4話②
夜月vs明蘭・晴蘭です。
夜月が生み出した、黒いウサギ、猫、鳥が一斉に動き出す。
ウサギたちは夜月の前に立ち。
猫たちは木に登り、枝に座る。
鳥たちは羽ばたき、空の上を飛んでいる。
「……」
明蘭が呆気にとられた。
「明……もしかしなくても、かわいいって思ってる?」
「そんなことないわよ、顔無いんだし」
「ウサギ好きだもんね」
「だから、そんなこと思ってないわよ!」
2人でグダグダ言っている間に、夜月が持っている神楽鈴を鳴らす。
その音を合図に、飛んでいた鳥たちが2人を狙って急降下してきた。
「来るよ」
晴蘭が冷静に言う。
晴蘭が体勢を低くして、扇を構える。
鳥たちを見ると、上に向かって扇を1回振り上げた。
大きな風が生まれる。
風の力で鳥たちは軌道を失った。
羽ばたいて上空へ逃げていく。
晴蘭が今度は扇を夜月へ振った。
風が起き、周りの石や葉が舞う。
夜月を目掛けて飛んだ。
それを夜月の目の前に立っているウサギたちが捕まえる。
もう一度、夜月が神楽鈴を鳴らした。
枝に座っていた猫たちが、木々へ木々へと飛び移る。
徐々に地面に近づいてきた。
気づけば、2人の周りには猫の群れが次々と飛び回っている。
上空を飛んでいる鳥たちも見えない。
「どうしよ?」
晴蘭が明蘭に聞いた。
「あんまり痛くしたくないけど」
「やっぱり愛着湧いてない?」
「湧いてないわよ!」
猫たちが2人目掛けて一斉に飛びかかった。
「行くよー」
晴蘭が、明蘭の腰を持つ。
猫が襲いかかる瞬間、明蘭ごと上に飛び上がった。
猫が互いに正面衝突する。
痛そうに「にゃにゃにゃ」と聞こえた。
黒い猫が空気に溶け、いなくなる。
猫がいた場所に、晴蘭と明蘭が降りてきた。
「来るわね」
前からものすごい勢いで鳥が飛んでくる。
一度も羽ばたかず、弾丸のようだ。
明蘭が扇を地面に刺した。
両手をパンッと合わせ、鳥を見る。
「来れるものなら来てみなさい」
明蘭の前に薄い光の壁が出来る。
夜月が微笑む。
飛んで来た鳥が壁を突き破った。
光の破片が飛び散る。
今度は明蘭が微笑んだ。
「ようこそ」
もう一度、両手を合わせる。
地面から光る糸が現れた。
スルスルと伸び、鳥に絡みつく。
「ごめんね」
明蘭が言うと、鳥がフッと消えていった。
消えていく鳥を見ると、明蘭は夜月を見た。
「あなた自身は来ないわけ?」
「術で動物を生み出して、使役させるの? 自分は高みの見物?」
2人の物言いに反論する。
「うるさいな! 姉弟仲良くやってるくせに!」
「……隣にいないことがどんなに悔しいか……」
「なーんだ」
「あなた、寂しかっただけじゃない」
「!!」
「だったら、こんなことしてないで話すのが1番でしょ?」
「な、な、な……」
夜月が震える。
「いいじゃない。離れていたって兄妹は兄妹よ? 文句も、謝りたいことも、言いたかったことも全部言ってしまいなさい」
「……っ! あなたに何が……」
「分からないわよ」
「!」
「あと」
「興味もないわ」
「っ!」
夜月が狼狽える。
ずっと沈黙していた一乃が声を出した。
「明蘭さん」
「行きます」
「!!」
一乃の髪が揺れる。
「な、なによ……これ……」
夜月が一乃を見た。
圧倒的な力。
人間じゃない……
こんな力量知らない。
今まで感じたこともない。
「……」
一乃と夜月の目が合う。
「!」
周りにどこからか白い花びらが舞う。
徐々に、徐々に増え、目の前が見えなくなるほどだ。
「な、なにこれ……」
一乃が見ているのは、夜月の帯についた小さな鈴。
右手を夜月に向かって出した。
「……っ!」
夜月が身構える。
一乃が深呼吸した。
出している右手を握る。
白い花びらが、渦になり、夜月の帯へ一直線に向かった。
花びらが帯についた鈴に吸い付く。
「……っ! いや!」
夜月が腕を振って、花びらを払い除ける。
次第に、花びらが離れていく。
「……」
夜月が一乃を見た。
花びらが一乃に集まっていく。
一乃の手に鈴が乗っていた。さっきまで帯にくっついていた鈴だ。
一乃が優しく握りしめる。
「終わらせましょうか」
「!」
横から明蘭の声が聞こえた。
驚いて、夜月が木の枝に飛ぶ。
「どうするの?」
明蘭が夜月を見上げて言った。
「な……だって……」
夜月の頬に汗が伝った。
ふよふよと視界に何かが入る。
白い花びらだ。
「!」
それを見た夜月が驚いて、身を仰け反った。
「あ――」
反動で枝から足を滑らす。
地面に落ちる――!
「……あれ?」
衝撃が来ない。
夜月が目を開けると、
「……大丈夫?」
晴蘭が地面スレスレで夜月を抱えていた。
「意外と抜けてるわね」
明蘭がふーっと息を吐きながら近づいた。
「もう、いい?」
晴蘭が夜月を見た。
「な……な……な……」
晴蘭に抱えられた夜月が顔を真っ赤にして震える。
「ん?」
明蘭が察知した。
晴蘭に目配せする。
「え?」
晴蘭が明蘭の目配せに気がついた。
少し難しい顔をして考え、再度、夜月の方を向いた。
「大丈夫? 痛いところはない?」
目一杯、自分をキラキラさせて晴蘭が言う。
夜月は顔が赤いまま、口をパクパクさせていた。




