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エターナル  作者: 夕菜
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第3話 (5)




すると勇が言った。

「俺がその印、消してやろうか?そしたら美森は“地球”ってところに帰れるんだろ?そのことは心を見据えることのできる雫から聞いたんだけど」

「!!!」

美森は勇の言葉が信じられなかった。

(地球に・・・帰れる!?)

「――・・・」

しかし嬉しさと同時に、不安が美森の胸をよぎる。

(・・・でも楓君のこと心配・・・そうなったのもすべて自分のせいだし・・・放っておいて帰ったら、私・・・悪い人じゃん・・)

すると、黙っている美森を見て、勇がイラつきの混じった声で言った。

「なんだよ!地球に帰りたくないのか!?」

「帰りたい!!!」

美森も大声で言い返した。

勇と雫は、美森の突然の大声に驚いたように目を見開く。

「・・・美森は夏の民のパーツのことが気になっているみたい」

雫は美森の心を見たらしく、当たり前のように言った。

「・・・ふーん。美森は優しいね」

勇はそう言うと、美森と雫の間の空いてるスペースに腰を下ろした。

「・・・勝手に座んないでよ」

「まっ!いいじゃんか」

勇はいらだっている雫の声色も気にする様子なく、満面の笑みで雫の頭をポンポンと叩く。

「はぁ・・・」

雫はわざとらしいため息を吐いた。

そして勇は美森に振り向いた。

「優しい美森を見習って、俺も優しくなろうかな。

・・・時の民の印が消えたとき、同時に夏の民のパーツも解放してやるよ。これでどうだ!?」

美森は思わず勇の顔を見る。そこにはニコニコと笑っている勇の顔があった。

「・・・ほんとに?」

美森は恐る恐る聞き返す。自分の聞き間違いではないだろうか。

「もっちろん!」

「!・・・」

美森の表情がみるみるうちに生気を取り戻していく。

美森の心は踊った。

「よし!決まりな。・・・でも今からじゃ、ちとしんどいから明日の朝、ファルの街の入り口に集合!!OK?」

美森は即座に頷いて「分かった」と言った。

「雫!お前も来るよな!?」

「うん・・」

雫も短い返事を返した。

「美森・・・絶対にこの事は誰にも言うな。もし言ったとしたら、今までのこと全部無しだからな!」

「・・・分かった」

美森は隠し事をすることは苦手だったが、今度ばかりは隠し通すことができるだろう。何せ地球に帰れるかどうかがかかっている。

「・・・でもあいつは厄介だ」

「・・・え?何・・・?」

隣で勇が、ぼそりと何か呟いたがよく聞き取れなかった。

すると、勇が突然立ち上がった。

「二人とも!ちょとここで待ってろ。勝手に帰るんじゃないぞ!」

勇はそう言い放つと、部屋から慌しく出て行った。




数分後・・・

勇が勢いよくドアを開けて入って来た。

勇の左手には何か薬ビンのような物が握られている。

「じゃじゃーん!これは俺の愛用している薬“ハイーンド・マイーンド”とっても役に立つお薬さ!」

勇は意味の無い効果音をつけてその薬のことを説明?した。

勇はその薬ビンから一粒、薬を取り出すとそれを美森の口の前まで持ってきた。

「飲め!」

「――・・・」

美森は口を開きたくなかった。そんな怪しげな薬なんて飲めるはずがない(その薬は全体的に赤い色で、そこに黒いしま模様が入っている)。

「ほら飲めよ!」

それでも勇は、薬を美森の唇に押し当てて薬を飲むように促した。

美森はより一掃、唇を硬く閉じそれに対抗する。

「・・・」

少したった後、勇は諦めたらしく美森の口元から薬を離した。

美森が心の中で安堵のため息を吐いていると、勇が突然、窓の外を指さした。

「あっあんなところに夏の民のパーツが!!」

「えっ!?」

美森が口を開いた瞬間、勇はさっきの薬を自分の口に素早く放り込むと、自分の唇を美森の唇に押し当てた。それと同時に勇の掌が美森の後頭部にまわる。

「!!!・・・」

(うあ゛・・・と言う声が隣から聞こえた。)

何秒か経った後、勇は唇を離した。

「美森が飲まないもんだから、無理やり口移しでも飲ませようと思ってね!」

勇は何のためらいも無くそう言った。

「・・・・っ・・・!」

美森はあまりの恥ずかしさにめまいがしそうだった。

心臓がバクバク音を立てる。・・・こんなのあり得ない!

「おっ!美森可愛いな~。顔、真っ赤だぞ!」

勇は美森の頭をなでる。

美森は何も言うことができず、俯いた。

「まっ!これで良かった。あいつに心を読まれることもないなぁ!」

「・・・」

すると隣にいる雫が久しぶりに口を開いた。

「ハイーンド・マイーンドは心を隠すことの出来る薬。心を見れる能力者が相手でも、その薬を飲んでいれば、しばらくの間安全ってわけ」

「そういうこと!だから俺も雫に心を見られないように飲んでるの!見られたら、かなり嫌だからな」

「・・・って言うかその事、飲む前に言うべきだと思う」

雫がぼそりと呟いた。

「あ゛!そうだったな。すっかり忘れてた!」

勇が自分の頭をバシンと叩きながら陽気に言う。

とその時、下の階から誰かの声が聞こえた。

「勇、雫ー!夕食にするから降りてきなさーい!」

『はーい!』

勇と雫は声をそろえて返事をする。

「それじゃー美森にはもといた場所に帰ってもらうか。あの約束のこと、忘れんなよ!」

美森は勇の顔を見ないよう、俯きながら頷いた。

今、勇の顔を見たらまた顔が赤くなってしまうかもしれない。そのことで勇にからかわれるのは、もうごめんだ。

すると、雫がその掌を美森の手の上にそっと乗せた。

「・・・?」

 美森は何事かと雫の方を見る。

「・・・私も途中まで美森に付き合うから」

雫が美森のことを一瞥し、早口で言った。

「分かった、分かった。速く帰ってこいよ。じゃないと、夕飯全部食べちゃうぞ!?」

雫は、へらへら笑っている勇のことは気にする様子なく、美森に目を向ける。

「・・・それじゃ行くから」

雫がそう呟いた次の瞬間、周りの景色が一瞬にして美森の視界から消えた。




誰もいなくなった雫の部屋・・・

そこに一人立っている勇は、ぼそりと呟いた。

「・・・パーツとあの力が手に入れば・・・・・」

窓から差し込んでくる赤すぎる夕日の光が、勇の顔を不気味に赤く染めていた。




足の裏に固い土の感触が伝わったと思うのと同時に、周りは闇に包まれた。

美森は不安になり、隣にいるはずの雫に声をかけた。

「・・・雫ちゃん、・・・いる?」

「うん」

闇の中から雫の落ち着いた声が聞こえてきた。

(よかった・・・今度は一人じゃない・・)

美森は安堵のため息を吐いた。

誰かが隣にいると分かっただけでも不安は薄らぐ。

「美森・・・靴・・」

「あ!」

美森の前でドサッと靴が置かれる音が聞こえた。

「・・・ありがとう。すっかり忘れてた・・・」

「・・・大丈夫」

美森は暗闇の中、苦労して靴を履き終えた。すると視界の隅に、一部分だけが淡い朱色に光っている岩が見えた。

(・・・そうだ。あの岩が、もしかしたらこの世界で一番大切なものかもしれない・・・)

「・・・」

 しかし、美森の頭をよぎるのは勇との約束だ。・・・そう、その約束のおかげで、“この世界で一番大切なもの”がなくても首もとにある呪いの印は消え、自分は地球に帰ることができる。

美森がそんなことを考えてぼーっとしていると、雫が美森に声をかけてきた。

「私も一緒に行ってあげる。あそこに行きたいんでしょ?」

「えっ・・・」

雫は美森の次の言葉を待たずに、美森の手首を掴んできた。そしてそのまま、雫は美森を引っ張る感じで歩きだす。

その岩の前まで来ると、その淡い朱色の光で周りの景色がぼんやりと見えるようになった。

雫はそこに着いたのと同時に、美森の手を離した。

「・・・・」

美森はその岩に顔を近づけてみた。

光っている部分は、岩とは思えないほど明るくて綺麗だった。

(・・・何で光ってるんだろ?)

美森は気持ちを抑えきれずに、そっとその部分に触れた。

「あったかい・・・」

美森はいつの間にか呟いた。

ひんやりすると思ったが、その岩は普通の岩と違いほんのりと暖かかった。まるで誰かと手をつないでるそんな感じがした。

とその時、その光が岩の中から勢いよく飛び出してきた。

「!!」

 見る見るうちにその光は球の形をかたどり、大きく膨れ上がる。

「え!?なにこれ!」

 美森が助けを求めて、雫の方を見るとそこに雫の姿はなかった。いや・・・その大きく膨れ上がった光のせいで雫の姿さえ確認することができなかった。

 美森はあまりの眩しさに、目を閉じる。

「・・・!」

 そして美森は、その光に飲み込まれた。



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