4話③
「一乃ちゃん、大丈夫?」
朝晴が一乃を見た。
「はい、ありがとうございました」
いつもの、のんびりした声で答える。
しかし、一乃が俯いた。
「でも……まだです」
「?」
「来ます」
一乃が言うと同時に、急に体が重くなった。
「っ……なにこれ?」
「なんだ?」
一乃が東の空を見ている。
「何が来るんだ?」
龍臣が聞いた。
「……分かりません、でも……」
空を見たまま一乃が答えた。
「「月の杜」の場所は分かりました」
「え……」
「そこから、沢山来ます」
「……どういうこと?」
明蘭が心配そうに聞いた。
「……「月の杜」が生み出した、妖が、こっちに来ます」
「なんで、そんなことが分かるの?」
「力を使っている……術を使っている方が、似ているんです……奈取さん、夜月さんにも似ている……人の」
「まぁ、そんなもんやね」
「!」
急に奈取の声が聞こえてきた。
凪が黄色い花を持っている。
そこから聞こえてきたようだ。
「奈取?」
「なんやー?」
「流されてなかったんだな」
龍臣が冷たく言う。
「嫌なこと言わんといて」
「一乃さんに感謝すべきよ」
「……本当だよね」
明蘭と凪が次々に言った。
「分かっとる、分かっとる。ええんか? 今、悠長に喋っててええんか?」
「奈取さん」
一乃が呼んだ。
「一宮はん、さっきの約束や。手がかりを教えたる」
「今、来ている妖、どのくらい分かっとる?」
「すごく大きいもの1つと……小さいものが沢山」
「? ……まぁええわ。それ、俺が世話になった人が作ったもんや」
「先に言っとくで? 大きい方は封印せんほうがいい」
「封印? それほどの妖なのか?」
龍臣が聞く。
「見たら分かるで、目ん玉、飛び出るかも知れへんな。封印なんてしたら土地が滅びるで」
「じゃあ、どうすれば?」
「……そこら辺は自分らで考えてや」
「……「月の杜」は……」
一乃が言いかける。
「?」
朝晴が一乃を見た。
「今から来る妖を作ったことで「月の杜」の力が消えています」
「……え?」
「地力を使い過ぎています。たぶん……このまま……」
「……「月の杜」は衰退して無くなるのか」
凪が一乃の言葉を繋げた。
「……」
朝晴が黙った。
空が段々と暗くなる。
太陽が重い灰色の雲で隠れた。
「……なにか」
全員が東の空を見上げる。
「……あっちです。林の方」
一乃が東の方向に指を差す。




