3話③
あの日、
やっと一宮家にたどり着いた時、一乃と紅葉は一緒にいた。
もう日没近く。
庭は薄暗く、足元が見づらい。
母屋の方を見ると、橙色の炎に包まれて、見たこともない妖がいた。
「紅葉!!」
紅葉が地面に、仰向けに寝ている。
一乃は涙を溜めて彼の手を握っていた。
遂に来たか。この時が。
「ああ……照星……」
紅葉が弱々しく喋る。
「来てくれたんだ。ごめん、忙しいのに」
「……別にいい……」
母屋の妖はこちらを見向きもせず練り歩いている。
「……照星」
「なんだ」
「お願い……「星の宮」と一乃を頼んだよ」
「……ああ」
「お前と友達で良かったよ。楽しかった。ずっと」
「……紅葉……」
「俺もだ……」
その言葉を言うだけで精一杯だった。
紅葉が笑う。
続いて一乃を見た。
涙が頬を流れている。
紅葉が優しく拭った。
「一乃」
「大丈夫……」
「……約束しよう」
「一乃なら大丈夫だ。……だからね、絶対、諦めちゃダメだ」
「約束できる?」
「…………はい」
「うん、いい子だ」
日が落ちる。
西の空はまだ橙色に染まっているが、もうここは完全な夜。
「!」
一乃から、眩いばかりの光が放たれる。
妖もそれに気がついた。
方向転換して、こちらに来ようとする。
一乃が妖を真っ直ぐ見た。
躊躇わず、手を突き出した。
手から閃光が生まれ、大きな妖の体を貫いた。
「……一乃!」
「一乃様!!」
それと同時に、崩れかけた建物から環奈が飛び出してきた。
フッと光が消え、一乃がその場で倒れ込む。
母屋の方を見ると、妖が崩れ落ちていく最中だった。
「環奈、一乃を担げるか?」
「はい!」
「……一緒に行くぞ!」
紅葉を担いで、環奈と一緒に一宮家を出た。
―――
「……椎名様にとって、一宮は――」
秘書が聞く。
照星が言った。
「……親友の、置き土産だ」




