3話②
一乃がベッドで寝ている。
昨夜、仕事部屋で倒れたらしい。
夜に仕事をしなければいけないほど忙しいのか。
あまり自分自身のことは話さない子だ。
体調が悪いことも言わなかったのだろう。
朝晴がここまで運んだと言うが、もし彼がいなかったら部屋で倒れたままだったのか……
「はぁ……」
先日、奈取と夜月が捕まったこともあり「星の宮」は大忙しだ。
特に奈取。
元「星の宮」の人間。
当時の五宮と「星の宮」を去った。
出来れば穏便に済ませたい。
旧知の人間をどう扱えばいいのだろう。
「星の宮」のまとめ役としてどんな判断を下せばいいのだろう。
「失礼します」
環奈が顔を出した。
朝に来て、再度来たようだ。
「椎名様……」
環奈が小さい声で言う。
「一乃は変わっていない。環奈も無理するなよ」
「はい」
照星が立ち上がった。
まだまだやらなきゃいけない事が沢山ある。
廊下に出ると男の秘書が待っていた。
「椎名様は、一宮という人間に随分肩入れされていますが……」
「露骨か?」
「少しは」
「そうか、直すようにする」
「その……椎名様にとって、一宮は――」
―――
「照星さん」
珍しく、1人で一宮家の離れに来てみた。
紅葉は後で来るだろう。
三宮に捕まって仕事の話をしていた。
一乃と2人で縁側に座った。
初めて2人きりかもしれない。
「照星さん」
一乃がもう一度呼ぶ。
「ん?」
そちらを見ようとすると、
一乃が風呂敷を勢いよく広げた。
小さな紙が一気に舞いあがった。
ハラハラと落ちてくる。
紙吹雪だ。
一乃の顔が見なくなるほど、小さな紙が目の前を落ちていく。
全て落ち切ったところで照星が口を開いた。
「……どうした?」
「先生が、お祝いするなら、こうするって」
一乃が真面目な顔で照星を見る。
「……」
「えらい人になったんですよね」
どうしてだか、ニコリとも笑わない一乃を見て笑いがこみ上げてきた。
「……はははは!」
「?」
「いいな、これ。一乃が作ったのか?」
「? はい」
「鋏、よく使えたな」
照星が紙切れを1枚拾う。
「練習しました」
「……そうか。一回だけじゃもったいない、もう一回やろう」
照星が床に落ちた紙を手でかき集める。
「? はい」




