5話②
「星の宮」の奥。
誰も通りもしない、来もしない場所に夜月と奈取はいるらしい。
昔、いたずらで忍び込んだ以来、久しぶりに足を踏み入れた。
廊下の窓も閉め切られ、照明もあまり付いていない。
薄暗く、体感温度も少し低いような気がした。
監視員に挨拶をして、部屋に通される。
2畳程の部屋に布団が畳まれ置いてある。
正方形の窓が天井近くにあり、そこから日が差していた。
夜月は壁に背をもたれて座っていた。
部屋と廊下を隔てる壁に障子窓がついている。
朝晴は半分開いた窓から部屋を覗いた。
夜月がこちらに気づいて、驚いた顔をする。
すぐに顔を横に向けてしまった。
「何しに来たの? 奈取なら隣よ」
ぶっきらぼうに夜月が言う。
そんな彼女を見ながら朝晴が言った。
「ああ、夜月と話に来た」
「……え?」
夜月が眉間に皺を寄せながら朝晴を見る。
「なんで?」
「なんで? ……話したいから」
「話したい? なんで?」
「なんでと言われても……ダメか?」
「………………ダメ……じゃない」
朝晴が窓に肘をつく。
少し息をつくと夜月に話しかけた。
「大きくなったな」
「馬鹿にしないでよ」
「元気にしてたか?」
「……してた」
夜月が申し訳なさそうに言う。
「……怒ってないの?」
「? 何をだ?」
「あの一宮っていう子が言ってた……音」
「あれ……私が出してたの」
「……なんで?」
小声になる夜月。
「嫌がらせで」
「ムカついたから。急にいなくなって」
「……」
「……ごめん。本当に……ごめん」
朝晴が小さな声で言う。
「……うん」
「でも、なんで気づいたんだろう。お兄ちゃんにしか聞こえないようにしたのに」
「……」
「お兄ちゃん」
夜月が急に近づいた。
「?」
「ここ……楽しい?」
「え? まあ、うん」
「そっか、良かった」
心底嬉しそうに微笑む。
「かわいい子いる?」
「なんだ? その質問」
「いい歳だし」
「まだ20代だぞ」
「四捨五入したら30だよ」
「……夜月は誰かいるのか?」
「はい!!?」
夜月の顔が赤くなる。
「誰だ? 俺の知ってる人か? 言ってみろ」
「言わない! ぜーーたいに言わない!」
「……って事はいるのか……」
「ちょっと! 鎌をかけないでよ」
廊下の奥にいた監視員がチラッと2人を覗く。
ゴホンッと2人で咳をした。
監視員が戻って行く。
「……」
2人は顔を合わせて笑う。
昔と変わらない笑顔だった。
第4章 終わり
最後まで、お読みいただきありがとうございました。
第4章これにて完結です。
次回から最終章の第5章に移ります。
8月15日から第5章を更新していきます。
どうぞよろしくお願いいたします。




