表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/24

守る

これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。

昼下がりの商業エリア。

ラウラ、ヒナタ、ワンユー、セリーナ、そしてアキヒロは、各自の屋台の裏に置かれた簡単なテーブルを囲み、束の間の休憩時間を過ごしていた。


ラウラがサルサを味見し、ヒナタはお茶を入れ、ワンユーは蒸し器の温度を気にし、セリーナはスパイスの瓶を振りながら談笑している。


その空気は、まるで家族のように温かかった――。


だが、その平穏を破る影がひとつ。


カツ、カツ、と自信に満ちた靴音を響かせながら、長身の男が現れた。


ランドィマー・デューク。


巨大開発企業「デューク・コーポレーション」の代表にして、

この商業エリアを丸ごと買い取ろうとしている張本人だった。


「やあ、仲良く集まっているね、レディたち。」


不敵な笑みを浮かべながら、ランドィマーはテーブルを見下ろす。


「いいよ、その友情。商売を失ってからも、君たちは支え合えるもんな。」


ラウラがムッと眉をひそめ、ワンユーが言葉を失い、セリーナは苦く舌打ちした。

ヒナタは静かにランドィマーを睨みつける。


アキヒロは彼女たちを庇うように一歩前へ出る。


「……そんな言い方、ないだろ。」


ランドィマーは肩をすくめた。


「事実を言っているだけさ。このエリアは近いうちにすべて再開発される。

君たちの屋台も、店も、全部消える。感傷に浸る時間があるなら――」


そのときだった。


低い声が割って入る。


「――そこまでだ。」


全員が振り返る。


チャック・シュイナールが立っていた。

スーツ姿のまま、冷たい瞳でランドィマーを見据える。


「ああ? 誰だお前は。」


「君こそ、ここで何をしている。ランドィマー・デューク。」


チャックは一歩前へ。


「今すぐ、この場から立ち去れ。」


ランドィマーは鼻で笑う。


「はぁ? 何を言っている。

このセクターは、もうほとんど“俺のもの”なんだよ。

立ち去るべきは――」


「違うな。」


チャックは淡々と、だが刃のように鋭く言い放った。


「ここはお前の所有地ではない。

――俺の所有地だ。」


空気が一瞬で凍りつく。


ランドィマーの顔色が変わった。


「……は? 馬鹿なことを言うな。そんな取引――」


「もう終わっている。」

チャックは淡々と続けた。


「デューク・コーポレーションの役員会が昨夜決定した。

この商業エリアの再開発権と土地一帯は、すべてシュイナール財団へ売却する、と。」


「嘘だ。そんなはず――」


「信じられないなら、電話してみろ。

お前の会社の、役員会議長にな。」


ランドィマーは震える手でスマホを取り出し、役員会議長へ通話を繋げた。


周囲は静まり返っている。


数十秒後。


ランドィマーの顔は、見る間に青ざめていった。


そして。


「……チッ。」


短く舌打ちすると、彼はスマホを乱暴にポケットへ押し込み、背を向けた。


「覚えてろよ……!」


そう捨て台詞を吐きながら、ランドィマーは悔しそうに去っていった。


残された屋台の仲間たちは、呆然としながらも胸をなでおろした。


チャックは彼女たちに向き直り、穏やかに言った。


「ここはもう安全だ。

君たちの店も、家族の味も――誰にも奪わせない。」


彼女たちは言葉を失ったまま、ただチャックを見つめていた。


アキヒロは小さく息をつき、心の底から安堵する。


――それは、小さな世界の、大きな転機だった。

このエピソードを楽しんでいただければ幸いです。次のエピソードはすぐにアップロードします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ