3話②
夜月が一乃と明蘭を見る。
一宮という人間は太陽が出ていれば力がないと聞いていた。
話が違う。
今はある。
……でも噂で聞いていた程ではない。
それよりも、隣の青い女の方だ。
あまり見たことのない類の力が感じられる。
不思議だ。
「星の宮」の土地の力と繋がっているような気さえする。
「一乃さん、助っ人呼んでもいい?」
「? はい」
「私、戦闘型じゃないから」
「? はい?」
明蘭が懐から扇を出した。
一度、縦に振る。
横についている鈴が小さく鳴った。
「あ、今いい? 来て?」
まるで目の前に相手がいるかのように話す。
もう一度、明蘭が扇を縦に振った。
鈴がもう1つあるかのように音が重なって聞こえる。
「どうしたの?」
上から声がした。
「ごめんね、晴蘭」
明蘭の付人の、晴蘭が木の枝の上にしゃがんでいた。
「ぜーんぜん? で、どうしたの?」
「この方と、お手合わせ願おうと思っているの」
明蘭が丁寧に手を夜月に向ける。
「お手合わせ? 喧嘩中?」
「売ってきたのは向こうよ」
「それを買ったの?」
「今から買うのよ」
「はあ……」
晴蘭が頭をぼりぼりかいた。
「まぁ、いいけど……」
「よっ」と言って枝から飛び降りてきた。
「一乃ちゃんはいいの?」
晴蘭が心配そうに聞く。
「はい」
「……うちのお姫様たちは元気だなぁ……」
晴蘭が夜月を見る。
「あっちも女子だし……」
明蘭が扇を構える。
晴蘭が右足で地面を2回叩いた。
叩いた地面から扇が出てくる。
扇をサッと開き、明蘭の隣に並んだ。
「なによ? あんたたち……」
「なあに、急に?」
「怖気ついた?」
「そもそも他人の土地に入ってきて、やっていい事とダメな事の分別がつかない訳?」
「明、ここ別に敷地外だよ」
「隣じゃない。似たようなもんよ」
「まぁ、……月のなんとかの土地ではないけどね」
「そうでしょ? 何かやらかして「星の宮」に被害があったらたまったもんじゃないわ」
「……な、なによ」
「いいじゃない、売ってきたのはそっちなんだから、遊びましょうよ。どうせ他人ん地なんでしょ?」
「明……さっきと言ってること全然違うよ。開き直らないで?」
「うるさいわね」
「……」
夜月が懐から何かを出した。
持ち手の先に金色の鈴が3段に並んで付いている。
シャンッと綺麗な音が鳴った。
「神楽鈴?」
「……「月の杜」は神社なの?」
「そうよ、知らなかったの?」
朝晴から聞いたこともない。
黙る2人に夜月が煽る。
「知りもしないか。来たことも、何処にあるのかも分からないもんね」
「……確かにそうね」
明蘭が冷静に答えた。
夜月が神楽鈴を右から左へ3回鳴らす。
鳴らした箇所から、黒いモヤが出てきた。
次第に形作られていく。
右から順番に、ウサギ、猫、鳥の形になった。
「行くよ?」
夜月が神楽鈴を構える。
鳴らすと同時に、動物たちが分裂して動き出した。




