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トリック・オア・トリート

本日は晴天なり。本日は晴天なり。今日この日を迎えるまで曇天が続いていた。予報は当てにならず、太陽が顔を出すまで酷く時間がかかった。おそらく、この日を逃せばまた曇天へと変わってしまうだろう。

俺はこの国1番治安の悪い場所へ移動した。東京吉原である。

昼夜問わず遊び人たちが徘徊しており、薬や暴行で日々騒がしている。

何故ここは平和ではないのか?

エキスパートが居たとしても、ここは()()()()()なんだそうだ。故に大きな暴動やテロなんかは起きていないそうだ。

そんな前情報を持っていて緊張しないかだって?

緊張はするさ。初めてなんだからさ。多目的トイレで着替えていた時は手が震えていた。だが、ここから出ない限り何も変わらない。晴天を取り逃す。

仮面(マスク)を被り外へ出る。そして、スマホを使って自撮りする。SNSに投稿するためだ。


『馬鹿を演じる準備はできた』


俺は歩く。きっかけを作るために。すれ違った者たちに何を言われようともただ歩く。本日は晴天なり。






「ネイル綺麗じゃねー?」

「それなー。なんか使ってんの?」

「ネイルケアはしてないけど、手洗いの石鹸は美肌パパ描いてるやつだよ」

「ってか服ダッサ!ウケル」

自販機で飲み物を買ったら、周辺にたむろしていた遊女3名に絡まれる。

「おにーさん、意外と筋肉質?なんかよくない?」

「ウチらお金困っててさー…良かったら遊んでくれない?」

「つか遊ぼ!そんなカッコしてんだから遊びに来たんしょー?おにーさん体力ありそうだし…すぐホテルでもいいよ?」

「うわっ!やる気まんまんじゃん」

「だってそろそろやんないとぴえんだもんっ!」


あぁ…気持ち悪い


「ねっ、ねっ!仮面外してもいい?」

ひとりに仮面を触られる。

「ちょっと困るんだよね。やめてくれる?」

「えー?ちょー気になるぅ〜。ウチの予想だとめっちゃイケメン」

「ブサメンでもいいからさー、ラブちょうだい?もう我慢できないのー」

3人がかりで身体を弄られる。嫌な気分だ。


本日は晴天なり。我、敵艦発見。敵の行動を見ゆ。


「なにしてんだおめーら?」

複数人の男性が現れる。

「あー、ぴっぴどこ行ってたの〜?ぴえんだったんだけど」

「へんなのいたから絡んでた。何もしてないよ」

女性らの返事を気にせず、男ひとりは3人をビンタした。ビンタした男はそのまま俺と距離を詰める。

「なにかってしてんだ、こら」

威圧。胸同士が当たり、鼻息が近い。

「金、払えよ」

他の男性陣は笑う。びびってるーやら、キレてるなーとか勝手言ってる。

俺は動かない。喋らない。相手が動くまで()()()()()()()()()()()()()()

「喋れや、こら!!」


本日は晴天なり。砲雷激戦、始め。


胸ぐらを掴んでいた手を右手刀で落とし、振りかぶってきた拳を左腕でいなす。そのまま肩を破壊して投げ飛ばした。


愉悦


まさか暴行を加えられると考えてなかった男性陣は拍子抜けする。


愉悦


「テメェ、よくも…」

「暴力ふるうならよー…」


愉悦


「やり返されても仕方ねーよなぁ!?」

殴る。

蹴る。

投げる。

刺す。

砕く。

潰す。

繰り返す。


愉悦


この場に居た男女計8名を自分の思うままに暴れた。死なない程度に。

ピーピーピーと警報を鳴らして警官2名が到着。初めての暴行はここで幕を閉じた。

「なーにやってくれちゃってんのー?困るんだよねー」

「すみません。過剰防衛しました」

「詳しい話は署で聞くから、大人しくついてきなさい」

「はい」

俺もこの時のことをよく覚えてないのだが、警官の対応が呆気なかったと思う。急に大人しくなった男を手錠だけで抑制できると思っていたのが、彼らの顛末なのだろう。




「お巡りさん、すぐに釈放してくれないんですか?」

「無理だね」

机を挟んで警官2名と対面する。

「持っているのはスマホと現金のみ…身分証はどうしたんだ?」

「無くしました」

「その格好はフォースカラーを真似たのか?非エキスパートだなこいつは」

「はい。特別な能力は持っていません」

「スマホを調べましたが、SNSアプリが1つだけ。アカウント名は『裸の王様トリップホロウ』投稿が1件…」

「馬鹿を演じる準備はできた?馬鹿をやんなきゃ、人生の経歴にバツ付けることないんだぞ?」

「どうしてそう思うんですか?」

「どうしてって…あの人数相手に立ち回れるのは俺ら警官含め保安隊で活躍できるんだぞ?それなのに、どうして身勝手な正義を振るんだ?」

「身勝手な、正義…?」

「先輩、こいつの仮面取りましょうよ。人間と話してる気がしない」

「失礼ですがお巡りさん!教えてください。なんでアイツらっているんですか?」

「はい?」

「日々路駐で暮らし、金をせびり街を汚すアイツらって存在していいんですかねぇ?」

「それはね、俺たちだけじゃなく福祉課も重要なことで…」

「なのに、なんでここ吉原には怪人たちが現れないんでしょうねぇ〜?」

「え……?」

「ここ50年間の東京犯罪率を調べても、吉原だけが怪人犯罪がゼロなんですよ。どうしてですか?」

「おまえ、どうやってその情報を……」

「そもそも!!!グレーを決めたのはおまえら国じゃねぇかよぉ!!!ふざけやがって!!おまえらが見逃した分、俺らが損してんじゃねーか!!偽善者め!!!」

右手を銃の形にする。

「なんでピストルを持ってるんだ?あんたら」

「それは……」

「不平等だよな?」


殺意


「バン」

眉間に1発。

「!?うごっ」

「バン」

後輩警官は体制を崩す。

「バン。バン。バン」

動かなくなるまで偽りの銃を放つ。

「あはは。あっははは!あははははははははははは!!!」


本日は晴天なり。本日は晴天なり。本日は晴天なり。


裸の王、トリップホロウはここに誕生した。

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