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星の宮の妖祓い  作者: 春伊
第5章
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2話 奈取①

話を聞きに。


「……?」

 環奈の質問に首を傾げる一乃。

「気のせいだったら大丈夫です」

「……」

「無理しないでくださいね」


 先へ行ってしまった龍臣が廊下の奥で手を挙げる。

「行くぞ」



「星の宮」の奥。

 普段は誰も行かない場所だ。

 廊下の窓も閉め切られ、照明もあまり付いていないせいか、薄暗く、体感温度も少し低いような気がした。


 監視員が椅子に座っている。

 挨拶をして、部屋に通された。


 2畳程の部屋に布団が畳まれ置いてある。

 正方形の小さい窓が天井近くに1つ。

 天気によっては、すごく暗くなる部屋だ。

 

 部屋と廊下を隔てる壁に障子窓がついている。


「奈取、開けるぞ」

 龍臣が言うとゆっくり障子を開けた。


「おわ!」

 驚きの声が聞こえる。

 部屋の中を覗くと、奈取は床に座って手ぬぐいを畳んでいた。

「なんや、なんや、急に現れて」


「暇してただろ」

「まぁ、あながち間違いやないね」


 奈取が障子窓に近づいて来た。

「なにしに来たん? おしゃべりする?」

「ああ、ご希望通り、話をしよう」

 龍臣が窓の前で胡座をかいた。

 後ろで一乃と環奈が正座をする。


「聞きたい事がある」

 龍臣が真っ直ぐ奈取を見た。

「お前のいた「月の杜」は何処にあるんだ?」


「……うーん、教えられへんなぁ」

「もう、ここから出られない。正直に言えばいいじゃないか」

「仲間は見捨てれへんし」

「……仲間? あと何人いるんだ?」

「「星の宮(ここ)」よりも少ないで?」

 奈取がヒラッと手を振る。



「……何が目的なんだ?」

「前にも言ったで? 「星の宮(ここ)」を潰す」

「何故?」

「喧嘩したんやて」

「その言い方だと、別の人間が「月の杜」を作った事になるぞ」


「……そうやね。間違いやない」


「それで? 今回、お前たちが来たのは何が目的なんだ? 「星の宮」に直接入らず、隣の林に来たのは」

「夜月はお兄ちゃんに会いに来た」

「お前は?」

「うーん、どうやろ?」

 奈取がにやにや笑う。


「一宮はんは薄々気づいとるんやない?」

 後ろの一乃に話しかけた。

「……え?」

 急に話しかけられ一乃が戸惑う。

「困らせないでください」

 環奈がピシャリと言った。


「お前は、ずっとここにいていいのか?」

「まぁ……しゃあないし」

「もう力がないんだろう?」

「……」

 奈取が目線を下を向けて黙る。



 すぐに龍臣を見た。

「自分らかて俺がこれから、どうなるかなんて分からへんやろ」


「……」

「椎名照星の前に連れて行かれて、また、こうやってお話する……口割らんかったら、お仕置きでもあるんかな? 嫌やね」

「言うのか?」

「言う訳ないやろ」


 龍臣がため息をつく。

「……それでいいのか?」

「ええよ」


「もういい、埒が明かない」


 龍臣が立った。

 廊下の方へ行ってしまう。


 環奈が心配そうに、廊下に身を乗り出した。


「一宮はん」

 奈取が一乃を呼んだ。

「まだ太陽出とったのに、力使えるようになったんやね。すごいやん」

「……」

 一乃が小さな声で言った。

「……でも……そんなに上手く使えなくて」

「んー? そうか?」


「……」

 一乃が俯く。


「……一宮はん、手出してみ?」

 

 一乃が右手を出した。

 奈取が手のひらの真ん中を指差した。


「ここや。手のひらのここ。……真ん中に集中して、想像してみ?」


「慣れてへんだけや。大丈夫」

「……」



 奈取が一乃の顔を見る。

「あと、自分、大丈夫なんか?」

「?」

「ここにおって大丈夫なんか? 無理したらあかんで」

「……え、えっと……?」


「ほな、がんばってな」



「あ……待ってください」

「ん?」

 一乃が両手をギュッと胸の前で握る。

 すると、白い小さな花がポンッと現れた。


「これ、あげます」

 白い花を奈取に差し出す。

 ふんわりいい匂いがした。

 奈取が受け取る。


 一乃が立った。

 廊下の方へ曲がる手前で、奈取の方を向く。


「あの……私が、守りますから」


 一言、言って行ってしまった。

「……」


 奈取が白い花を見る。

「無理したらあかんって言うたやん……」

 頭をポリポリかいた。





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