プロローグ
ここは、夏の風が吹き抜ける森の中。
風に乗って、誰かの歌声が微かに聞こえてくる。
「・・・・はー」
しかし、それは彼女の溜息によってかき消された。そして彼女は、黄金の瞳を伏せ、呟いた。
「どうして、永遠なんてあるの・・・」
彼女は木に寄りかかる。そして、空を仰いだ。
青々とした木々の間から覗く、いつもと同じ空。
「溜息なんかついてどうしたの?」
声のほうを見ると、彼がいつもと同じ微笑みを浮かべ、そこに立っていた。
「・・・トワは永遠を感じないの?」
彼女は、そのトワという名前の青年に、そう問いかけた。
「・・・ないよ。永遠なんて」
トワは、彼女の気持ちを察していたようだ。それでもトワは、彼女の表情とは対照的にその銀の瞳を歪ませて、微笑んでいる。
ざわざわざわ・・・
また風が吹き抜けた。
「ねぇ・・・。ゲームを始めない?」
・・・彼女の何気なく言った言葉は、しっかりとトワの耳に届いたようだった。
永遠と続くように思える日々なんだから、少しなら寄り道しても構わない。
私は、そう思ったんだ。
*****
教室から見える、いつもの景色。
私は、先生の話を聞こうともせず、ノートにひたすら文字を書いていた。
くりかえす日々。
始まる今日
続く明日。
色あせることもなく、鮮やかになることもなく続く。
何のために明日はくる?
笑うため?
泣くため?
生きるため?
考えることを繰り返した。
でも、考えただけ。
答えはなかった。
ほら・・・
この瞬間にも今は過ぎ、また今がくる。
明日が来る。
明後日が来る。
来月が来る。
来年が来る。
ただ繰り返す。
繰り返すだけ。
繰り返すだけなら、止まってくれたほうがいい。
繰り返した先には、何がある?
きっとあるのは・・・・
私は、そこでペンの動きを止めた。そして顔を上げ、窓の外を見た。
「きっとあるのは・・・・」