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星の宮の妖祓い  作者: 春伊
第5章
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1話③


 あの鶴はどこにいっただろう。

 あの日に燃えてしまったのだろうか。


「一乃?」

 龍臣が顔を覗いてきた。

 ここは一乃の仕事部屋。


 当たり前のように、5人の重役が集まっている。

 別に一緒にやる仕事があるわけでもない。

 本当にたまり場のようになってしまった。


「はい」

 一乃が龍臣に返事をする。

「……奈取と夜月についてだが、もう会いに行ったか?」

「いいえ」


 つい、先日に「月の杜」の奈取と夜月が捕まった。

 今は、「星の宮」の小さな部屋にそれぞれいるらしい。

 牢屋等ではないため、監視員が一日中張り付いているようだ。


「まだ、なにも口を割らないらしいな」

「……」


「五宮は会ったんだろ? 妹に」

「ああ……これと言って、「月の杜」のことはなにも話していないけどな」

「私も行ったわ。夜月さんのところ」

 明蘭が言う。


「なにをしに」

「小説を貸しただけよ? あそこ退屈なんだって」

「いいのか? 怒られないか?」

「椎名様には許可はもらったわよ」

 明蘭がふふんっと言った。


「……奈取さんには誰も行っていないのか」

 凪の言葉に全員が黙る。


「行きたいか? 三宮」

 龍臣が聞いた。

「え……全然、むしろ、嫌だ……」

「あの人、人気ないな」

「……朝晴が行って来てよ」

「え~~、嫌だなぁ。行ってなにかを話すとは思えないし」


「私が……行きます」


 一乃が久しぶりに声を出した。

 4人が一乃を見る。

「別に、必ず行く必要はないんだよ? 一乃ちゃん」

「そうよ、何してくるか分からないんだし」

 朝晴と明蘭は言うが、一乃は首を振った。


「行ってみたいから。話してみたいです」


「……じゃあ、俺も付いて行く」

 龍臣が言った。


「私もいいです?」

 部屋の奥から環奈も顔を出した。


「見学会じゃないんだぞ?」

「分かってますよー」


 やれやれと龍臣が言う。

「準備できたら行くか」


「一乃様、なにか持っていくものあります?」

「……う、うーん……」


 一乃が環奈の方へ移動する。

 目線をそちらに向けると、龍臣はふと、視界に入った部屋奥にある大きな机が気になった。


 机の上には、本が大量に乗っている。

 本棚に仕舞い切れないのか。山積みで一体、何冊置いてあるのか分からない。

 

 龍臣は本の山に近づいてみた。

 指南書や、随分前の決算書も置いてある。

 少し埃っぽい。

「一乃、ここ片付けないのか? ずっと前からこの状態だろ?」


 他の3人も近づいてきた。

 朝晴と凪が同時に声を出す。

「まだあったんだな」

「……懐かしい」

「なあに? それ」

 明蘭が2人の手元を見た。

「これは、俺らが使ってた教科書だよ。今は全然使ってないから、もう無くなったとばかり思ってた」

「昔の物なのね」

「俺らがおじさんみたいに言わないでくれ」


 一乃も山積みの本に近づく。

「一宮、これ全部、一宮の物?」

 凪が聞いた。

「いいえ、これは、先生の物です」

「そっか、だから懐かしい本があるんだ」


 一乃が、山積みの一番上から一冊本を取り出した。

 少し埃を被っている。


 表紙に「一宮」と書かれていた。


 ?

 これは間違いない、自分の字だ……

 この部屋に持って来たっけ?


 自分の持っていた本は、ほとんどが燃えて無くなったはずだった。


 不思議に思っていると、持っている本からスルッと何か落ちてきた。


 少しくたびれている、折り紙の鶴。



「……」



 これ……



 一乃が本と一緒に、両手でギュッと握る。

 その様子を凪が見て言った。


「……一宮、別に片付けなくても大丈夫だよ。邪魔になっている訳じゃないし」


「……」


「まぁ、そうだな」



「……行くか」


 奈取のところへ。

 なにかを話してくれるだろうか。

「はい」


 3人は仕事部屋から出る。


 扉を閉める直前、環奈の声が聞こえてきた。

「一乃様、もしかして体調悪いですか?」





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