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金持ちのキューピッド

これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。

その日は、特別なことの何もない、いつも通りの朝だった。


長野の住宅街に、穏やかな風が吹き抜ける。

洗濯物が揺れ、遠くで誰かが自転車を止める音がした。


「……あ」


秋広あきひろは、道の向こうから歩いてくる人物に気づき、自然と声を漏らした。


ノムヴラだった。


彼女はいつも通りの服装で、いつも通りの歩き方で、いつも通りの表情をしていた。

それなのに、なぜか目が離せなかった。


「おはよう、アキヒロ」


「お、おはよう……」


特に急ぎの用事があるわけでもない。

二人は立ち止まり、しばらく他愛のない言葉を交わす。


ノムヴラが話している間、秋広は彼女の声を聞きながら、ぼんやりと考えていた。


(……今日も、普通だ)


普通で、平和で、変わらない。


だからこそ――

彼は、無意識のうちにノムヴラを眺めてしまっていた。


「……?」


ノムヴラが首をかしげる。


「なに? 顔についてる?」


「い、いや! なんでもない!」


秋広が慌てて視線を逸らした。

ノムヴーラは仕事に行かなければならなかったので、別れを告げて立ち去りました。

ノムヴュラが立ち去っても、アキヒロはまだ彼女から目を離すことができなかった。その時。。。

「よぉ〜〜!」


場違いなくらい陽気な声。。。


振り向くと、そこには背の高い金髪の男が立っていた。

軽いジャケットに、気楽そうな笑顔。


エリオット・ヴァン・デル・クローテだった。


「やあやあ、アキマン」


「……エリオットさん」


秋広が軽く頭を下げる。


エリオットは、この一帯の住宅区画すべてを所有する大富豪であり、

同時に、住民たちからは妙に親しまれている“大家”でもあった。


「またやってるねぇ」


エリオットは、にやにやしながら立ち去る途中のノムヴラを見る。


「夢想? それともさぁ……」


彼はわざとらしく声を落とし、


「アキマンは。。。ノムラインと結婚する妄想?」


「――っ!!」


秋広の顔が、一気に赤くなる。


「ちょっ、ちょっと! 声が大きいです!!」


「ははは! 冗談だよ、冗談」



エリオットは肩をすくめる。


「でもさ、アキマン。

そろそろ言えばいいんじゃない? 気持ち」


「……そんな簡単な話じゃありません」


秋広は視線を落とし、ぽつりと答える。


エリオットは少しだけ真面目な顔になり、それから、すぐに軽い調子に戻った。


「じゃあさ。金?」


「……え?」


「デートに使う金、足りないとか?」


「そ、そういう問題じゃないよ……」


「だったら貸すよ」


エリオットはあっさり言った。


「返さなくてもいい。

君、うちの大事な住人だし」


秋広は言葉を失う。


(この人、金銭感覚どうなってるんだ……)

実は、そもそもアデバヨをブリュンヒルデに紹介したのはエリオットだった。エリオットはアデバヨとブリュンヒルデを結びつけるキューピッドのような役割も果たした。

その日の空は、どこまでも穏やかだった。


このエピソードを楽しんでいただければ幸いです。次のエピソードもすぐにアップロードします。

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