5話③
朝晴が目を光らせて近づいて来た。
「凪、俺たちってさ、似てると思わないか?」
「俺たち? なにに?」
「椎名様と一宮様だよ」
「はい? どこが?」
「凪は一宮様って言うよりも、理屈こねてる椎名様に似てるだろ? あの式が、あーで、こーで考えて」
「……朝晴、それ、ちょっと聞くと悪口だぞ?」
「え? 褒めてるのに」
「……どこが」
「凪はすごいよな、頭が良くて。考えられないようなさ、複雑で難しい術式を組めるんだ」
「それを言うなら、朝晴は感覚でやってのけてしまうのが本当にすごいよ。勘でどうこう出来るものでもないのに。……そう考えると一宮様に似てるのかも」
「いいこと言ってくれるなー」
朝晴が凪の頭をわしゃわしゃ撫でる。
「や、やめてー」
「いつかさ、凪が、きっと「星の宮」のまとめ役になると思うんだ」
「ええ!!?」
「だって次は椎名様がなるんだろ? だから、似てる凪がなる。椎名様の次だな。……んで、俺が隣で支えるよ」
「俺はそんなの無理だよ! 逆! 逆! 朝晴が上に立つべきだよ」
「なんで?」
「朝晴は、みんなの注目浴びて……かっこいいかも知れないけど……俺は見られたくない……」
「なんだ、そんなことか」
「……」
「大丈夫、大丈夫」
「その頃にはさ、凪は立派でかっこいい術者になってるよ」
―――
「珍しい」
朝晴が言う。
「?」
「凪が部屋を出てること」
「……べ、別に」
明蘭も同調する。
「確かにそうね」
「え……」
ここは一宮の仕事部屋。
一乃は自分の机の前に立ち、朝晴と凪は扉側の長椅子、明蘭は窓際の長椅子に座っている。
朝晴が急に人差し指を立てた。
「いいか? よーく聞いとけ?」
「急に、どうしたのよ?」
「俺は予言する。これから二宮が来る」
「えー……」
コンコン
扉が叩かれる音がした。
いつもの声がする。
「いいか?」
一乃が扉に向かって答える。
「はい」
「ほらな」
朝晴が得意げに言った。
扉が開かれると本当に龍臣が現れた。
部屋にいる人物を見て驚いた顔をする。
「今日は……多いな」
「よっ」
朝晴だけが明るく挨拶をした。
「あなたたちは、どうしたんだ?」
長椅子に座る3人を順に見ながら龍臣が質問する。
「用はなくとも、集まっちまうんだな。これが」
「たまり場ね」
「一乃、いいのか?」
「はい、ぜひ」
「いいじゃない、計らずとも5人集まったんだから」
「確かに」
「これで2回目だな」
「なにか記念にやる?」
「……記念ってなにをだ」
「……一緒になにか作ってみるとか」
「つくる?」
「……」
他の3人がわいわいしている中、凪が一乃に近づく。
「一宮」
凪が一乃の前に花をポンッと生み出した。
黄色い小さな花がたくさん付いていて可愛らしい。
凪が差し出す。
一乃がそれを受け取った。
「出来るよ」
「……」
一乃が握っている花に集中する。
ポンッと手から、白い花が生まれた。
「あ……」
「ほら、出来た。練習の成果だよ。昼間でもほんの少し力が使える……」
「頑張り屋さんだからね」
凪がふわっと笑って一乃の頭を撫でた。
周りが、驚愕の顔でこちらを見ている。
凪が3人の視線に気がついた。
「……え? え?」
小声で話し始める龍臣と明蘭、朝晴の3人。
「あれが普通なのか?」
「あれが通常運転だと、かなりの紳士よ」
「いや〜、凪の成長がすごいな。見たこともない」
「……なに?」
「いいや? なんでも」
朝晴が一乃に近づいた。
一乃の持っている花に、自身の手を添える。
ポンッと赤い花が出てきた。
「いいわね」
それを見た明蘭が小さな鈴を持って一乃に近づいた。
そのまま手を自身の額につける。
深呼吸して、一度、小さく鈴を鳴らすと、青い花が出てきた。
それを一乃に渡す。
最後に龍臣が近づく。
4色の花の束に手を添えた。
風がふわりと流れ、黒い花が生まれる。
「黒い花って自然界あるの?」
「クロユリは聞いた事があるな」
「花は詳しくないから……」
「まぁまぁ、これは、これで」
「はい、かわいいです」
5色の花が一乃の手の中で揺れた。
第3章 終わり
最後まで、お読みいただきありがとうございました!
第3章これにて完結です。
次回から第4章に移ります。
7月29日から第4章を更新していきたいと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。




