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星の宮の妖祓い  作者: 春伊
第5章
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3話 照星①

照星と紅葉のお話。


 紅葉は幼馴染だった。

 子どもの時から、気づいたら隣にいた。

 初めの方は鬱陶しく感じていたが、長い間、隣にいると一緒にいることが当たり前になっていた。


 昔から、のらりくらりしていて、分け隔てなく誰とでも接する人間だった。


 術に関してはかなりの凄腕で、へらへら笑っている割には通常の仕事の片手間に、任務をこなすような天才だった。


 正直、結婚したことは意外すぎた。

 人間……というか、女性に興味を持っていた事に驚いた。


 あいつはいつも急に報告、連絡、相談してくる。

 結婚したことも、子どもが産まれたことも、妻に先立たれたことも、いつも急に聞かされた。


 



 ―――


「……だから、なんで早く言わないんだ」

「ごめん、ごめん。照星、この通り」

 紅葉が顔の前で手を合わせる。

 一宮の仕事部屋で、紅葉は自分の椅子に、照星は机を挟んで向かいの椅子に座っている。


「もうすぐ出来そうだよ。本当に」

 照星がパラパラと本をめくった。


「期限はとっくのとうに過ぎてるぞ」

「でも……本当に、もうちょっと……後書きだけ」

「後書きなんかいるか?」

「ちゃんとした教科書を作りたいって言ったのは照星だろ? 最後までキッチリ作らないと」


 照星が呆れた顔で言う。

「……あいつら読むか?」

「誰?」

「朝晴と凪里」

「ああ、仲良しのね」

「最近、講義サボるからな」

「え? 凪里は真面目なイメージだったけど?」

「朝晴が来て変わったんだよ。悪い方向にな」

「あははは、いいじゃん。楽しそうだね」

 紅葉が笑う。


「楽しい訳あるか」

「俺らに似てるね。あの2人」

「どこがだ」

「仲良しのところ」

 満面の笑みで答える紅葉。


「……」

 それを見た照星がため息をついた。

 心がむずむずする。

 話題を変えた。


「今日も行くのか? 実家に」

「うん、行くよ」

「……会いに?」

「会いにね」


 紅葉が少し真剣な顔になる。

「……あー、照星だから言うけど……」

「?」

「今度、一緒に夜に会いに行かない?」

「はぁ?」

「一乃に」

「なんで?」

「もう一度、照星だから言うけど……」

「?」


「あの子はね、力がない訳じゃないんだ」

「え? いや、だって……」

「うん、俺もずっと無いって言ってた。力の判定に来ても、結果は無能。誰もあの子の力を感じたこともない。でもね……」

「……」


「夜にならある」


「夜?」

「夜」

「……なんで……」

 今まで言わなかったのか。

 紅葉だって、無能な娘を持った。と周りに馬鹿にされ続けていた。


「俺もよく知らないことがいっぱいあるんだ。だからあの子の力が見てみたい」


「照星、一緒に行こうよ」


「……」




 ―――


 思えば、産まれてから数年経つまで、一乃には昼間にしか会ったことはなかった。

 感じられたくなかったのだろう。

 夜にしか使えない力。

 底知れない、膨大過ぎる力。


 後で聞かされた。


 産まれた時から、夜しか感じない力があったという。

 周りの大人では対応し切れない程の力に誰もが恐怖を感じた。

 一乃が産まれたあの頃は、丁度、「星の宮」に対する反対派が浮き彫りになった頃。

 紅葉は、一乃の力が反対派に悪用されるのを恐れたそうだ。

 実家の離れに隠し、一乃の素性を知っているのは、ごく一部。


 守るためとはいえ……


 それが、その行為が正解だったのかは、よく分からない。


 月日が流れ、一宮家の惨事の際、一乃は力を使ってしまった。

 「星の宮」でも、騒ぎになったほどだ。

 一体誰が、あの妖を仕留めたのか。

 反対派にも噂が行くに決まっていた。


 力を発動させなければ、他の人間には気づかれないだろう。

 でも、それも時間の問題だと思う。

 一乃には口酸っぱく言ってきた。

 緊急の時以外、特に夜は、力を押し込んどけ、と。



 「星の宮」は紅葉の作った結界で覆われている。

 一宮家の惨事で、紅葉がいなくなった瞬間、結界の崩壊が始まった。

 あの結界を維持させるには、一宮家の人間でなければならない。

 

 まだ何も知らない、分からない一乃を、一宮の頭領するしかなかった。


 


 願い……

 あいつの願いを守れているのだろうか。





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