表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エターナル  作者: 夕菜
37/40

第7話(4)




時は少し遡り・・・

美森は、凛の行先が気になったので、そっと彼の後をつけることにした。

凛に気づかれないようにしなければ・・・。

凛は、廊下の突き当たりにある二つのドアのうち、右側のドアをゆっくりと開け中に入っていく。

ドアは開けっ放しだ。

(よかった・・・)

これなら、中の様子を伺うことができそうだ。

美森は、半開きになっているドアにそっと近付き、そこから中の様子を伺った。

「・・・!」

暗くてよく見えないが、どうやら凛は、葵と話をしているようだ。

「こんばんは!」

「!」

聞きなれた声がしたかと思うと、二人の隣に誰かが姿を現した。

その誰かは、間違いなく勇だった。

(勇君・・・!?)

「ひさしぶりだな」

「!!」

美森が声のほうに振り向くと、すぐ近くに立っている千世の姿が目に入った。

「・・・!!」

千世は、目を丸くしたまま固まっている美森を見て、満足気に微笑む。

(どうしよっ・・・)

美森は早くこの場から逃げ出すため、その部屋に駆け込もうとした。

とその時、美森の背中に強い衝撃が走った。

「っ・・・!!」

美森は吹き飛んだかと思うと、凄い早さで部屋の奥にあった本棚に叩きつけられた。

その衝撃で、数冊の本がバタバタと床に落ちる。

「「美森!!」」

勇とそらの張り上げた声が、同時に聞こえた。

「うぅ・・・」

美森はその声を耳にして、生きててよかったと思ったが、それと同時に全身が激しい痛みに襲われた。

それほど強く叩きつけられたようだ。

「しっかりしろ!美森!」

勇が美森に駆け寄って、横になっていた美森の体の上半身を起き上がらせてくれた。

「大丈夫・・・」

美森は小声で、そう呟くことしか出来なかった。

「・・・・」

勇は美森の言葉を聞いても、その引きつった表情を和らげようとしない。

「!!」

美森は自分のすぐ横に倒れている葵の姿を見た。

「・・・葵さん!」

美森は、勇の支えから離れて、葵方に這うようにして近づいた。

葵は、固く目を閉じている。

「大丈夫だよ。そいつは寝てるだけだから」

勇のその声が、背後から聞こえた。

「よかった・・・・・」

「やめてぇぇぇぇぇ!!!」

「!!」

突然、そらの悲鳴に似た叫び声が周囲を満たした。

目に飛び込んできたのは、千世がそらの首を片手で掴み、彼女の小さな体を持ち上げている光景だった。

「そらちゃんっ・・・」

そらは、千世の手から逃れようと、必死にもがいている。

「うっ・・・」

その時、そらの表情が苦しそうに歪んだ。

おそらく千世の手に、力が入ったのだろう。

凛はその様子を、平然と見ている。しかも、その顔には何の表情も浮かんでいなかった。

(やっぱり、凛君は・・・)

組織の一員なんだ。・・・こんな様子を普通に見ていられるなんて。

美森は悲しくなった。

凛は、美森と同じ地球からエターナルに来た“仲間”なのに。

(こんなの・・・間違ってるよ・・・)

その時、千世が、空の胸元辺りにそらいている方の手を入れた。

しかし、そこから血は出ていたかった。

・・・まるでそこだけ、別の空間に繋がっているようだ。

そして千世は、そらの中から何かを取り出した。

その丸い玉は、暗闇の中、琥珀色に美しく輝いている。

そらは、その瞬間、体の力が抜けたように動かなくなった。

千世は、そのそらをドサリとベッドに落とす。

千世はこちらに振り向くと、その琥珀色の玉を握りしめながら言った。

「最後の“力”を手に入れたぞ・・・」

美森はドキリとした。

(パーツの力が、全部集まったんだ・・・)

そして、絶望した。

確かその“力”を時の裂け目に入れられてしまうと、トワとノワは消えてしまう。

「いくぞ。勇。そいつを必ず連れて来い」

千世は美森のことを一瞥すると、勇の方に目を移し言った。そして、その姿をかき消した。

凛も、美森の方には振り向きもせず、この場から姿をかき消した。

「・・・・」




部屋には美森と勇だけになった(そらと葵の意識はなかった)。

美森は我慢できずに、勇の方に向き直る。

勇は、目を伏せており、美森と目を合わせようとはしなかった。

そして、嫌な沈黙が二人を包んだ。

きっと勇は迷っているのだろう。千世の言葉に従うべきか否か。

「美森・・・このまま逃げろ」

 勇は目を伏せたまま、力強い声でそう言った。

「ううん・・・大丈夫だよ。私のこと連れてっても」

「!」

勇は驚きの表情で、美森を見る。

美森は思った。

凛のことを救わなければ。

そして、トワとノワのことも。

今まで出会った大切な人たちのことも。

「でも、そんなことしたらっ・・・」

「私は大丈夫だよ。きっと大丈夫だから・・・」

美森は、自分に言い聞かせるつもりで言った。そして、小さな声で「行かなくちゃいけないから・・・」と付け加えた。

勇は美森の気持ちを察してくれたのか、不安げな瞳でこちらを見据える。

美森はそれに応えるために小さく頷いた。

すると勇は、美森の手を丁寧に握った。

「・・・・」

勇の大きな掌は、美森のこれからを「きっと大丈夫」と励ましてくれている気がした。

そして、次の瞬間、美森の視界の光景は消えた。



美森の視界に、白い壁の部屋が現れた。部屋の隅には、シンプルなベッドが一つ置いてある。

そして、窓際に立っている人は千世だ。凛もその近くに立っているが、美森に背を向けており、ここからでは彼の顔は見えない。

千世は、美森が来たことに満足したらしく、薄い笑いを浮かべている。

「いいぞ。勇」

「・・・・・」

勇が千世の言葉に、小さく舌打ちをしたのが聞こえた。

美森は黙って立ち上がった。

まだ体中が痛い。

しかし、そのことは気にしていられない状況だと美森は思った。

勇も美森の隣で立ち上がる。

「美森。こっちへこい」

千世は、闇色の瞳で美森のことを見据え言った。

「・・・・」

美森は沈黙を守って、千世に近づいた。

・・・・ここで拒絶したとしても、今の状況は変わらないだろう。

背後から勇の強い視線を感じる。

勇は、自分のことを心配してくれてるんだ。・・・千世に何かされるんじゃないかと。

(・・・ありがとう。勇君・・・)

自分のことを心配してくれる友だちができて、美森は嬉しかった。

美森は、小さな幸せを噛みしめて千世の前に立った。

「時の民の印を見せてみろ」

「・・・・!」

美森は一瞬躊躇ったが、洋服の襟もとを掴み、それを押し広げて千世に印を見せた。

千世は、美森の首元に視線を送ると、一回だけ頷く。

「・・・」

美森も自分の首元に目を向けた。

・・・呪の印は、まだそこにしっかりと刻み込まれてあった。

・・・・美森が初めて呪いの印を見たときよりは、確かに薄くなってきている。しかし、その三日月の形はまだそこにしっかりと残っており、消えるという感じはしなかった。

「さて・・・星夜・・・時の裂け目を作ってもらおうか。最後の“パーツの力”を入れるためのな」

凛は、千世のことを一瞥すると頷いた。

「・・・!!」

凛は、右腕の袖をたくし上げた。

そこには、ノワにつけられた・・・太陽の形の・・・呪いの印が刻み込まれていた。

そしてその色は、濃い黒だった。

しかも前、美森が見た時の凛の印より、一層、濃くなっている気がする。

千世は手に持っていた光る玉を凛に差し出した。

凛は、印のついていない手でそれを丁寧に受け取ると、ギュッと手の中で握り締める。

凛は印がついている方の手を、自分の目の高さまでゆっくりと持ってきた。

そして次の瞬間、呪いの印が光った。

黒い煙のような光を放って、凛の呪いの印は眩いほど輝いている。

・・・しかし、その光は美森にとっては希望の光ではなく、絶望に導くための光だった。

(このままじゃ・・・)

取り返しのつかないことになる。

みんなの笑顔は消える。

そして、一生戻れなくなる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ