1話②
一乃と先生のお話をもう一つ。
熱い。
梅雨がまだ明けず、蒸し蒸しとしていた。
環奈曰く、熱が出たらしい。
実家の離れで布団を敷いてもらって朝からずっと寝ていた。
環奈は母屋で仕事があるようで、飲み物を夕方に持って来てくれたっきり、離れには来ていない。
つまらない……
でも、体は辛い。
頭も重い……
横目で外を見ても雨が降っているだけ。
……寝よう。
早く、楽になりますように。
……
ん?
気配がする。
まぶたが重い……
目を開けて、縁側の方を見た。
先生?
白髪の人がこちらに背を向けてる。
周りには紙が散らばっていた。
「せん……せ?」
先生が振り向いた。
「ああ、起こしちゃった?」
何かを書いていたのか、筆を持っていた。
「大丈夫? 水飲む?」
「……はい」
先生が湯飲みに水を入れてくれた。
飲むと熱い体に、冷えた水が通っていく。
「まだ熱があるね」
環奈と一緒。
おでこに手のひらを当てる。
手がひんやり気持ちいい。
「ゆっくり休んでね」
「……先生」
「うん」
「まだ……ここにいますか?」
「?」
「……い、て……」
「いるよ」
「大丈夫」
「そうだ、早く良くなるようにこれをあげよう」
「?」
先生が、床でなにやら手を動かす。
鼻歌を歌いながら紙を折っている。
「……ほら、できた。はい」
「? なんですか、これ……」
「折り紙」
「おりがみ?」
「うん、鶴を作ってみたよ」
紙が何回も折られ、鳥のような形をしている。
背中の部分を膨らませ翼を広げてくれた。
手に乗せて見てみる。
初めて見た。
「気に入った? 枕元にでも置いてね」
鶴を枕の隣に置いた。
鶴を隣にして、もう一度布団に入る。
先生を見た。
床に散らばった紙をかき集め、パラパラ見ている。
「ん? どうした?」
「……いいえ……」
「何か面白い話をしようか」
「おもしろい?」
「あ、ハードルは上げないでね」
「?」
「何がいい? 仕事の話し? 照星の話でもいいよ」
「……先生の、話しがいい」
「俺?」
「はい」
「……そうだなー、じゃあ……」




