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星の宮の妖祓い  作者: 春伊
第4章
56/88

1話 五宮①


 うるさい。


 うるさい。


 「星の宮(ここ)」に来てからずっと耳の近くで鳴っている。


 何かが鳴る音?


 響く音?


 ずっと、ずっと鳴っている。



 夜……あまりにもうるさくて、「星の宮」の廊下を散歩していた。

 何かをしていた方が、歩いていた方が、気が楽だった。


 ふと、廊下の先の部屋に明かりが付いていることに気がついた。

 こんな時間まで仕事しているのか。


 ご苦労様だ。


 でも、部屋の前を通った時、


 ずっと酷かった耳鳴りがフッと軽くなった。


「え」

 なぜだろう?

 扉の前を行ったり来たりする。


 間違いない。

 この部屋の前を通ると音が小さくなる。


 あまりにも気になって、扉を叩いてみた。

「はーい?」

 陽気な男性の声が聞こえてくる。


 扉を開ける。

「お、どうしたの?」


 白髪の眼鏡をかけた男性がそこにいた。




 ―――


 

 コンコン



 扉が叩かれる音がする。

「はい」

 少女が答えると、扉がサッと開いた。


 風が巻き上がり、書類が部屋の中を舞う。

 部屋に入って来た二宮龍臣(にのみやたつおみ)はため息交じりに言った。

「書類くらい整理したらどうだ?」


「繁忙期で……」

 紙の束を持って机の横に立っているのは、部屋の主、一宮一乃(いちみやいちの)


「その台詞、前にも聞いたぞ」

 龍臣も目の前の床に落ちた紙を1枚ずつ拾う。


「あと……あなたは、またいるんだな」

 と、先に部屋にいた赤い髪の男に話しかけた。

「よっ」

 五宮朝晴(ごのみやあさはる)は陽気に挨拶をした。

「ちゃんと仕事してるのか?」

「当たり前だろ? だからここにいるんだ」

「?」

「先月の帳簿の数字がまるで合わない」

「……その台詞、前にも聞いたぞ」


「おかしいよな。何回も計算し直してるんだぜ?」

「やり方が違うんじゃないのか?」

「ずっと前から、このやり方で出してきてる。違ってたら、過去の提出書類もおかしいってことになるぞ」

「考えたくないな」

「だろ?」

 笑いながら言う朝晴に、龍臣はため息をついた。

 そんな龍臣に今度は朝晴が聞く。


「二宮はなにしに来たんだ?」

「椎名様から、仕事が来ただろう。その話をしに来た」

「おー、真面目だな」

「あなたもその仕事の一員だろ」

「まぁ、そうだな。……珍しいよな、5人全員呼ぶなんて」




 確かにそうだ。

 ここ「星の宮」のまとめ役、椎名照星(しいなしょうせい)から、重役5人に1つの任務を命じられた。

 龍臣が二宮の頭領になって4年。

 今まで、そんなことは一度もなかった。


 しかも、”調査”だけの内容で。




 コンコン


 また、扉が叩かれる。

「はい」

 一乃が返事をした。

「お邪魔します……って、もういたのね」

 そう言って入って来たのは、重役の1人、四宮明蘭(しのみやめいらん)

「明蘭ちゃんも、椎名様からの仕事の話?」

「そうよ。……五宮さんは違うの?」

「俺は、帳簿の数字が合わない原因を探っている」

「それは難儀な問題ね」

 二宮が横から突っ込んだ。

「仕事の話をしろ。仕事の話を」

「これも仕事だからな?」




 コンコン


 再度、扉が叩かれる。

「はい」

 もう一度、一乃が返事をした。

「……失礼、します……」

 小さな声で、頭から布を被りながら、恐る恐る扉を開ける重役の1人、三宮凪里(さんみやなぎさと)

「ごめん、遅かった……?」


「全然よ、私も今来たわ」

 明蘭の言葉に少し安心して、部屋に入ってくる。

 朝晴が意外そうな声を出して言った。

「凪も椎名様からの仕事の話に来たのか?」

「そうだけど……違うの?」

 凪の疑問に龍臣が答えた。

「この人だけ違うらしい」


「凪、俺は帳簿の数字が合わない原因を探っている」

「五宮、かっこよく言うことじゃないからな」

「そういうのは、もっと前から対処しないと……」

 男2人に言われ、朝晴は少し口をすぼめた。


「女子は味方してくれるのに、お前らと言ったら……」


「まぁ……」

「優先順位があるわよね」

 女子2人からも言われ、朝晴はやれやれと帳簿を閉じた。





お読みいただきありがとうございました。

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