表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

辛抱強さのかけら

 


「次がカフェテリアになります。毎日日替わりメニューが、、、あれ、今日は騒がしいな、、、」


 連れられて来たら、何やらざわついていた。揉め事のようだった。


「、、、!」


 真ん中に見覚えのある茶髪が目に入った。

 昨日はあんなにたくましく見えた背中が、今は丸まっている。


「す、すみませんねぇ、でもあれですよ、いじめとかじゃなくて、後輩可愛がってるだけなんですよぉ、、、ってあれ、聞いてます?」


 案内人が何か言っていたが、気づけば足が動いていた。

 近づけば近づくほど、状況は理解出来た。

 あまりにも容易く、逆になぜ周囲が普通でいられるのか分からないくらいだった。


(そうか、ここはこういう事もあるのか。)


 同調圧力に権力乱用。呆れてしまう。

 踏まれた足元は汚れ、手からは血が垂れそうだった。


(あぁ、あんなに噛み締めたら、痛いだろうに)


 レンゲの足が速まる。


「足をどけろ無礼者!人の靴をふむやつがあるか!」


「な、なんだ!?」

「レンゲ・ラントだ!」

「あれを止めたぞ!」


 周囲のざわつきが気に食わない。


(さっきまで見ないふりをしていたくせに。)


「行きましょう千尋さん」


 思わず勢いで千尋を両腕で抱きかかえ、走り出した。

 一刻も早くここでは無いどこかへ連れ去りたかった。


「ちょっちょっ、待っ、待って!」


「え?」


 しばらくしたところで声をかけられ、ふと我に返る。


「ごっごめんなさい。大丈夫、、、じゃないですよね、、、。」


「いっいえ、大丈夫、、、ゴホッゴホッ、大丈夫です。」


(やらかした!)


「失礼します。」


 レンゲは座れる場所を探し、小さな丘の上にあった木の下で降ろした。


「すみませんでした!」


「えぇ!いや、謝られることは何も!むしろ、ありがとうございました!」


「いえ、勝手に連れ出してしまいましたし、、、。」


「、、、確かに、お姫様抱っこをされた時は、びっくりしましたけど、、、。」


「!」


(そうか!あれは完全なるお姫様抱っこか!)


 あとから気づき恥ずかしさが募る。


(人前でお姫様抱っこなど、1歩間違えたらトラウマもんじゃないか!)


 少なくともレンゲなら2日は寝込むだろう。

 これは本格的にやらかしたぞと血の気が引いているのを実感する。


(もし明日から千尋さんが馬鹿にされたりしたら、、、)


「幻滅しましたか?」


「え?」


「昨日は大きな顔をして貴方を守ったふうにしてしまったけど、ほんとの僕は自分すらも守れない弱いやつなんです。意気地無しなんです。」


「いっつも首まで言い返してやるって言葉がくるんですけど、結局謝っちゃうんです。逆らったら生きていけない、謝れば上手くいくって自分に言い訳して。」


 そう言いながら頑張って笑うのを見て、胸が苦しくなった。


(絶対にそんなことない。そんなことない。)


 そう言葉をかければいいのに。言葉が出ない。

 喉が締まり、目が熱くなる。


「僕のために、泣いてくれるんですか?」


 彼はちょっと驚いた顔をして、少し微笑んでハンカチをくれた。


 ***


(なんで、なんでこんなことに)


 コン、コン、コン、コン


「入れ」


 軽くノックをして重厚な扉をあける。


 扉を開ければ、ふかふかそうな椅子に座った父親がいた。ここでは上官と呼ぶべきか。


「なぜ呼ばれたかわかるな」


「、、、はい。」


「なぜあんなことをした。」


「だって、」


「だってじゃない!」


 机をバンと叩き、空気が凍る。


(本気で、本気で怒ってる)


「お前が敵に回したお嬢さんは、私が彼女の父に頼んで来てもらったお嬢さんだ!」


「それなのにお前ときたら、後輩をいじめて挙句肝心の彼女と敵対しただと!?私の顔をどう立てるつもりだ!」


「もっ申し訳ございませんでした!」


 血管がはち切れそうな父親に震えが止まらない。


「、、、次はないと思え。」


 父親はそう言い残し肩を当てて去っていった。

 思わず腰が抜ける。


(息が、息が、、、)


 コン、コン、コン、コン


 ノックが聞こえた。


「ご歓談中失礼します。紅茶の御用意が整いましたがいかがいたしますか?」


「たす、たすけて」


 何とかしようと手を伸ばし、扉を叩く。

 異変に気づいた執事が入ってきた。


「!?」


「坊ちゃん!?坊ちゃん!」


 だんだんと意識が遠のき、わからなくなった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ