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探索者は異世界でも宝を求む  作者: 葉月風都
第2章 はじめてのいせきちょうさ
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第4話 -街を散策しよう-

<第4話 -街を散策しよう->




「さて、どうするかのう」

「まずは街の様子を把握するのが先決かと存じますが?」

「じゃよなあ。まあ、今日の内に回っておけば後々楽か……」


 如何にも面倒くさそうに語る村正。


「私一人で確認してきても構いませんが?」

「いやいや。こういう基本的な事も久しぶりじゃて」


 二人はメインストリートから順番に街を探検し始める。

 店の位置や売り物、施設や兵士の配置状況、周辺部の畑の管理状況から防壁の痛み具合まで子細に記録していく。

 勿論深夜が。


「まずまずの広さじゃのう」

「そうですね。現代ではせいぜいが市町村の町でございますが」

「現代と比べても仕方あるまいよ。中世的には十分大きな街じゃわ」


 日も暮れかけてきたので、当座のねぐらを探すことにした二人。


 メインストリートの高そうな宿は一先ず避けて、上中下のランクで言うと中を探すことにする。

 露店を冷やかしながら評判を聞いていくと、一本裏の通りの「森のふくろう亭」という宿が飯も美味いしお薦めだと言うことなので、二人はそこへ行ってみることに。


「ごめんくださいよ」


 開けっ放しのドアをくぐると、店の中へ入る二人。

 一階はどうやら食堂になっているようで、すでに客が何人もテーブルについて思い思いに飲んだり食べたりしているようだ。おそらく泊まり客だけではなく、普通に飯屋としても営業しているタイプなのだろう。


「いらっしゃいまし! お食事のみですか。それともお泊まりもですか?」


 カウンターから女将とおぼしきエプロン姿の中年女性が顔を出す。

 中年とは言ってもそれなりに整った容姿と体型をしており、おそらく若かりし頃は美人の仲間入りをしていたのではないだろうか。


「泊まりじゃが、部屋はあるかね?」

「ありますよ。一部屋ですか、それとも二部屋の方がいいですか?」

「一部屋で結構です」

「深夜……」

「私は村正様のおそばを離れるつもりはございませんが?」


 しれっとした顔で答える深夜を見て、女将がくすりと笑う。

 とりあえず少女愛好者でないことは分かってもらえたようだ。


「ということだ。一部屋でよいわ」

「分かりました。日数はいかがいたしますか?」

「そうじゃな。ひとまず一週間で良い」

「素泊まりですと一泊銅貨5枚。食事は別料金になりますが?」

「それでよい」


 村正は朝食だけは毎朝付けてもらうことにして先に料金を払う。

 部屋の鍵を受け取ると、とりあえず自分たちの寝床を確認して、軽装に着替えてくつろぎモードに突入する。

 食堂へ降りてくると、酒と食事を注文し、依頼について検討し始める。


「おそらく、今日持ち込んだ魔石と素材だけでもブロンズランクは突破しているはずですので、後は依頼消化と試験ですね」

「そうじゃなあ。面倒じゃのう」

「別にブロンズのままでいいやとか思っておりませんよね?」


 ジト目で見る深夜にたじろぎながらもそんなことは無いと言い訳する村正。

 全く説得力が無い。


「ランクが上がるとそれだけ優遇されます。上げておいて損はございません。各地に存在する遺跡、迷宮の類いも、高ランクであれば立ち入りが容易になりまする」

「なるほど。では上げるとしよう」


 急に真剣な顔になる村正だった。

 そこに料理が運ばれてきたので、話を中断して食事を始める二人。

 深夜は本来人と同じように食事をする必要は無いのだが、食事をエネルギーに変換することも勿論可能なため、不自然にならないように食事は取る習慣がついているのである。


「なかなか美味いな」

「はい。過去味わった食事の中ではちょうど平均点程度と分析します」

「高評価じゃな」


 世界中を渡り歩いた二人だ。

 最底辺の食事から最高の食事まで楽しんできた中での平均点であるからかなり良い評価と言える。


「これならこの宿を当面の根城にしても良さそうじゃなあ」

「部屋も清潔に整えられておりましたし、よろしいかと」


 しばらくこの宿をねぐらにすると決めた村正。

 そうと決まれば、後は飲んで食うだけだ。

 いいだけ飲んで気持ちよく酔っ払うと、深夜に支えられながら部屋へ帰る。


「飲み過ぎでございますよ、村正様」

「久しぶりに酔っ払うのは気持ちがいいのう!」

「まるっきりダメ人間の発言でございます」

「言っとれ」


 翌朝。

 二日酔いになることも無くすっきりと目覚めた村正。

 高性能の肉体は、アルコールにも強いようである。


「おはようございます、村正様」

「おう。すっきり爽快じゃなあ」

「ギルドへはいつ頃行かれますか?」

「こんな早朝から行っても仕方あるまいよ。まずは朝飯じゃな」


 簡単な朝食を済ませると、女将に挨拶をして街へ出る二人。

 二人が向かったのは、防具の店である。


「当たらねばどうということは無い、と赤い人は言っていたが」

「至言でございます。が、他の人間への見え方というものもございます」


 要するに、他のハンターたちに「自分たちはちゃんとやってますよ」とアピールする目的もあるのだ。

 防具屋で身体の動きを阻害しない最低限の部位を守るものを買い、その足で服飾店へ。

 さすがに深夜の収納空間に入っている現代の服ではこの世界ではあまりに浮いてしまうからだ。

 標準的な既製品を何着かと、肌触りの良さそうな生地を買いそろえる。

 深夜が、「布さえあれば私がお作りします」というからだ。

 まさに万能兵器であった。


「ふむ。なかなかあの野盗共、貯めこんでいたではないか」

「私たちの役に立ったのだから本望でございましょう」


 村正の財布の中身はまだまだ余裕があった。

 野盗のアジトを壊滅させがてら頂戴してきた行き掛けの駄賃がひょんなところで役立ってくれたのだった。


「さて、そろそろ行こうかのう」


 それなりに時間を潰すことができたので、二人はギルドへと向かう。

 ギルドに入ると、早速アリスが声を掛けてきた。


「ああ、ムラマサさん、どうぞこちらへ」

「おう、手間を掛けさせて済まんのう」

「いえいえ、そんなことは。ひとまず奥へ。支部長がお待ちです」


 最後だけ小声で言って、アリスは二人を奥へと案内する。

 そして二階へ。


「ようこそ。夕べは良く休めたかしら?」

「おう。久しぶりに痛飲したわい。身体が健康なのはいいことじゃなあ」


 呵々と笑う村正。

 現世では最後は床に伏せるばかりで何一ついい思い出が無いので、余計にそう思うようだ。


「それはいいことね。今度是非一緒に飲みたいものだわ」

「お主のような別嬪さんならいつでも歓迎じゃよ」

「あら、ありがとう。じゃあ、本題に入りましょうか」


 ヴィヴィアンの説明によれば、黒馬と赤熊の魔石二つで金貨800枚。下級魔石が全部で金貨100枚。黒馬と赤熊の素材全部で金貨500枚。その他の雑多な素材類で金貨10枚。

 締めて金貨1410枚ということだった。


「それで構わんよ」


 鷹揚に頷く村正。

 正直金には興味が無いので、酒を飲んで美味い物を食えるだけの金が手に入ればそれで良いのである。


「正直言ってしまうと、街の素材屋に持っていって交渉すれば、粘り次第で1800枚は行けると思うの」

「本当に正直じゃのう」


 ぶっちゃけたヴィヴィアンに苦笑する村正。


「ギルドも儲けを出さなくちゃいけないの。その儲けがギルドの運営資金になったり依頼報酬の適正化に繋がるので、ギルドで買い取る時は手数料代わりに少し安く買わせてもらっているのよ。その分、いつでも大体同じ値段で買い取るんだけど」

「なるほどのう。在庫次第で値段が上下するのが普通じゃからな。まあ、何にせよ構わんよ。別に儲けようと思って狩ってきた訳ではないし、少しは儂らの有用性を感じてくれるじゃろう、支部長さん?」

「ええ。もちろんよ」


 妖艶に微笑むヴィヴィアン。

 今日もドレスがセクシーである。


「儂らもこの街に来てハンターになったばかりじゃ。お近づきの印じゃよ」

「助かるわ。その分少しサービスするように言っておくから期待してて」


 そう言ってヴィヴィアンがすっと右手を差し出す。

 一瞬戸惑った村正だったが、同じく右手を出して握手を交わす。


「いい取引をありがとう」

「こちらこそじゃ」


 笑顔で挨拶を交わして、村正たちは執務室を後にした。


お読みいただきありがとうございます。

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