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星の宮の妖祓い  作者: 春伊
第5章
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2話③


 眠れない。


 朝晴は夜の廊下を何気なく歩いていた。

 今日は月が出ていないおかげか、空の星がよく見える。

 

 耳鳴りが続いていた頃はよくやっていた。

 気が紛れるからだ。


 もう少しで日付けが変わる。


「?」

 朝晴は一乃の部屋に明かりが付いているのを見つけた。


 夜中だというのにどうしたのだろう。


 部屋の扉を叩いた。

「……はい」

 彼女の声がする。

 朝晴はサッと扉を開けた。


「一乃ちゃん、こんな時間にどうしたの?」

「……朝晴さん」


 一乃は自分の席に座っていた。

「ここに……いると、落ち着くから……」

 眠いのか、少し声がゆっくりで小さい。


「そうか、最初にここで会った時もそうだったね」

「?」

「一乃ちゃんがこの部屋に来たばかりの時? 俺があの日、来た時も、こんな真夜中だったな」

「……」

「覚えてる?」

「……はい、真夜中でした」


「一乃ちゃん、もう1つ聞きたい事があって」

「?」

「昔から気になっていたけど、よく、俺の耳鳴りのこと気づいたよね」

「……あれは……」


 一乃が考える。

「私も聞こえてたから……」

「え?」


「初めは……朝晴さんが音を出しているものだと思っていました……」


「でも近くに行ったら、違くて……」


「何処か、遠くで鳴ってるって……」


 熱い。


「たぶん、朝晴さんの方が、うるさく聞こえている……から辛いだろうな……」


「……て思っていました」

「一乃ちゃんも聞こえてたの?」

 夜月は、朝晴にしか聞こえないようにした。と言っていた。

 なぜ、一乃も聞こえたのだろう。


「はい、たまに……」

 眠そうな声で答える一乃。


「そっか……」


 熱い。

「……」


「一乃ちゃん、体調そんなに良くないだろう?」


 朝晴の声が聞こえづらい。


「まだ寝ない?」


 熱い。


「……」


 一乃が椅子の上で膝を抱えて座る。


 熱い、熱い、重い……



 朝晴が一乃の異変に気がついた。

 近寄って、膝を床につく。

「一乃ちゃん?」

「……朝晴さん、「月の杜」は……近くに湖がありますか?」

「! ……どうしてそれを」

「ごめんなさい……まだ……分からなくて……」


 熱い、痛い……


「!」


 一乃が前に倒れこんだ。

 朝晴が抱き止める。

「一乃ちゃん!」


 息が荒い。

 呼吸をしているのがやっとだ。

「……い」

「え?」

「……痛い……いたい……」

 一乃が小さな声で呟く。


「痛い? ……どこが……」



「朝晴」


 後ろから声がする。

 朝晴が振り返った。


 誰もいない。


「ここや」

 一乃の机に置かれた花瓶。

 5色の花が入った花瓶の隣に、もう1つ花瓶が置いてある。そこには白い花だけが入っていた。

「奈取? ……どうして?」


 白い花から奈取の声が聞こえてくる。


「今はええ。とりあえず言うことやっとき」


 奈取が朝晴にある術を教える。

「? それって……」

「ええから、ええから」

 朝晴が言う通りに術を組んだ。

 一乃の息がゆっくりになっていく。

 体が熱い。


「まぁ少しは大丈夫やろ」

「あんた、なんで会話が出来るんだ?」

 朝晴が白い花に向かって言う。


「もらったんやで? 一宮はんに」

「もらった?」

「そうやで、後で聞いてみ」

「……なんで……」


「ええから、ええから。寝かせてあげてや」

 その言葉以降、花は静かになった。





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