらすぐにシルバーランクよ」


 なるほど、さっき言っていたサービスとはこのことじゃったかと合点する村正。


「ありがたい。では残り10目指して励むとするかのう」


 せっかくのお膳立てだと、有り難く頂戴することにした村正は、深夜と相談の上、街の中や周辺部で達成できる依頼ばかりを10件選び出す。


「これをまとめて10件頼む」

「これまた地味っぽいのばかり選んだわね」

「それもまた新米ブロンズハンターにお似合いであろう?」


 村正とアリスは互いにニヤリと微笑む。

 何というか、「お主も悪よのう」「いえいえ、お代官様には敵いませんわ」的な笑いであった。


「では、行ってくるとするかのう」

「ええ。ほどほどに頑張ってちょうだいな」


 笑顔で手を振るアリスに手を振り返して、二人はギルドを出て行った。




「済みませんねえ。年寄り一人じゃなかなか屋根の修理なんてできませんで」

「いやいや、構わぬよ。困った時はお互い様じゃよ」

「ありがとうねえ。ほら、このお菓子持っておいきよ」


 独り暮らしの老人宅の屋根の雨漏りを修理したり。




「いやあ、まさかあんなところに蜂が巣を作るなんて思っても見なかったのよねえ」

「難儀したであろう。蜂は危険じゃからなあ」

「そうなんだよねえ。そうだ、ウチで穫れた芋だよ。持っていきなよ」


 畑のそばにできた蜂の巣駆除をしておばちゃんに芋をもらったり。

 町中で出来る便利屋紛いの仕事で一気に依頼達成数を消化する村正。


 翌日には周辺部に生える薬草を摘んだり、何かの材料に使うらしい木を切り出してきたりとこれまたハンターっぽくない仕事で目標の10個の依頼を達成してしまう。


「おめでとうございます。これで目標の依頼数を達成しましたので、シルバーランクへの昇格を認めます」

「おう。ありがとうよ」


 ギルド内の雰囲気が一瞬ざわめくが、先日の騒ぎがすでに広まっていたことと村正たちが中級の魔物二匹分の素材を持ち込んだことが知れ渡っていたため「そんなこともあるか」とすぐに静まっていった。


「シルバーランクに関しての説明は、またブリジットがしますので」

「ふぇっ!?」


 相変わらずのブリジットであった。

 シルバーランクに昇格することによって変わるのは大きく言って2つ。


 1つ目は、シルバーランクの依頼が受注できるようなること。


 シルバーランクから雑用依頼が消えて、魔物の討伐依頼や依頼人の護衛任務が主な内容になる。また、ブロンズランクでは難しい素材の採取依頼もここに含まれる。



 2つ目は、申請することによってシルバーランクの遺跡や迷宮の探索を行うことが可能になること。


 遺跡は文字通り古代文明や旧魔法文明の「遺跡」である。

 基本的にはすでに調査済みなので、学術目的の調査が主になる。ただし、稀に隠し通路や扉が発見されることもあるので油断は出来ない。隠し通路の先にお宝が隠されていたなどということもあるのだ。


 そして迷宮は、「魔物の母」である。

 迷宮はいつから存在しているのか、誰が生み出したのかが全く不明な場所だ。

 そこかしこに魔物を生み出すスポナーが出現し、不定期に魔物を産み落とす。

 どうやったら迷宮そのものを消滅させることが出来るのかは未だ解明されておらず、スポナーによって産み落とされた魔物が溢れ出ないように定期的に迷宮に討伐隊を派遣することで対処しているのだ。

 一説によれば、迷宮の主と言うべき存在がどこかに存在し、それを滅ぼすことによって迷宮も滅びるのだとも言われているが真偽のほどは定かでは無い。


「というわけで、シルバーランクからは大幅に自由度が上がるのですう」


 毎日顔を合わせて話しているせいか、少しずつブリジットも普通に話してくれる様になってきた。やはり人間、慣れである。


「なるほどのう」


 遺跡と迷宮の下りで村正の目がきらりと光る。

 口元には楽しげな笑みが浮かんでおり、村正の気分の高揚具合がよく分かる。

 待ち望んでいた探検、冒険がついに姿を現したのだから。


「報酬も増えますが、その分危険も大きくなるのでますます用心してくださいねえ」

「自己責任じゃからな。そのへんは任せておけい」

「村正様は私が御守りしますので大丈夫でございます」


 いつも冷静に村正の側に控えている深夜は、ブリジットやアリスのみならず、アールファ支部に出入りする全てのハンターの謎であった。

 深紅の瞳が目立つ、美しい少女。

 村正の奴隷だ(ということになっている)ということしか分からない謎の幼女。


「早速どこか遺跡に潜ってみなくてはいかんのう。ブリジット嬢ちゃん、ここから一番近い遺跡はどこじゃな?」

「遺跡ですかあ。ちょっと待って下さいねえ」


 ごそごそと「遺跡」と書かれたファイルを取り出してページをめくる。


「一番近いのは南の森の向こう、大きな湖の畔にあるハイドロ遺跡ですねえ。今から400年ほど前の魔法文明期の遺跡ということですう」

「よし、ではそこへ行ってみるとしよう」

「ふええ!? すぐにですか!?」


 ランクアップした途端に遺跡探索に向かうようなハンターは基本的にはいない。

 なぜなら儲からないからだ。

 生きるためにハンターになる者がほとんどであるからして、儲からないことには手を出さないのだ。


「その為にここまで来たんじゃ。遺跡が儂を待っておる!」

「そう仰ると思いました。ブリジット様、その遺跡に関する資料を閲覧することは可能でございましょうか?」

「はいー。手数料はかかりますが可能ですう」

「村正様。みっともないので落ち着いて下さい。情報収集は遺跡調査の基本だと常々ご自分で仰っていたではありませんか」

「おお、すまんすまん。楽しみすぎてはしゃいでしもうたわい」


 落ち着いた村正は、深夜と共に手数料を払ってギルドの資料室でハイドロ遺跡に関する資料を閲覧することにしたようだ。

 街から一番近い遺跡である。もう調査され尽くしていると考えるべきだ。

 だが、この世界で初めての遺跡調査だ。

 村正は自信家ではあるが無謀な男では無い。現世で生きていた時も準備は入念に行うタイプであった。


「この資料に関しては全て記録しました」

「うむ。手垢のつきまくった遺跡じゃが、この世界で初めての調査じゃ。ある意味今後の試金石となるわけじゃからのう」


 遺跡にも傾向のようなものが存在する。


 トラップ型。

 謎かけ型。

 迷路型。

 守護者型。


 作りや仕掛けにも年代や文明発展度によって共通した部分や違いがあるため、傾向と対策は重要なのだ。


「何より、自分の足で遺跡を巡るんじゃ。楽しみで仕方ないわい」


 子どものように目をキラキラさせて語る村正であった。




 さて、翌日。

 前日のうちに食料やら何やらを買い込んで、調査へ向かう準備を済ませていた村正たちは遺跡へ向かってアールファの街を出発した。

 目的地までは徒歩で約二泊三日。

 距離でいうと90km程だ。


「急ぐとするかのう」

「御意」


 90kmであれば、二人の能力を持ってすれば2時間で着いてしまう程度だ。

 そう考えると、村正の身体能力はまさに異常である。

 肉体の再構成によって能力が上がっただけでは説明がつかないのだが……。


 それはさておき。

 深夜の索敵能力を使用して、万が一にも人に会わぬよう注意しながらひたすら高速で目的地めがけて進んでいく二人。


「(村正様におかれましてはあまりに異常。ヒト種としての限界を超えすぎでございますね。【魔素】が流れ込んでいることと関係があるのでしょうが。まあ、主が強くあることは従者にとっては誇りでございますから良いのですが)」


 村正と併走しながら深夜は思う。

 深夜にとって村正が人であろうが魔物であろうがそんなことは瑣事なのである。


 南の森にも魔物は勿論棲んでいる。

 が、高速で移動を続ける獲物を正確に襲うことは魔物にとっても難事であるらしく、二人は魔物達を横目で見ながら木々を縫うようにして走る。


「かかっ。さすがの魔物も儂らを襲おうとはせんようじゃなあ」

「この速度では無理もありませぬ。もっと襲いやすい獲物などいくらでもいるでしょう」


 この速度域でも普通に軽口を交わしながら二人は無人の野を行くが如く駆け続け、きっかり二時間後には遺跡を見渡せる湖の畔へと到着していた。


「ほうほう、あれがハイドロ遺跡かよ」

「そのようですね」

「シチリアのエルコーレ神殿跡の円柱のようじゃな」


 円柱の上に平らな皿が載ったような石造りの柱が建物の周りをぐるりと囲んでいる。

 だいぶ風化している部分も見受けられるが、それでも風雨に耐えて永い年月を耐えてきた風格と荘厳さは些かも失われてはいない。


「とりあえず、遺跡のそばまで行ってベースを造らねばならんな」

「承知しました」


 湖を眺めながら、ぐるりと回り込んで遺跡へ近づいていく。

 湖面がきらきらと太陽の光を反射して輝いているし、ときおり魚が跳ねるのか、水面に波紋が広がっている。


「魚影が濃いようじゃな」

「水棲の魔物も存在するそうですので、後でちょっかいをかけてみるのもよろしいかと」

「ほほう。釣りも久しぶりじゃし、良いかもしれんのう」


 何故に水棲の魔物=釣りとなるのか、村正よ。


 遺跡の側まで緩やかな坂を登っていくと、やはり何度も調査されただけのことはあってキャンプ地となりそうな、石のブロックに囲まれた平らな場所があった。これ幸いとそこを使うことにした二人。


 深夜が収納空間から大きめのテントを取り出す。

 後はロープをペグで泊めれば完成である。


「うむ、楽で良い」

「お役に立てて何よりです」


 情緒もへったくれもない。

 テントのみを残していくのだが、不届き者が現れないとも限らないので、小さい蜂型の飛行メカを数機哨戒させておく。

 悪事を働こうとしたら、問答無用で麻痺させておくように設定する。


「では、参ろうかの」


お読みいただきありがとうございます。


良ければ評価等もろもろお願いいたしまするm(._.)m

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