4話 月①
「俺は……別に面倒じゃないよ」
凪が奈取に言う。
「朝晴の方が面倒だと思うけど……」
「?」
「奈取さんは「星の宮」で過ごした朝晴を知らない」
「……」
「凪だけだよ」
「?」
「俺をよいしょしてくれるのは」
目頭を押さえながら朝晴が凪の肩を叩く。
「……どうしたの?」
龍臣が答える。
「赤色が注意なんだ」
「……え? どういうこと?」
「四宮の占いの結果だ」
凪が少し考えて言った。
「……それだと……信じる価値はありそうだね」
「お前までそう言うのか」
「……だって四宮だし……」
3人が話している間、奈取はしゃがんで地面に何かしている。
「おい、何しているだ?」
龍臣が気づいて言った。
「俺は、俺の仕事があるねん」
「?」
「具体的に?」
「内緒や。当ててみ」
奈取は地面に、枝をちょこんと突き刺した。
枝が先端から光っていく。
突然、数枚の葉っぱが飛んできた。
奈取の手に当たる。
葉っぱが飛んできた方向を見る。
「なんや?」
「いやー、止めた方がいいかなって思って」
朝晴が言った。
「自分らはそうかもしれへんな」
奈取がニヤッと笑う。
「二宮、朝晴。少し時間をもらっていい?」
凪が龍臣と朝晴に小声で言う。
「?」
「凪……?」
「時間かかるから……ちょっと待ってて」
そういうと凪がしゃがんで、下を向く。
地面になにか文様を書いていく。
眼は青色だった。
凪の様子を見て、奈取がため息をついた。
正直、凪里が出て来るとは思わなかった。
予定が狂う。
「面倒やな……」
奈取は頭をかいた。
奈取の足元に落ちている術符が浮かび上がる。
龍臣と朝晴に向けて奈取が右手を出した。
それに合わせ、術符が2人に向け勢いよく飛ぶ。
朝晴が前へ出た。
持っていた1枚の葉っぱを顔の前で握りしめる。
飛んでくる術符に向かって手を広げた。
手から炎が生まれる。
術符に炎が燃え移り、焦げてその場に落ちていく。
その間に、奈取が空に何かを投げた。
投げた物は弧を描き、龍臣と朝晴に向かってくる。
キラリと光った。
刃だ。
無数の小さな刃が2人を狙って落下する。
次に龍臣が動いた。
綺麗になった宝刀を構える。
上を睨むと、宝刀が薄く光った。
龍臣がその場で薙ぎ払った。
風が生まれる。
落下してきた刃の軌道が逸れ、2人の周りに散らばった。
朝晴がしゃがんで両手を合わす。
緑色の葉っぱが奈取に向かって次々に飛んだ。
奈取が煩わしそうに、袖で葉っぱを払っていく。
「!」
一枚の葉っぱが奈取の眼前に飛んできた。
体を反らし、葉っぱを避ける。
その瞬間、目の前で龍臣が宝刀を振り上げ、飛び上がった。
術を使って振り切ろうとする。
「?」
が、先ほどの葉っぱが奈取の体の周りを飛び回り、邪魔をする。
「嫌やわー」
龍臣が振り下ろす瞬間――
奈取が地面を手の平で、思いっきり叩く。
「!」
龍臣と奈取の間に上昇気流が起きた。
龍臣は、後ろに引き下がる。
朝晴が後ろにいる凪に聞いた。
「凪、どのくらいかかる?」
「……まだまだ」




