二人の女の神託者はゴールドディガーではなく、グラブステイカーだ
これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
エミリアーノ・トーレスは、今でこそ「若手実業家」と呼ばれている。
* * *
エミリアーノ、リズベス・ゴメス、ルビ・ゴメス。
三人は、同じ地区で育った幼なじみだった。
彼らはまだ「貧しさ」という言葉が現実として存在する地域に住んでいた。
壊れかけの家。
不安定な電気。
冷蔵庫の中身は、いつも半分以下。
――しかし、リズベスとルビには、奇妙な“能力”があった。
新聞を読むとき、人の会話を聞くとき、街の変化を眺めるとき、それらを無意識のうちに組み合わせるときに、「数年後に何が起きるか」を、驚くほど正確に予測してしまうのだ。
それは予知でも、占いでもない。
あくまで、観察と推測の積み重ね。
だが結果だけ見れば、
それはまるで未来が見えているかのようだった。
* * *
二人が最初に“投資対象”として選んだのが、
エミリアーノだった。
子どもの頃、成績が良い。
理解が早い。
しかも、自分の才能を誇らない。
そして何より――
彼には革新の才能があった。
子供の頃のリズベスは言った。
「この子、伸びるわ」
ルビも頷いた。
「うん。たぶん、かなり先まで」
その日から、二人は行動を始めた。
掃除を手伝う。
料理を作る。
勉強の時間を確保させる。
まるで、静かな共同プロジェクトのように。
誰にも気づかれない。
誰にも感謝されない。
けれど確実に、“未来”に向けて積み立てられていく何か。
* * *
時は流れ、エミリアーノは成長し、
二人の予測は、ほぼ完璧に的中した。
彼は才能を開花させ、
やがてブルンヒルデの下で働くまでになる。
一方、リズベスとルビは――
相変わらず、彼の隣にいた。
ただし今は、少し立場が違う。
右に座るか。
左に座るか。
その違いに、意味が生まれてしまう年頃だった。
* * *
外から見れば、こう言われるかもしれない。
――ゴールドディガー。
だが、それは正確ではない。
彼女たちは、
「金を持っている男」に近づいたのではない。
「金を持つ未来が高確率で訪れる男」に、
ずっと前から賭けていただけなのだ。
それは欲望というより、
異様なまでに冷静な“長期投資”。
そして今――
その投資対象が、笑顔で二人の間に座っている。
リズベスは微笑み、
ルビは腕を組む。
エミリアーノは、
その視線の意味に、まだ気づいていない。
それが幸運なのか、
それとも――
この物語が決めることだ。
このエピソードを楽しんでいただければ幸いです。次のエピソードはすぐにアップロードします。




