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星の宮の妖祓い  作者: 春伊
第4章
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3話 夜月①

久しぶりにあの人が出てきます。


 一乃、龍臣、明蘭の3人は部屋を出て、廊下から窓の外を見た。

 嫌な気配がする。


 東の方角に何かがある。


「なに?」

「行くか?」

「……聞こえる」

 一乃が呟いた。


 3人は廊下を引き返した。

 玄関に向かって走る。


 途中、曲がり角で人とぶつかりそうになった。

 

 朝晴だ。


「おい、行くぞ」

 龍臣が一言、言うと足早に通り過ぎた。


 一乃が朝晴の前で止まる。

 顔色が悪い。


「い……」

 一乃が朝晴の耳を手で覆う。

「行きましょう」


 少し考えて、朝晴がうなづいた。

「ああ」



 4人は玄関を出て、東へ向かう。


 以前来た林。

 見た目は、あの時となにも変わっていない。

 奥に何かがいる。


 4人で意を決して、林の中に入った。


 

 鬱蒼としていて、薄暗い。

 太陽もほとんど傾いてしまっているせいか、林の中は夜のようだ。

 野生動物が出て来てもおかしくない。


 「星の宮」の塀を伝って奥へ歩いていく。

 


 以前見つけた、塀の落書きの所までたどり着いた。

「……これ」

 落書きが増えている。

 今度は、犬? 猫? ような動物が描かれていた。

「前から思っていたけど、この落書き、ちょっと下手よね」

 明蘭が落書きを見て言う。

「これは、犬か? 熊か?」

「猫だと思ったな」

 龍臣の疑問に、朝晴が言った。

 



「そないなこと、言わんといて」




「!」

 全員が後ろを振り返る。

 そこにいたのは、

「奈取!」


 奈取が懐から、何かを取り出した。

 思いっきり、4人に投げつける。


 龍臣が前に躍り出た。

 

 術符だ。


 おびただしい量の術符を、宝刀で薙ぎ払う。

 術符は切れずに宝刀にまとわりついた。


 龍臣が、まとわりついた術符を落とすためにその場で宝刀を振る。

 

 しかし、全く取れない。

「……ちっ」


 一乃が龍臣に近づいた。

 宝刀に手を添える。

 少し手が光ったが、術符は取れなかった。

「……」


「おわー。一宮はんって昼間は力、使われへんかったんちゃうん? なんでやろ?」


「話が違うじゃん」


「!」

 奈取の後ろにある木の陰から現れたのは、先日、この林にいた臙脂色の髪をした女。


「知らへんよ、今知った」

「ふーん」


 女が奈取に近づく。

 4人の方を向いた。


 朝晴が呟く。

「夜月」

 夜月と呼ばれた女が朝晴を見た。

 目を細める。


 龍臣が2人を睨んで言った。

「何しに来た?」

「俺は……内緒なんやけど……」

 夜月の方をチラッと見る。

「こっちは、会いに来たんやて」

「! ばっか……! 言わないでよ!」

 夜月が奈取を小突く。

「会いに来た?」

「いてて……そうや~。お兄ちゃんに会いに来てん……いたっ」

「うるさい、うるさい」

 夜月が肘で奈取を思いっきり突いた。



 夜月を見て、朝晴を見た龍臣が言う。

「本当に兄妹なのか? あなたみたいなチャランポランと……」

「兄は昔からチャランポランよ?」

「ひでぇな、なんで急に悪口言われなきゃいけないんだ?」

「赤に注意らしい」

「え?」

「四宮が占ってくれたぞ。今日は赤に注意」


「赤ってどう考えたって、あなたのことだろう? 面倒ごと起こす人間はちょっと御免蒙る……」

「いやいやいや! 俺に限らないだろう。夜月は? 赤じゃないのか?」

「あの人は、臙脂色だろ」

「ええ? 何色だって? 聞いたこともない」


「赤といえば……」

 龍臣が、一乃と明蘭を見る。


「まぁ……」

「五宮さんね」


「え、2人からもそう言われるの? 俺が注意なの?」



「あっははは、ええやん。仲良しやね」

 奈取が腹を抱える。

「……もういいよ」

 夜月が奈取に言った。

「え? ああ、もう帰る? まだ終わってへんのやけど」


「じゃあ、時間稼ぎしてあげる」


「お、頼もしいやん」


 夜月が奈取の前に立った。

 真っ直ぐ、4人を見る。

 臙脂色の帯についている鈴が揺れる。


 それを見た一乃が言った。




「あなたでしたか」





「朝晴さんの聞いてる音は」



「!?」

 朝晴が夜月を見た。

 驚きの表情をしている。

 

 が、直ぐに表情を戻した。



「自分1人でいけるん?」

「無理。奈取が半分、相手して」

「……やっぱ、そうなるんやな」


 奈取が腰をさする。

「夜月は? どっちがええの? お兄ちゃんとやる?」

「やる訳ない」

「はいはい」


 奈取が両手をパンッと叩いた。

 

 一乃・明蘭の2人と、龍臣・朝晴の2人の間に薄い光の壁が生まれる。

「!」

 龍臣が壁を触ってみると、バチッと弾かれてしまった。


 一乃が壁に近づく。

「朝晴さん、もう少しだけ待っててください」

「一乃ちゃん……」



 龍臣が術符のへばりついた宝刀を持って言った。

「よりによって、赤色と一緒か……」

「そう言うな……」


 朝晴が龍臣の持つ刀を見る。

「それ……大丈夫なのか?」

「分からない、取れるものなら取りたい」



「分かった」



 後ろから声がして、龍臣と朝晴は振り返った。

 塀の上に人影がある。

「三宮」

 凪が、塀から飛び降りた。


「いつ来たんだ?」

「……ごめん、今、来た……」


「これ、取ればいいんだね?」

 凪が宝刀を見る。

「ああ、出来るのか?」

「うん……たぶん」


 龍臣が宝刀を両手に持った。

 凪が両手で1つ印を結ぶ。

 ふわりと風が生まれる。


 張り付いていた術符が、動き出した。

 徐々に端から剝がれていき、風と一緒に舞い上がる。


 全ての術符が剥がれ、頭上に上がる。

 凪が結んでいた印を解き、右手を奈取に向かって振った。


 次の瞬間、頭上に舞い上がっていた術符が奈取を目掛け勢いよく飛ぶ。


 当たる瞬間、奈取は右手だけ横に振り、飛んできた術符を全て弾いた。

 ハラハラと術符が奈取の足元に落ちていく。

「……」


「……奈取さんか、やっかいだね」

「自分の方が面倒やろ。凪里」


 凪が奈取を見た。





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