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不思議の国のウサギを追いかける

これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。

夢は、あまりにも普通に始まった。


アキヒロは目を覚ます。

布団の感触、朝の光、いつもの天井。


キッチンに立ち、簡単な朝食を用意する。

湯気の立つカップ。

トーストの匂い。


「……いつも通りだ」


そう思いながら、アパートを出る。


廊下を歩き、外に出ると、

そこにノムヴラがいた。


「おはよう、アキヒロ」


いつもの声。

いつもの距離。


「おはよう」


その瞬間、

アキヒロは違和感に気づいた。


ノムヴラの背後。

アパートの玄関の隙間から、

黒いものが、少しだけ覗いている。


四角い。

平たい。

光を吸い込むような黒。


――黒板?


次の瞬間だった。


その黒板に、脚が生えた。


にょき、と。

漫画みたいに。


そして――


「タタタタタッ!!」


黒板は走り出した。


「えっ、ちょっ……!?」


ノムヴラの声も、朝の景色も、

全部、後ろに流れていく。


アキヒロは、なぜか必死に走っていた。


理由は分からない。

でも、追わなければならない気がした。


路地を曲がり、

階段を駆け上がり、

影が伸びて、縮んで、歪んで。


黒板は、振り返らない。


「待て!!」


息が切れる。

足が重い。


それでも、

ついにアキヒロは黒板を捕まえた。


「……お前……!」


黒板は、じっとしている。


脚だけが、ぷるぷる震えている。


アキヒロは、問いかけた。


「お前は……誰だ?」

「一体何なんだ……?」


黒板は、少しだけ傾いた。


そして、

チョークで書くみたいな声で、答えた。


「――ぼくは、ヴォイド」


その瞬間。


アキヒロは、目を覚ました。


天井。

朝ではない。

夜の静けさ。


心臓が、やけにうるさい。


「……夢、か……」


だが、

黒板の黒だけが、

妙に鮮明に、頭に残っていた。


名前も、はっきりと。


――ヴォイド。


アキヒロは、もう一度目を閉じた。


しかし、

その後、眠りは戻らなかった。

このエピソードを楽しんでいただければ幸いです。次のエピソードはすぐにアップロードします。

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