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星の宮の妖祓い  作者: 春伊
第5章
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1話 紅葉①

最終章スタートです。


あの日の一乃と先生のお話。


 あの日は突然だった。

 夕方。

 空は半分が橙色、もう半分が紫色に染まり1日の活動の終わりを表しているようだった。



 猛烈な重圧。


 こんな表現しか出来ない。

 急に体が重くなった。


 建物が揺れる。

 どこからか、爆音が鳴り、続いて悲鳴や怒号が聞こえてきた。

 壊れる音が、破壊の音が、離れに近づいてくる。

「?」


 なに?


 怖い。

 母屋で何が起きているのだろう?

 今まで、こんなことが起きたことはなかった。


「か、環奈……」

 環奈は母屋にいる。

 でも、自分は離れ(ここ)から動いてはいけない。


 恐る恐る縁側から庭へ出た。

 どんどん暗くなり、足元が見えずらくなる。


 振り返って、母屋の方を覗いてみた。


 何かいる……


 空を見上げる。

 

 大きな何かが、建物を破壊している。

 台所の方から火が出ていた。

 叫び声や泣き声も聞こえてくる。


「……」

 どうすれば……自分はどうすればいい?

 動けない。

 怖い。


 どんどん離れの方に近づいて来る。

 妖だ。

 気が遠くなるほどの負の力を纏い、破壊し続ける。


 炎と煙が上がっている。

 きな臭い匂いが、ここまで届いた。


 環奈は……


「一乃!」


 突然、声がした。

 振り返ると、いつもの木陰から先生が現れる。

「先生……」


「大丈夫?」

 先生がこっちに来ようとした。


「!」

 妖がこっちに気がついた。

 体勢をこちらに向ける。

 持っていた棒を振りかぶった。


 投げる。


 先生が左手を空に向かって突き出す。

 光が生まれ、飛んできた棒が弾かれた。植木の方へ飛ばされる。



「一乃、怪我は?」

「ありません」

「良かった……」

 先生が母屋の方を目を細めて見る。

「みんなは……」


 妖はまだ、こちらを見ている。

「一乃、とりあえず逃げよう」

 先生が手を握る。



 でも、


「?」

 先生の動きが止まる。


「せんせ……?」

「そうか、今日か」

「?」


「一乃、大丈夫。君は強い、1人じゃないよ」

「え……?」


「自分を信じるんだ」


「あと、俺はそばにいるから」

「……?」


 2人の足元に大きな文様が現れる。

「!」

「こんな時に来るなんて性格が悪いな」


 妖が右手に力を溜める。

 どんどんと形を変え、大きな槍のようになった。


 こちらに向けて、ゆっくりと振りかぶる。


「先生」

「ごめん、動けないんだ」

「?」


「大丈夫、一乃は必ず守るから」

 先生の体が光る。



 瞬間、ものすごい勢いで風が吹き込んだ。

 風圧で周りの石や木も一緒に飛ぶ。


「……っ!!」

 先生に抱かれ吹き飛ばされた。


 一緒に地面に転がる。

 



「!」



「先生!」

 苦悶の表情をする先生。

 胸の辺りから血が出ている。


 一瞬で理解した。



 ここで終わってしまう、と。



 妖はもう、こちらを見ていない。

 母屋の方へまた顔を向けている。


 あ……




「お……」




「お父さん……」




 先生がフッと笑った。

「……気づいてたか」


「いやだ……」


「……一乃」


 先生が優しく頬を触ってくれる。







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