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探索者は異世界でも宝を求む  作者: 葉月風都
第2章 はじめてのいせきちょうさ
12/42

第1話 -アールファの街へ-

第2章です。

とりあえず、また第2章終了までは毎日一部ずつ投稿していこうと思います。


よろしくお願いします。

<第1話 -アールファの街へ->




「これがアールファの街か」

「そのようです、村正様」


 村正は、石積みの城壁に囲まれた大きな都市を見上げてそう呟いた。

 その隣には深夜が楚々と控えている。


 過日、山の麓の村にて魔物を倒した後、今度は特に急ぐことも無く街道をのんびりと二日ほどかけて旅してきた二人。

 道中、チョロそうな少年と幼女とみた野盗の類いに一度襲撃を受けたのだが、容赦なく殺してきていた。




 野盗を叩きのめした後。


「丁度良い、儂らの聞きたいことに答えてもらおうではないか」


 そう言って村正は、あまりに不自然に思われるのではないかと村では自重していた質問を、自らを襲った盗賊に対して投げかけていた。


 この世界には【魔物狩り(ハンター)】という職業があり、その互助組織としてハンターズギルドというものがあるということ。その中でも特に遺跡から【魔道具】を発掘して一攫千金を狙う者を【探索者(エクスプローラー)】と言うのだそうだ。


 また、【魔物狩り(ハンター)】とはいうものの、最下級の魔物しか狩れないような実力しか持たぬ者は便利屋代わりに使われているという。それでも専門の技能を身につけられない、身につける努力すら怠る者の生きる手段としてはお手軽なのだそうだ。


「アレじゃな。良くある冒険者ギルド的なものなんじゃな」

「そのようですね。これもまた1つのお約束と言えるのではございませんか?」

「その通りじゃなあ。すると、お主らはその最下級の仕事すら辞めてこんな悪事に手を染めておるということかの」


 ゴミ屑でも見るような目で盗賊を見下ろす村正。

 そのほかにも、異世界転移者が知りたくなるようなこの世界の情報を細かいことまでじっくりと聞き取っていく村正。

 なにせ全て聞き終えたら後腐れなく殺してしまうつもりなのだからどれだけ疑問に思われようが関係が無い。気楽なものだ。


「よし。こんなものかのう、深夜?」

「はい。全て記憶いたしました」

「全部答えたんだ、命だけは……」

「かかっ。襲ってきたのはお主らであろうがよ」


 そう言って村正は盗賊の心の臓を一突きして殺した。


()って良いのは()られる覚悟がある奴だけじゃて」


 そうして村正たちはこの世界の一般常識を手に入れたのだ。


 盗賊の常識を世界に当てはめて良いのかどうかは分からないが、元ハンターではあったようだから最低限の事は知っているはずだと村正は納得していた。

 ちなみにその後、拷問して聞き出した野盗のアジトを強襲して居残り組を全滅させ、そこにあった金品を全て強奪したのも成果だったのは間違いない。




 そして、今。


「この東大陸を東西に貫く街道の東の端の街じゃったな」

「左様でございます」


 この世界には大きく分けて二つの大陸があるそうな。

 それが今現在村正たちのいる「東大陸」と海を隔てて西にある「西大陸」である。

 東大陸には大陸を貫く大きな街道が二つある。


 一つは東西に延びる「大弓街道」

 一つは南北に延びる「大剣街道」


 その大弓街道の東の果ての街がアールファの街である。

 ちなみに西の果てはベーターの街だそうだ。


「アールファにベーターかよ」

「極めつけは大剣街道の南端がガーンマの街で北端がデルータの街でございますからね」


 どう見てもギリシャ文字ではないか。

 もちろんその四つしか都市が存在しないわけはなく、二大街道の交わる中央部には王都オメガという大都市が存在するそうだ。

 他の都市の名前も、概ねギリシャ文字の呼び方がベースになっているようだ。


「東大陸を統一して街を造ったヤツはきっとギリシャ人だな」

「私たち以前にギリシャ人がこの世界にやってきた可能性は否定できませぬ」

「まっことその通りよな」


 都市に入るための身元検査を待つ列は遅々として進まない。

 そこを疎かにして街を危険にさらすよりはいいのだろうが、さすがに飽きてしまう。


「身分証明書になるようなものがあれば早いんじゃろうな」

「先ほどから隣の列はそれなりに進んでいますからね」


 商人がほとんどのようだが、中には如何にも「戦います」と言わんばかりの格好の者たちもいる。おそらくはハンターなのだろう。


「ワシもあっちの列に並ぶかのう」

「村正様はライセンスをお持ちではございませぬが?」

「この魔石で代わりにはならんかのう?」

「なりませんでしょうね」

「じゃよなあ」


 苦笑する村正。

 いきなり騒ぎを起こすこともあるまいと渋滞に巻き込まれた時のような心持ちでゆるゆると進んでいく列に並ぶ二人。


 いよいよ二人の番が来た。


「この街は初めてか?」

「そうじゃ。ハンターとやらになりにきた」


 真面目そうな中年の男とハンサムな顔の若い男の二人組が担当だ。


「ハンター志望か。随分と若いようだが歳は?」

「17じゃよ。そんなに若く見えるかのう?」

「もっと年下に見えるな。その喋り方は少しでも年上に見せようと思ってか?」

「いんや。ただの癖みたいなもんじゃよ。年寄りとの生活が長かったんでな」


 やはりその背格好と喋り方のギャップは奇異に映るようである。

 これは本気で口調を直す練習をした方が良いかもしれんと思う反面、ここまできたら一つの個性として貫き通した方が面白いかもしれんと悩む村正であった。


「その少女は連れか。妹御か何かか?」

「私は村正様の従者でございます」

「奴隷か? 随分と大事にされているのだな」

「幸せな奴隷ですねえ、先輩」


 この世界、奴隷は所有物であると同時に財産でもある。

 よって、基本的にはそこまで酷い扱いをされることは少ないのだが、金持ちにとっては替えの効く消耗品に過ぎないため、扱いは買われた主人によるのが現状だ。


 村正はそのこと自体はどうとも思わなかった。


 従える者と従う者。

 その区別があるのはある意味当たり前のことであるから。


「身分証明書のようなものはあるか?」

「いや、無いな。どうすればよい?」

「となると、保証金がいる。一人につき金貨1枚だが払えるか?」


 日本円にすればたったの1万円。

 だが、この世界なら家族が一ヶ月は食いつないでいける。


「ああ、問題ないわい」


 深夜が懐から金貨を2枚取り出す。

 奴隷に金を持たせておくことがそれほど意外か、担当の衛兵二人が目を丸くする。


「じゃあ、この羊皮紙に名前を書いてくれ」

「深夜」

「畏まりました」


 この世界の文字も完全に記憶した深夜がさらさらと字を書いていくのを見て、さらに驚く衛兵。

 このような少女奴隷が字を書けるとは思っていなかったのだろう。


「これでよいのか?」

「ああ。ギルドでライセンス登録を済ませたら、中にある衛兵詰め所に来てくれ。その時にこの保証金は返却する」

「そうなのか。承知した」


 正直その程度かと拍子抜けした村正であったが、口には出さない。


「身分証明書が無い時に何か問題を起こしたり犯罪行為に手を染めたりしたら、本職の兵士がお前さんを捕らえに行く。変な気は起こすなよ?」


 村正の思いを何となく察知したのか、中年の衛兵がそう声を掛けてきた。

 街に入ってしまえばこっちのものと思う不届き者がやはりいるのだろう。


「かかっ。そんな真似をせずとも金には不自由しておらんわい」

「まあ、一応規則なんだよね。済まないね」


 苦笑する村正に若い方が笑いかける。


「そういうことだ。ようこそ、アールファの街へ」


 二人は、この世界で初めての都市に足を踏み入れた。


お読みいただきありがとうございます。


良ければ評価など色々よろしくです(・∀・)

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